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魔人


その2


 30分も流砂の中にいれば窒息死するのだろうが、クリス達は生き延びていた。もともとこのEVは、ある冒険家がこの戻らずの砂漠を探検するために作り上げた特装車を盗み出した物だ。酸素ボンベも入っているし、流砂などの対策に密閉耐圧構造になっている。貨物車との連結部も強度の安全係数を冗談のように取って有るため、まだ持ちこたえているようだ。それに粉流体では圧力がある一定値以上上がらないという物理効果も助けになっているのだろう。

 「後ボンベは15分ね」

 クリスは呟いた。横を見る。度胸がいいと言うべきか、マイは眠っていた。もっとも正解だろう。酸素も体力も節約できる。

 「ほんと全く」

 マイの寝顔を見ていると、何となくくつろいでくる。少し傾いてきたのでシートベルトで固定してやるとマイは目が覚めた。

 「傾いてきたから。荷物は網で固定して有るわ」
 「夢見た。誰かが待っている」
 「そう」

 いきなりだった。急に目の前が開けた。車の上や横の砂が落ちていく。地上の日の光とは違った、何かくすんだ光がさす空間だった。辺りは薄暗く遠くは見えないが、足下は砂だらけだ。バックミラーで見ると後ろは切り立った崖で中が砂だらけの洞窟があった。

 「時々流砂になって上の物を吸い込む訳ね」

 クリスは車の機能を回復させるためスイッチを入れた。ダッシュボードの自己診断機能のディスプレイが働き出す。奇跡的に無傷だ。これで2週間は生きられる。次に外気などの調査用の機器を動かす。呼吸は可能のようだ。組成も地上と変わりない。大気の水蒸気が多いことに驚いた。地下のせいだろう。雑菌も多い。辺りを調べたところで、クリスは自分のサングラスの暗視装置のスイッチを入れた。

 「へぇ〜〜」

 伝説は本当だったようだ。砂に随分埋まっているが数多くの建物がある巨大な空間だった。千年の時に耐えて上部とまだ繋がっているエレベーターや電車の軌道もある。
 但し人の気配はしない。

 「なにか見えるの」
 「町が有るわ。廃墟だけど」
 「どうする」
 「どうしよう」

 噂だけを信じて砂漠を渡ってきた。外部から遮断された第三新東京市は生きている。人々は自給自足できる過去の驚異のテクノロジーの元に優雅な生活を送っている。そんな噂だ。完全に信じていたかと言われると疑問だが、その噂が頼りだった。

 「この上の町は生きているのかもね」

 クリスの言葉に反応したわけではないのだろうが、急に辺りが明るくなり始めた。クリスはサングラスの暗視装置を切る。光ファイバーで日光を取り入れる装置が一部生きていて、日射が特定の角度に成ると明るくなる為だ。もっともそんな事は知らぬクリスとマイは身を屈めた。怖々顔を上げた。日光のせいでよく物が見えるようになったがやっぱり廃墟だ。

 「ん」

 クリスはサングラスを取りフロントグラスに顔を近づける。暫く見ていた。

 「マイあそこ」

 指を差すがマイには判らない。

 「何」
 「まだ新しいEVがある」

 マイは目を凝らしてみる。見えない。

 「あの三角の建物のすぐ横」
 「見えない」
 「まあいいわ。行くわよ」
 「うん」

 クリスはEVを発車させた。少しの間、砂を後ろにはじき飛ばすだけだったが、その内前に進むようになった。EVは少しずつ進んでいく。この辺りは砂が山のようになっているため、下手にモーターの回転を上げて崩れるのは危険なため、ゆっくりとだ。砂漠の砂と違い地下水を含んでいるのでそれ程さらさらとはしていないが。ともかく5分ほどで砂山を降りた。

