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←Part A


宏子がバタン、と屋上の扉を開けると、ジュチャが自身の体を光らせて防御膜を張りながら、目の前のモンスターと対峙している所だった。
ブズ、ブズズズズズズ…。
<…あ、三人とも。注意して、このモンスターは魔力が強いから。>
汗を滲ませながら、ジュチャが顔を向けずに伝える。
<弾を当てよう! リジュワナ、モニク!>
ポケットからイハッジャを取り出す宏子。
<待って。宏子、ジュチャを見る限りでは、私達もまずは>
シュウウン、プシュウッ、プシュプシュプシュウッ。
<ぎやあっ、わ、わわっ、>
<…防御をした方が良いと思うの。>
足元をじたばたさせている宏子を見ながら念じるリジュワナ。
<このモンスターはね、>
ステッキを構えてモンスターを凝視しながら、ジュチャが伝える。
<弾を同時にたくさん出すから。よけきらないと死ぬわよ。>
<ぜえ、ぜえ、ぜえ…>
肩で息をしながら宏子は自分の防御膜を張った。赤い光が彼女の全身を包む。
目の前のモンスターは屋上から数メートルの高さをほぼ静止状態で浮かびつつ、こちらに数発づつ青い攻撃弾を放ってきている。
自分の周囲に紫の光の球を光らせているリジュワナが、ジュチャを見た。
<よけないと死ぬのは大体想像がつくけど…それで、どうやれば上手くよけられるのかしら。>
<逃げるのよ。>
<…>
<走ってね。>
<…>
<…>
<ええええっ!?>
既にどこか諦めている様子のニ人と、一人念を上げて驚いているモニク。
<…>
<…あのー、ジュチャ。他に何か方法、無いの?>
無言のリジュワナの隣で宏子が聞く。
<逃げつつも弾を当ててね。四人いるんだから誰かは当てるでしょ。>
モンスターを睨みつけたまま伝えるジュチャ。
<…>
<…向こうも当てやすいでしょうね、四人もいたら。>
<リ、リジュワナちゃん…>
<ただの冗談だから。>
モニクに伝えるリジュワナ。
<それじゃ皆、攻撃の準備は出来たわね? 行くわよ。3、2、1…行け!>

ブズズズズズ…。
ジュチャの号令と共にモンスターの周囲に纏わりついていた水色と赤の光が消える。それに合わせるかのようにモンスターが上昇する。見上げる四人。
<気律の力を、我の…あーっと…>
リジュワナの方を見る宏子。
<…頭上に。>
<頭上に! フィア・ディイイイイイシュ!>
シュウウウウウウウウン…。
シュウウウウウウウウン…。
手持ちのイハッジャを光らせる宏子。同時にモンスターの体からも光が溢れ出す。
シュウンッ。
シュウンッ。
双方から光の弾が放たれる。
<!>
モンスターへ一直線に向かう宏子の光。一方モンスターから放たれた光の弾は途中で分裂し、散弾銃の弾のようにいくつもの光に分かれてこちらにやってきた。
<や、やばっ。>
シュウウウウウウン、ブシュウッ。
曲がりくねりながら自分の所にやってきた光の弾を、慌てて消す宏子。
<ちっ…>

「きゃあああああああああっ!」
シュウウン、ブシュウッ。
<あ…ありがとう、リジュワナちゃん。>
モニクはつぶっていた目を開き、自分を襲ってきた弾を消したリジュワナに礼を言う。
<モニク、あなたは自分を守る事をまずは考えて。宏子、ジュチャ、同時に撃ちましょう。>
頷く宏子とジュチャ。
<気律の力を我の頭上に。フィア・ディシュ!>
シュウウウウウウウン…。
三方向から光が溢れ、一点へと集中する。それを逃れながら三方向へ同時に反撃の弾を放つモンスター。
<っ! すばしっこいなあ。>
眉を上げる宏子。
シュウウウウン、ブシュウッ。シュウウウウウウウン、ブシュウッ。
ジュチャは何度も弾を撃つが、ことごとくモンスターの放つ光に吸収されている。