 山を下りると大地に車輪が着いた。砂漠でタイヤが滑りながら進むのとは違い、EVも気持ちよく加速していく。試しにレーダーのスイッチを入れてみた。使えるようだ。戻らずの砂漠では何故か電波領域の波長の電磁波の吸収が強すぎて無線機器が殆ど使えない。レーダーも無線通話もごく短距離だけだ。また熱揺らぎが大きすぎて可視光域や赤外線も画像に歪みが出てしまい、上空からの撮影がほぼ出来ない。また航空機などの高度では、凄まじい乱気流がいつも発生し通り抜けできない。しかも最寄りの20Kmと離れていない海岸線方向には、凄まじい砂嵐のカーテンが1000Kmに渡り囲いの様に発生している。まるで海の方から来る者を恐れるようにだ。

 サードインパクト後戻らずの砂漠と言われる理由はこれだ。砂漠を這うよう北の方から接近するしかない。

 クリスは黙ってEVを進める。

 町が広がっている。1000年近く放置されているのに、崩れている建物は殆ど無い。まるで滅びる事を許されぬように、ほぼ1000年前の姿を保っている。砂漠の下の町に相応しいと言うべきか、ピラミッドのような正四角錐の形の建物が多い。

 「あっあれ」
 「そう」

 マイにも見えてきた。クリス達が乗っている四輪駆動のクロスカントリー型のEVに似ている。ただ特注品ではない。ごく普通に売られている一般的な物だ。クリスは200m程の距離を取って建物の影にEVを止める。まずレーダーで周囲を探る。いろいろな波長で走査するレーダーは含水物の区別が付く。生物の区別が付くと言うことだ。このレーダーのおかげで砂兎の巣を見つけたことがある。貨物車の干し肉はその肉を使って作った。兎と言っても穴グマの一種だ。耳が長いので兎と言われている。

 クリスはレーダーの焦点を、謎のEVに向けた。暫く調整をした。テレビカメラも向けた。モニターに映して拡大する。砂漠を越えてきたせいか汚れきったEVだ。窓は曇って中は見えない。

 「重量約50kgの生物がいる。殆ど動いていない。人間だと思う」
 「どうする」
 「私が見てくる」

 クリスは運転席を降りると貨物車に移る。着ている物をさっさと脱ぐと貨物車にぶら下がっている黒いつなぎの様な服を身につける。そうとうだぶだぶしている。ポケットからヘッドセットのような物を取り出し頭に着ける。長い髪の毛も輪ゴムでまとめる。横にぶら下がっている短機関銃のような物を手に取った。短機関銃と言うには銃身が長い。自動カービンあたりだろうか。ともかくその短機関銃のような物の各部を動かしてみる。チェックだろう。

 「よし」

 よしと言ったが手つきは慣れているようではない。貨物車を降りると助手席の横に行く。窓が開いた。

 「ここにいなさいよ」
 「うん」

 どのみちクリスに何かあったらマイ一人では生きられぬ。ここにいるしかない。クリスは建物の影から暫くEVを伺っていた。

 「面倒ね」

 EVは交差点のど真ん中に止まっている。遮蔽物はない。建物の影から影に移り近づいていく。50m程まで近づいた。

 「誰かいるの。出てきなさい。出てこないと蜂の巣にするわよ」

 建物の影から短機関銃と腕だけを出してよく狙う。狙い方が決まっていない。慣れてはいないようだ。
 それでも引き金を引いた。発射音とその少し後に遠くの建物で破壊音がした。反動の少なさ、薬莢が出ないことからケースレス小口径高速弾の自動小銃らしい。

 「クリス、中の生物が動いたわ」
 「OK、音響センサーで音を拾い続けて」
 「了解」

 暫く動きがなかった。

 「日本語が聞こえる。ソノコ……駄目だって繰り返している。男の声、解析装置によると私達と同じぐらいの年齢。声の質から言って相当弱ってる」
 「了解」

 暫くまた様子を見た。そのうち運転席の戸が開いた。自分たちと同年代の男子が出てくる。黒いジャージの様な物を身につけたその男子は体中に震えが来ている。

 「譫言になって聞き取れない」

 マイからの報告とほぼ同時にその男子は崩れ落ちた。1秒で判断した。敵ではない。

 「マイ、車を動かして来て」
 「判った」

 クリスは走り出す。すぐにその場に着いた。やはりクリス達と同じぐらいの歳の少年だった。スポーツ刈りの少年は黒いだぶだぶしたジャージの上下を身につけている。微かに腐臭がする。左足の腿の裏の布地が裂けている。そこを広げてみると化膿している。傷口の奥の方に何か刺さっている。このせいで化膿したのだろう。少年は先程からうめき声を上げているが意識がない。化膿による発熱で脱水症状になっているようだ。
 少年のジャージを探ってみる。身元が判るような物は無かった。
 そこにマイが運転したEVが到着した。

 「どう」

 マイが降りてきた。

 「判らない。傷口が化膿している。何となく敵ではない気がするわ」

 マイは暫くその少年を見ていた。

 「クリス……この人は(鈴原トウジ)じゃない」
 「えっ」

 クリスは少年の顔をまじまじと見る。

 「そう言えば、黒ジャージに、スポーツ刈り、どことなくとぼけた顔……確かあっちも二人で逃げ出したのよね」
 「うん」

 しばらく二人は少年を見ていた。

 「ともかく助けよう」

 結構荒治療を行った。ジャージの下だけ脱がせてEVの荷室に俯せに縛り付ける。麻酔を患部の側に打つ。量は適当だ。暫くしてからアルコールで消毒したピンセットを傷口に突っ込む。気絶していても痛いようだ。微かにうなり声を上げている。傷口に刺さっている物を取り出した。

 「何これ」
 「爪」

 長い爪のような物が出てきた。これに付いた雑菌にやられたのだろう。ピンセットを深く突っ込んで傷口を探る。痛いのか少年は痙攣をしている。後は何もないようだ。ピンセットに脱脂綿を巻き付け抗生物質のクリームを塗りつける。傷口に突っ込みよく塗り込む。麻酔がよく効き始めたのか、少年はそれ程反応しない。傷口を殺菌した後、殺菌済みの傷口保護シートを張り付けた。患部の側に抗生物質の注射をする。

 「これで良し」

 クリスはそう言うと少年を縛り付けている紐を解きジャージを履かせた。

 「どうする」
 「目が覚めるまで待つしかないわ。こいつのEVも移動させよう」
 「うん」

 二台のEVを建物の陰に移す。ジオフロント内では時刻に関わらず真上から日射が来るようなので、建物の横でもEVは充電される。少年は少年が乗ってきたEVの荷台に大の字に縛り付けた。気が付いてから暴れられたら困るからだ。水を飲ませると無意識ながら大量に呑んだ。毛布を掛けて体温が下がらぬようにしてやり荷台の戸を閉めた。

 後は待つことしかできないので辺りを探索すると、地下水が湧き出ている場所があったのでバケツで水を汲んできた。浄水器に水を入れた。

 「変ね」
 「何が」
 「ここよ。千年経つのに殆ど建物が壊れていないわ」
 「そう」

 自分たちのEVの荷台に戻ると二人は寝転がって一休みする事にした。マイは結構疲れているのかぐたっとしている。

 「(洞木ヒカリ)はどうしたのかな」
 「気になる」
 「成るわ。大体伝説だと(洞木ヒカリ)と(惣流・アスカ・ラングレー)は大の仲良しでしょ」
 「でも伝説だと私達は憎みあわなければいけないわ」
 「そうね。例外かな」

 クリスも疲れていたのか二人揃ってうとうとし始めた。相当時間が経ったらしい。少し陽光が赤くなった頃、隣のEVから物音がしはじめた。クリスは身を起こす。マイの方はよく寝ているようなので、起こさないように静かに荷室の戸を開けた。だが流石にそれは無理だったようだ。マイも目を覚ます。クリスは肩を竦めると横のEVを指さす。二人で荷台から外に出ると隣のEVを覗き込む。少年は意識を回復したようだ。ただまだ視線がおぼろげだ。手足が固定されているのでじたばたして音が出たようだ。抗生物質のおかげで危機は脱したようだ。
 クリスは自動小銃を持つと少年のEVの荷台のドアを開けた。少年はおぼろげな視線をクリスに向ける。やがて表情がひきつった。自動小銃が判ったようだ。