…シュウウウウウウウウウウウウウウウウウンズバアアアアアアアアアアアン!
<…え?…!>
<リジュワナ、よけて!>
リジュワナの背後で突然風が起きた。リジュワナのいる所へ向けてジュチャが弾を放つ。
シュウウウウン、ブシュウッ。
倒れるようにしてよけるリジュワナの頭上を通ったその光は、リジュワナの背後に新たに現れたモンスターに命中していた。
ブズズズズズ…。
ボンッ。
水色の光の弾に飲まれ、消滅したモンスター。
宏子が念を上げる。
<こ、こいつ自身も増殖するの?>
<しないわよ。磁石に引き寄せられてここに来ただけ。…どうやらお客さんつきでね。>
ジュチャの念に、三人が今現れて消えたモンスターのいた方向を見る。

「え…? ここは…日本ですか。」<…そうですよね?>
小柄で浅黒い肌の、きつく編みこんだ髪型の少女、が英語とテレパシー混じりでこちらを向いていた。
<えっと、あんたは…あ、あー…>
少女は下は黒いスリムジーンズで、上はキャミソールを着ていた。下着をつけていないらしいその上半身に、視線が釘付けになる宏子。
<…自宅にいたんです。>
視線に気付き、少女が念を返す。
<…そ、そっか。>
シュウウウウウウン。
<っと!>
<宏子、挨拶は後で交わしましょう。まずはこれを消して!>
<あ、ん!>
ジュチャに頷く宏子。
ブズズズズズズ…。

宏子はイハッジャを再び構え、モンスターを睨みつける。
<いい加減うっとうしいぞ! ザナ・キュディヌ・ヒオ!>
シュウウウウウウウウウウウウン…。
<って、あれ?>
光と共に、ふわりと浮かび上がる宏子。
<何で自分が飛んでいこうとするのっ!>
耳を立てるジュチャ。
<あれ、私今何て言った?>
<自分が動く呪文でしょ、それは!>
<え、えっ?>
「ええええええええええええええええええええええええっ!」
叫びながら宏子は、自分の放った力で一直線にモンスターの方向へ飛ばされていく。
<あれが…確か佐藤さんですよね。>
<そう。あれが、私達のエースよ。…遺憾ながら。>
キャミソールの少女に答えるリジュワナ。
「わ、わ、わ、わ、わああああああああああああああああっ」
ブズズズズ、ブズズズ…。
急にこちらに飛んでくる宏子に驚いたのか、摩擦音を上げつつ、モンスターがその羽をはばたかせだす。
<リジュワナ、上を狙うわよ!>
<了解。 フィア・ディシュ!>
プシュウッ。
プシュウッ。
ジュチャとリジュワナが同時に光を放つ。
ブズズズズズズズ…。
シュウウウウウウウウウウウウウウウウウン、ボンッ。
「うわあああああああああああああああああああああああんんごっ。」
ドシンッ。
水色と紫の弾の不意打ちをくらい、モンスターが光の中で消滅する。その消滅した直後の空間を素通りしながら赤い光に乗って屋上を低空飛行していた宏子は、そのまま校庭方面へ落下していこうとする直前に、走りよったモニクに足首をジャンピングキャッチされるという形でコンクリの床への強制着陸に成功していた。
<はあ…。>
額をぬぐいながら息をつくジュチャ。
<あ、はは…おとり作戦成功…。>
<…作戦っていうのは事前に多少計画してやるものでしょ。>
頭上の耳をひくひく動かしながら念ずるジュチャ。