 「落ち着きなさい。追っ手じゃないわ。アンタ(鈴原トウジ)でしょ」

 その言葉は劇的な効果を生み出した。少年の表情がはっきりする。

 「ちっ違う」

 少年の顔には明らかに恐怖が浮かんでいた。視線が自動小銃とクリスとマイの顔に行ったり来たりする。

 「俺は(鈴原トウジ)じゃない」
 「そんなにひきつった声で否定したら、そうだって言っているようなものよ。落ち着きなさいよ。マイ、足だけ解いてあげて」

 マイは頷くと、毛布を剥ぎ少年の足を固定している紐だけ解いてやる。その途端少年が足をばたばたさせた為、足がマイの手に当たってしまった。マイは痛そうに顔をしかめた。蹴られた右手首を左手でさする。

 鋭い小口径高速弾の発射音がした。何かが壊れた音がした。クリスが片手撃ちで適当な場所に自動小銃を撃ち込んだ。少年は凍り付いたように固まった。

 「アンタが何者でもいいけど、マイを傷つける事はしないで。かたわにされたい」

 クリスは銃口を少年の股間の辺りに向けた。人は本能的に心臓と頭と生殖器を守ろうとする。これらの場所に凶器を向けられると動けないものだ。

 「もう一度だけ聞くわ。どういう答えでもいいけど本当の事を答えて。(鈴原トウジ)ね」
 「そうだ」

 少年はとうとう泣き出した。泣きながら答えた。クリスは銃の安全装置をかける。マイに少年の片手だけを解かせた。

 「ごめんなさい。今やったこと謝るわ」

 少年はもう片方の手の戒めを解くと、恥ずかしいのか涙を拭く。ただまだ怯えている。

 「私達の姿見て何か思いつかない」

 クリスが言うとマイも横に立った。少年は二人を初めてゆっくり見ることが出来た。暫く見ていたが急に目が大きくなった。驚きでだ。

 「あっ」
 「多分そうよ」

 クリスはサングラスを取る。濁った左目が露わになった。マイも右手の平をかざした。何かが突き刺さったような痛々しい傷跡が見える。

 「もしかして、(惣流・アスカ・ラングレー)と(綾波レイ)か」
 「ご名答」

 暫く少年はまじまじと二人を見ていた。クリスはまたサングラスをかけた。

 「出てきたら。良かったら握手してくれる。私達は敵ではないと思うわ」
 「……そうだな」

 クリスとマイが少し後ろに下がると、少年は尻をずらして荷台の外に足を出す。EVから降りた。

 「ごめんなさい」

 クリスとマイは無防備に頭を下げたが、少年は何もしなかった。

 「いいよ。しょうがない」

 少年が手を伸ばしてきたので、クリスとマイは順番に握手をした。

 「ありがとう。ところで本名は。私は朝霧・クリス・アスロック」
 「私は大隅マイ」
 「俺は黒部イサオ」
 「ところで(洞木ヒカリ)はどうしたの」
 「早瀬ソノコって言うんだ」

 イサオの顔がまた泣き顔になった。

 「さらわれたんだ。きっと」
 「さらわれた……って誰に」
 「サンドモンキー」
 「じゃあんたの足に刺さっていたのはサンドモンキーの爪なの。伝説じゃなかったのね」
 「そうだ……あれ」

 急にイサオがふらつきだした。抗生物質で化膿は治まったが体力は戻ったわけではない。いきなり足に来たようだ。二人はイサオをEVの荷台に戻すと水を与えた。取りあえず毛布を掛けて楽にさせることにした。

 クリスとマイはイサオにとにかく休むように言った。イサオはソノコを頼むと言ってまた意識を失った。頼むといわれても何がなんだか判らないので、イサオがまた意識を取り戻すまで休む事にした。クリス達も疲れが溜まっている。荷台で休む事にした。
 何か叩く音がするので目を覚ますと辺りは暗くなっていた。隣りにぴったり付けたイサオのEVからだ。そこにいるのかとイサオが小さい声で言っている。クリスはマイを起すと室内灯を付けた。地上は夜に成ると急激に冷え込むが、地面の下はそれ程気温に変化が起きないらしい。寒くない。
 二人が窓に顔を寄せるとイサオも同じ様に顔を近づけて来た。窓を開けると湿った空気が室内に入って来た。イサオも窓を開けた。