<…>
<改めて紹介するわ。>
リジュワナが床にがにまたに倒れている宏子の横に立ち、少女の方を向いた。
<この日本人の女の子が佐藤宏子。…それから、宏子の足をつかんでいるこの子は、フランスからこの前来たモニク・フェヨール。…来たっていうのは、普通に飛行機に乗ってね。私はバングラデシュ人のリジュワナ・アニシュル・ホク。あなたと同じように、あのモンスターの力で瞬間移動してここに飛ばされて来たわ。こっちの人はジュチャ・ホス・トゥカナシュ。プオラギイック、知ってるでしょ? 彼と同じクザラル人で、彼の上司よ。それで、私達は全員多少の魔力があるの。…あなたは確か、アメリカから来たのね?>
自分の肩に手を置きながら少女が頷く。
<アリーザ・ビンティ・アブダラ・サハネイヤです。ロサンゼルスにいました。…5分前まで。>
<サハネイヤって…英語の苗字じゃないよねえ?>
床から起き上がったモニクが、まだ倒れている宏子の体を引き起こしながら念じる。
<マレーシア語です。…といっても、私が喋るのは英語ですけど。>
<…マレーシアって確か、私達と同じイスラム教徒の国だったわよね?>
そう念じながら、リジュワナは改めてアリーザの服装を見る。
<…親は真面目なマレーシア人だったんですが、その子供は骨の隋まで堕落したアメリカ人に育ってしまいまして。>
苦笑気味に答えるアリーザ。
<それにしてもホクさん、この間は有難うございました。>
<は…?>
アリーザは急に、リジュワナに頭を下げる。リジュワナはまばたきをして聞き返した。
<この間…って? 私、今初めてあなたに会うのに。>
<え? …ええ、もちろんそうですよね。ええ…私、急に何を言ってるんでしょうか。>
アリーザは自分の念に、不思議そうに首をかしげた。
<…>
ジュチャは少し離れた場所で、腕組みをしながらリジュワナをじっと見ている。その視線の鋭さはまるで、獲物を前にしたハンターのようだ。

ジュチャの視線に気づいていないアリーザが、微笑しながらリジュワナに念じた。
<ところで堕落したアメリカ人としては、早い所、自分の家に戻れると有難いのですが…>
<気持ちは分かるけど、帰ってもまたこっちに連れ戻されるかもしれないわよ。>
リジュワナの念に、アリーザは頷く。
<そうですね…まずは、それをどうにかしないと…何とかこういう事を防止は出来ないのでしょうか?>
アリーザはジュチャの方を向いて尋ねる。
<…>
<トゥカナシュさん?>
<え? あ…ええ。そうね。防止ね。…確かに防止出来るよう、努力はしているわ。でも現状について、プオラギイックは何て言ってた?>
<…>
無言で眉を上げる、という形でアリーザはジュチャに答える。
<でしょうね。>
<ようこそ日本へ。飛行機代が浮いて良かったわね。>
ジュチャが頷く。隣で肩を上げるリジュワナ。
<…それは嬉しいですね。確かに。>
アリーザはため息混じりに念じた。

ジュチャはアリーザの肩に手を置いた。
<まあ、これで四人が揃ったっていう事ね。アリーザには悪いけど、やっぱり皆、しばらくの間は宏子の家に住んでもらうわ。それで良いでしょ?>
<って何であんたが勝手に決めるっ!>
アリーザがジュチャを見て念じる。
<トゥカナシュさん、私はホテルで良いです。>
<「で、良いです」…。>
しみじみと繰り返すリジュワナ。
<こっちはそれだと余り良くないのよ。>
ジュチャが肩を上げる。
<まあ、それはこれから話し合わないといけないわね。…ああ、それから私の名前は、後ろのホス・トゥカナシュは装飾名だからね。>
<装飾名?>
<あれ、地球人でも装飾名を使う民族っているでしょ?>
不思議そうに周囲を見回すジュチャ。
<ええと、「de」とかならあるけど…?>
<「何々の」? うん、まあそれもあるし、>
ジュチャはモニクに頷く。
<要はそれだけだと名前にならない名前なの。だからアリーザ、私を呼ぶときはジュチャで良いから。敬語かどうかに関わらずね。>
<そうですか。分かりました、ジュチャさん。>
<ホス・トゥカナシュ、私もホテルが良い。>
頷くアリーザの隣で宏子がボソっと念じる。
<それなら私は和式の旅館が良い。>
楽しそうに付け足すモニク。