 「具合は」
 「だいぶいい。それよれりソノコ帰って来ないか」
 「来てないようよ」
 「そうか」

 落胆の色が隠せない。イサオは座席の背もたれにもたれ掛かる。まだ体力は回復していないようだ。目を瞑る。

 「頭ははっきりした。熱で働いて無い様だったけど」
 「なんとか」

 身を起すとまた窓に顔を出す。

 「何と呼べばいい、私はクリスでいいわ。こっちはマイ」
 「じゃイサオでいい」
 「そっ、でソノコだっけ、本当の恋人なの」
 「元は違った。二人とも一番似ているって軟禁されそこで知り合った。伝説だと(鈴原トウジ)と(洞木ヒカリ)は恋人だろ。一緒の場所に入れられてて仲良くなった」
 「そっ。今では恋人なわけ」
 「そう言ってもいい」

 よく見るとイサオの唇が乾いて割れている。

 「これ。飲みつくしてもいいわ」

 クリスは足元に有る小さな水のボトルをイサオに手渡した。

 「ありがとう」

 炎症の為まだまだ脱水状態に有るのだろう。イサオは美味そうに水を飲む。

 「で何で離れたのよ」

 イサオが飲み終わったところで声をかけた。

 「よく判らない」
 「なぜ」

 マイが話したのをイサオは珍しそうに見た。

 「サンドモンキーに襲われて、俺それで熱を出して朦朧としていた。ソノコが水を探して来るっていってそれきり」
 「ねえ、サンドモンキーって……ん」

 クリスがサンドモンキーに付いて聞こうとした時、ダッシュボードに警告灯のランプが瞬いた。人間ぐらいの大きさの動物が近づいて来た時に警告するように設定してある。

 「ちょっと待って、人みたい。声と音を立てないでいて」
 「判った」

 クリスは荷台から運転席に移る。マイは助手席に移った。レーダーの結果を解析すると、身長150cm程度体重42Kgぐらいの二足歩行の動物の様だ。暗視カメラを向ける。暗視カメラのモニターには青いブラウスとスカートの少女がとぼとぼと歩いているのが見える。イサオのEVが有った辺りまで来て立ち止まると途方に暮れたように立ち尽くす。

 「イサオって呟いている」

 助手席でヘッドフォンを付けて超望遠マイクをコントロールしていたマイが呟く。コードを伸ばして窓から隣りのEVにヘッドフォンを渡す。イサオが耳につけた。

 「ソノコの声だ」
 「私が行って来る。マイ、スピーカーでイサオに話させて」
 「うん」

 マイはマイクを取るとやはりコードを伸ばしてイサオに渡す。

 「今から行くからそう言って」
 「判った」

 イサオはマイクをとった。

 「俺だイサオだ。ここで人に会った。なんと(惣流・アスカ・ラングレー)と(綾波レイ)だ。今からそちらに行く」
 「判ったぁ」

 細い声が聞こえて来る。クリスはEVのライトを点けた。遠くの交差点の真ん中に少女が立っているのが見える。マイにここで待てと言い運転席を降りるとイサオのEVの運転席に移る。ライトを点けると発車した。すぐに交差点に付いた。

 その少女はライトの光をまぶしそうに見ている。取り立てて特徴がある容姿では無い。やたらニキビが目立つのと二つに分けた三つ編みが目立つ程度だ。荷台の横のドアが開くと、転がるようにイサオが出て来た。

 「イサオ」
 「ソノコ」

 ふらふらしているイサオにソノコがとび付き抱き付いた。ソノコの方は健康らしい。クリスはライトを弱くすると運転席を降りた。二人が固く抱き合っているのをEVにもたれて見ていた。しばらくしてソノコが気が付いた。イサオを放す。