<それで、ジュチャさん。いずれにしても私は帰りますから。>
<は?>
宏子がアリーザの方を向く。
<あんた、今までの話の流れ聞いてた? …いや、私はそれで全然構わないっていうかむしろ歓迎なんだけど、>
<いえ、ですから、ここにしばらくの間滞在しろと言うならそれは仕方がありませんが、対策が出来次第帰らせて頂く、という話です。…それは構わない、というか、当たり前の話だと思うんですが…>
<…>
口を開けたまま、宏子がジュチャに目を向ける。ジュチャは肩を上げた。
<…まあ。どうしてもって言うなら、私達もあなたに強制は出来ないわ。その辺りの事も、またこれからゆっくり話し合うとしましょ。…それにしても、>
ジュチャは宏子達を見回す。
<地球人、っていうのは…>
<なんだかギスギスしてるんだよね。皆、もっと仲良くしようよ。>
<…>
頬を膨らませ、どうやら怒っているらしいモニクがジュチャの言葉を引き継ぐようにして言う。宏子達は一様に、ため息をついた。


A-Sato Ltashofe Yde Ilne

Episode 4: +3

板張りの建物の中で、剣道着を身に付けた女子生徒達が建物中に響く声を上げていた。
十人前後の生徒達は声と共に、一歩踏み出しながら竹刀を真正面に何度も振り下ろしている。
その時の足音、防具のカサカサとこすれ合う音、微かに聞こえる、竹刀が風を切る音、それら全てが渾然として、独特な高揚感を醸し出していた。
「…199、200! よし、今日の練習はここまで。集合!」
剣道着を着てはいるが防具は付けずに、彼女達を後ろから眺めていた女子が手を叩くと、竹刀を素振りしていた生徒達は彼女の周囲に整列する。
「野沢は腰を落ち着かせる。大井はノロノロし過ぎ。それから山根は…分かってるよな。いつも言ってるけど、各自基礎をしっかり固める事。じゃあ今日は以上!」
部員達は彼女の言葉から一拍置いて、綺麗に揃って「ありがとうございました」と頭を下げた。
中央の彼女は軽く頷いてから、その中の一人の生徒の方を向いて声をかけた。
「あ、金成。お前はちょっと残ってくれ。」
「あ、はい。」
お辞儀をしていた志穂は、顔を上げて改めて頷いた。
「…何やらかしたんだよ。」
隣の部員が、小声で言いながら志穂の肘をつつく。
「…何もしてねーよ。」
「それじゃあ、解散! 皆とっとと帰れよ!」


十数メートル向こうの、建物内の反対の隅の方では数名の男子生徒達が彼等の剣道部の練習を続けている。その足音と声と、階上の柔道部の受け身の音とがうるさく鳴り響いている。しかし、女子生徒でまだ道場に残っているのは、志穂と目の前の彼女のニ人だけだった。
志穂は彼女を上目遣いで見上げた。
「部長…」
「ん、まあ硬くなるなよ。…まだ着替えている奴等もいるだろうから、ここで話した方が良いと思ってさ。」
「…はあ…」
顔以外の防具はまだ付けたままで、熱気で赤い顔になっている志穂は部長の言葉にやや意外そうに頷く。
「金成はさ…時々気分の切り替えがはっきり出来ない時があるよな?」
「す、すいません!」
「ん、まあ、お前自身もそれはよく分かってるみたいだし。これから気をつけていけば良い事なんだけど。」
そこまで言うと部長は、ショートカットの髪をかきながら、どこというでもなく周囲を見回す。
「ん…今日、遅刻したんだよ。」
「遅刻…ですか?」
繰り返す志穂。今日の部長を思い返すが、志穂が道場に着た時には、彼女は既に一人で素振りの練習をしていたはずだった。
「うん、弟がね。」
「ああ…」
−弟っていうとヒョロヒョロした眼鏡の1年生だったよな。パソコンマニアのグループの奴で、確か名前が、平野…ってそれは当たり前か、部長の弟なんだから。
「うん。それで…急いで学校に来る途中な、変なものを見たって言うんだよ。」
「はあ…」
部長はそこで言葉を切ると、今度は志穂の目をまっすぐ見た。
「…お前…佐藤って子知ってるよな。」
「佐藤…自分の同級生の女子、ですか?」
「それだ。それがな…何か変な事やってたって、弟がうるさくてさ。」
「はあ…」
−平野と宏子? 別に何も関係無かったと思ったけど…。良い関係も悪い関係も。
「偶然見たんだと。宏子と、あの…何か最近、急に、インドだっけ?から来た留学生達がいただろ?」
「え、ええ。」
「そいつらが屋上でモンスターと戦ってたって言うんだよ。」
「…モンスターですか?」
「うん。最近この辺りにモンスターが出没してるって噂、聞いた事無いか?」
「あ、はい、ありますけど…それ、ですか?」
「そう。それと戦ってたって言ってたぞ、弟が。」
志穂はそこまで聞くと、顔に現れていた緊張を一気に解除した。
「もー。部長ぉー、勘弁して下さいよー。自分、そんな事言われるためにわざわざ居残りですかあ?」
「…これなんだけどさ。」
平野部長は腰から一枚の写真を抜き取る。それを受け取り、見入る志穂。
パソコンのカラープリンターで印刷したらしいその写真はずいぶん不鮮明だが、確かに宏子達らしき人物が学校の屋上で、得体の知れない黒い虫らしき物体と相対している様子を写しだしていた。双方から心霊写真の「オーラ」のような光が溢れ、一直線にぶつかっている。
「…まあ、確かに宏子には見えますけど…」
「信用出来るか?」
「え?」
志穂は部長を見る。
「出来ないだろ、こんな話。」
「いや、その…すいません。」
「違うって、私も信じてないって事。大体あいつだったら、これくらいの写真パソコンで合成するのも訳ないだろうしな。」
「は、はあ…でもそんな事、何のために…」
「さあな…。あれもさあ、家にばっかこもってるから、自分の好きなゲームかアニメか何かの主人公と、自分の好きな子が一緒になっちゃってるのかもなあ? ほら、言うじゃん、現実と嘘の区別がつかなくなる若者が多いってさ。」
部長の話を聞きながら、気持ち悪そうに口を引きつらせる志穂。
「は、あ…。でも、部長の弟さんが宏子を好きだなんて、知りませんでした…」
「いや、佐藤じゃなくてその留学生なのかもしれないしな。」
「ああ、はい…」
「何にしろ、潔く振られればそれで良いんだけどさ、何か相手に迷惑かけないかって心配で。こんな「証拠写真」作り出すようじゃ、なあ。」
写真をひらひらさせる部長。
「だからさ、金成。お前、なるべくその佐藤って子とか、留学生とか、気をつけておいてくれないか。私も弟が馬鹿な事しないように、きつく言っておくからさ。」
「あ、はい。…これ、貰っておいて良いですか?」
志穂は写真を指差す。
「ああ。…それじゃ、今日はお疲れ。」
「ありがとうございました。」
志穂は一礼すると、ふと立ち止まり部長を見た。
「…」
「…何だよ。」
「…結構、弟さんが、可愛いんですか?」
「何ニヤついてんだよ。ほら、とっとと着替えるぞ。」
部長は志穂を追い越して道場を出て行った。