 「あっあの」

 ソノコが怖々と声をかける。

 「私、朝霧・クリス・アスロック。(惣流・アスカ・ラングレー)って言った方が判るかな」

 クリスは寄り掛かるのを止めて二人に近づくと、握手の為手を伸ばした。

 「私、早瀬ソノコ」

 ソノコは怖々とクリスの手を握った。


つづく


ver.-1.00 2003-1/8公開
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「わたくし、もう小説の解説なんぞをするのは飽きたのですわ。」
「…はい? (まだ一度しか…というか一度も解説していないような気が致しましたけれど…)」
「大体今回、一体なんですの? 生理のシーンも排泄のシーンも無いなんて。まあ確かに、股間狙撃プレイは魅力的でしたが…」
「だからトモヨさん、キャラが」
「ですから、今日はわたくし相田トモヨが、2003年の大予測をしていきたいと思うんですの。」
「はあ…」
「相田★おやつ風カンパニー社長こと、不肖わたくしトモヨ.jp(女性会員比率65%以上)が、司会進行を勤めさせて頂きますわ。」
「…何が何やらですわね…」
「まず今年の特徴ですが、西高東低型の気圧配置の日が長く続きがちなのですわ。ある一定の時期におきまして。」
「トモヨさん?」
「それから日本沈没。」
「…」
「また、2002年、様々な方向へと多様に進化を遂げたジャパニーズ・ロック・シーンは、今年もその勢いを持続。昨年のモンゴル800、元ちとせ等に代表されるように、コアな音楽ファン達の熱い支持が、マスメディアの壁を打ち破りシーンに革命的インパクトを与えていくものと思われるのですわ。」
「何で急に渋谷陽一調なんですの?」
「後、日本沈没。」
「…やる気無いでしょう?」
「あら、それはお言葉ですわフランソワさん。わたくしこう見えましても、ソニンさんの理不尽な挑戦シリーズは全部欠かさず見てまいりましたのよ。ゲラゲラ笑いながら。」
「関係無い…と思うのですけれど…」
(フッ)分かりましたわ。フランソワさんがそこまで言われるのでしたら仕方ありません。わたくしもファー・イースト・リサーチ社研究員としてこの事は黙っておこうと思っていたのですが、もっとも衝撃的な今年の予測、フランソワさんにだけ、こっそりとお教え致しますわ。」
「…社長じゃなかったんですの?」
「今年は…来ますわよ。寒河江トンキューが。」
「…」
「キダムも来ますわよ。」
「その…何でしたかしら? もう一度おっしゃって頂けます? …とんきゅう?」
「寒河江トンキュー、ですわ。元はオランダ発祥の格闘技でして、日本に初めて紹介されましたのは一昨年辺りでしたかしら。今やおしゃれキッズの間での知名度も急上昇中、今年大ブレイク・ノー・ダウトの、バレーのような詰め将棋のような、あきる野市発祥の競技なのですわ。由来はアジアの辺り。」
「どこ発祥だか綺麗さっぱり分かりませんわね。」
「30人編成のチーム3つで対戦するのが基本ですわ。」
「お、多いんですのね…」
「但し30人中25人までは、その場に居合わせた医師ですわ。」
「…」
「後の5人は入院中。」
「…スポーツなんですのよね?」
「更に後8人は、話せないし、夢みがち。」
「いやあのトモヨさん、増えてますから。」
「3つのチームは円を3分割した形状のコートにそれぞれ陣取り、コートを仕切る壁の穴越しに、対戦チームにモールス信号をただただ送りつづけますわ。」
「壁が仕切ってるんですの? コートを?」
「そこで見事カップル成立となると、二人は愛の歌を奏であうのですわ。」
「二人、って…」
「もちろん、ストロベリーフラワーの愛の歌ですわ。」
「…」
「そして男が答えるには、「そうかもしれねえな。なにしろ品川の立て場で豆食わせたから」。…お後がよろしいようで…」
「………」
「と、以上が代表的な演目という訳ですわ。」
「…無理矢理、落語に戻しましたわね…」
「ジョヴァンニの。」
「どなたですのっ!」
「それから、日本沈没。」


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