「何でこうウチらってまとまりが無いかな。」
腰に手を当て、ため息混じりに宏子が言った。
休み時間らしい教室。相変わらず制服の窮屈そうなモニクは周囲の人垣とにこやかに英語で会話。リジュワナは一人窓際で外の景色を眺めている。
「…まあ、そう無理に仲良くしなくても良いんじゃない。」
教室を見回してから、苦笑しつつ美耶が答える。
「そりゃね。私も大して仲良くしようとか思っちゃいないけどさ。私も一貫して被害者な訳だし?」
椅子に寄りかかる宏子。
「…もー。」
「いや、あいつらもあいつらだけど、アリーザなの、問題は。」
ふう、と再び息をつく。
「同居は嫌だってゴネ続けて、結局近所のアパート借りちゃうし。いや、こっちはそれはありがたいんだけどさ。それに学校に来るのだって、日本の学校に急にたくさん外人が来たら不自然だって言って頑固に拒否するし…。」
「でも、それも確かに間違ってないよねえ。」
「いや、まあそうなんだけどね? 何ていうかこう、もうちょっと連帯感っていうかさあ、」
「な、宏子。」
背後からの声に宏子は一瞬ビク、として振り返った。
「…何だ志穂か。」
「悪かったな、LLクールJじゃなくて。」
「んー、で、何かね?」
あくびをかみ殺しながら教科書を出し入れしていた宏子は、ふと険しい顔になって志穂の方を向いた。
「いや、この辺のページのやくはやってないぞ。」
「…誰もそんな事聞いてないって。」
「んー? じゃ、何さ。」
「え? ん、まあ、何つうか…」
志穂は鼻の頭をかきながら、教室に視線をさまよわせる。
「あのさ。最近…変な噂、ちょっと聞いてさ。」
「あー。」
宏子は再び難しい顔をして、志穂の言葉に頷いた。
「ついにバレたか。あんたが実は男だって事が、家族に。」
「そうそう実は風呂に入ろうとした時…って違うだろ。大体「家族に男ってバレる」って意味が分かんねーよ。」
疲れた様子で言い返す志穂。
「えっ!? …そ、そうだったの? …でも、こんなに可愛いのに…え、えっ!?」
「……美耶…」
「で、本当は何よ。」
「ん、ああ。あのさ、」
志穂は宏子の机に腰をかけながら頷く。
「この辺りにモンスターが出るって噂、知ってるか?」
「モンスター?」
ぽかんとした様子で聞き返す宏子。
「うん。すげえデカい虫みたいな奴で、酸か何かを吐いて人を襲うって話なんだけど…」
「何? そんなのがこの辺うろちょろしてるって噂があんの?」
「ああ。聞いた事、無いか?」
「いんや? 美耶は?」
「え? …あ、ううん。私も聞いた事無い。」
美耶が手を振る。
「ん、そうか…。」
「でも、本当にそんなのがいたら怖いねえ。」
「っていうかさあ。そんな人を襲うようなのが本当にうろちょろしてたら噂じゃすまないじゃん。ニュース特番出来るよ。」
「まあ、なあ。」
頷く志穂。
「全部噂だしな。で、さ。話によると、ウチの学校の生徒が、そのモンスターと戦っているらしいんだよ。」
「…」
「…」
志穂の言葉に、宏子と美耶は思わず顔を見合わせた。
「…はあ? 何それえ?」
「…プッ」
肩をふるわせつつ声を上げる宏子と、たまらず吹き出している美耶。
「なあ? どう思うそれ?」
ニ人につられ、志穂も笑いつつ声を上げる。
「だってさ、相手はモンスターなんでしょ、その、何? デカい虫みたいな。」
「そう、そう。」
「そんなもん高校生がかなうような相手じゃねーじゃん。自衛隊とかが出るような事でしょうが。」
「しかもさあ、誰だと思う、その戦ってる奴等って?」
美耶が笑顔で志穂に言う。
「体力で言ったら、意外に志穂かもしれないよ? 男子に比べて敏捷性とかありそうだし。」
「っていうか志穂でしょ?」
「それが違うんだなあ。聞いて驚け?」
志穂は二人に指を振る。
「宏子、お前なんだと。」
「えーっ!?」
宏子は笑いながら自分の胸に手を当てる。
「しかも最近来たあのニ人の留学生も一緒になって戦ってるらしいぞ。」
「何だよそれー。誰、そんな訳の分かんない事言ってる奴は?」
「え…さあ……私は、部活で聞いたんだけど。…でもそいつも人から聞いて、そいつの友達もアレだって言うから…」
「ふーん? でも、何でそんな噂言い出すかね? 私と、」
宏子は教室前方の二ヶ所を見渡す。
「あいつらで、そのモンスターに戦うって。そりゃ確かにホストファミリーはウチだけど? だからって、別に仲良い訳でもないのにさあ。」
「もう、一緒に住んでるんだから仲良くしなよー。」
「モニクはテンション高すぎ。リジュワナは低すぎ。どっちも普通の人間とは合わないって。」
宏子は美耶に手を振ってみせる。
「それにしても私らが戦ってるって、根拠何よ。私別に体力無いし、喧嘩も強くない…っていうか本気で喧嘩した事なんて無いし。あいつらは知らないけど、二人とも大して強そうには見えないよ。」
「うん…その、見たらしい。お前達が屋上で戦ってたんだと。そのモンスターと。」
「見た奴、何かマズい薬でもやってたんじゃないのー。」
「…まあ、それに近い精神状態かな。」
志穂はニ人に聞こえない小声で呟いた。
「じゃあ何、あれだ。私が地球を救う救世主みたいなもんだ。救世主の女神様だ。」
左足を折り曲げて椅子に乗せた格好で宏子が言う。
「…」
「…」
「…どうしてニ人とも素でこっちを見るかな。」
「ふう…」
目をそらし、美耶がため息をつく。
「…ま、とにかくそういう噂を流した奴がいるって事だからさ、一応気をつけとけよ。それこそ、理由が分からないからさ。」
「あ、うん…ま、そっかな。」
「うん。…あ、もうベル鳴るな。じゃ。」
志穂は頷くと、宏子の席を離れていった。

<…一昨日のが見られたって事?>
宏子は、視線を前に向けたまま美耶に念じた。
<屋上は、一昨日が最初だったんだよね? だとしたら、やっぱりその時…。>
<ジュチャの系の魔法、全然聞いてないじゃんよー。もう1回かけ直してもらわないと。この辺りの住民全員に。>
<…あのさ、志穂ちゃん、多分見た人知ってるんじゃないかな。>
<ん…そうなん?>
<うん…。>
<何でそう思うの?>
<何となく、雰囲気で…でも、それを言ってくれなかったって事は…どこかで、私達の事疑ってるのかもしれない…。>
<…>
何も念じず息をつく宏子。
授業開始のベルが鳴った。生徒達は皆自分の席へと戻っていく。宏子の席を離れる美耶。
<モンスターも嫌だけど、周りの人を騙すのはもっとヤだな…。>
<うん…>
<それなら一人でカムアウトすれば。でも、私は巻き込まないでね。最初から、やりたくてやってる訳じゃないし。>
<…>
教室前方の窓際の席から聞こえてきた念に、宏子は無言で眉を上げた。


「え? じゃあスペドン4の場合まずスバンディーナに行くの?」
「そ。そこでブルーファイヤーを使って一気に、」
「待って、ブルーファイヤーって何。俺それ見た事ないんだけど。」
「え? だから、ブルーファイヤーはグウェンランドでだなあ、」
男子生徒はそこまで言ったところで、ふと話し相手の生徒の背後に見知らぬ女子生徒が立っている事に気付き、顔を上げた。
「…君、誰?」
「ここの中に平野っているか?」
ショートカットの女子のぶっきらぼうな言葉に、そこにいた四人の男子は顔を見合わせる。
「…ああ、今は学食にいると思うよ。何か用事でも?」
「まあな。」
志穂は頷いた。
「あ、あんな奴に告白する女の子がいたとは…」
「そんな訳無いだろ。今、この子、ここの中にいるかって聞いてたんだから、顔も知らないって事じゃないか。」
「ああ、そうか。」
「どっちかって言うとあいつが何か変態な事してそれに抗議しに来たんだろ?」
グループの中の一人の言葉で、男子生徒達はゲラゲラと笑っている。
「学食にいるんだな?」
「ああ、うん。眼鏡かけてて見た目は…」
「海砂利水魚。」
「海砂利水魚の有田似。多分一人で雑誌読みながらサンドイッチ食ってるから。わざわざ学食でサンドイッチ食べる奴なんてあいつ位だから、すぐ分かると思うよ。」
「そうか、ありがと。」
志穂は男子生徒たちに頷くと、教室から歩き出した。
「で、何の抗議に行くの?」
「…」
生徒のかけた言葉に立ち止まる志穂。
「…まだ、抗議するかどうかは決めてないけど。」
「何発殴る予定?」
「…取りあえずは1発かな。」
「あはは、3発位までは構わないって、俺が許すから!」
「…」
爆笑している生徒達を後に、志穂は学食へと向かった。


頬杖をつきながらパソコン雑誌を読んでいた男子生徒は、人影に気付き顔を上げた。
「…」
「お前、平野だよな?」
耳にピアスを開けている野性的な顔つきの女子が、手をテーブルについてこちらを見下ろしている。
「…ああ、そうだけど…うぐっ!」
「ちょっと付き合って欲しいんだけど、良いかな?」
「…」
平野は、急に自分の制服の襟元をつかみあげた女子生徒にコクコクと頷いた。


「はあ、全員違う?」
「違うって。大体誰からそんな話聞いたんだよ。」
平野は屋上を吹く風に目を細めつつ眼鏡を上げた。
「……お前の姉さんが言ってたんだよ。言ってたっていうか、心配してた。」
やや躊躇しながら答える志穂の言葉に、平野は息をつく。
「はあ…そりゃ、確かにゲームばっかしてるし運動しないし、姉ちゃんから見りゃ今にも近所の人を刺し殺しそうに見えてるんじゃないか、俺は…。」
「私にもそう見えるけどねえ。」
「俺から見たらあんたの方がよっぽど暴力的だよ。見えるっていうより、そのものじゃないか。」
腕組みをしていた志穂は、特に怒るでもなく屋上を見回す。昼休み、何人かの生徒達が昼食をとったりゴロ寝をしたりして、のんびりした空気を作り出している。志穂達の空気だけがそこでは明らかに異質だったが、周りの生徒達はそれには気付いていないようだ。
「…それで、誰のストーキングをしていた訳でもないとしたら、一体どういうつもりなんだ。」
「どうもこうも、姉ちゃんにも言った通りだよ。一昨日偶然に見たんだ。本当に、ここで、佐藤さん達がモンスターと戦っているのを!」
「…」
「…そんなに信用出来ないなら本人に聞いてみれば良いじゃないか。」
志穂の視線に言い返す平野。
「…何でお前は聞かないんだよ。」
「それは…これから、聞こうと思っていたんだよ。」
「…」
ため息をつく志穂。
「…私はもう聞いた。」
「え、そうなのか? …どう答えた?」
「モンスターの話なんて、聞いた事も見た事も無いって言ってたぞ。」
「そうか…」
平野は志穂の言葉で、軽く頷きつつ考え込んだ。
「…君は佐藤さんの友達なんだよな? わざわざ勝手に疑惑を作って、ストーキング容疑者に直談判に来る位なんだから。」
「まだ容疑は晴れた訳じゃない。そもそも「勝手に」疑惑を作ったのとは違う。」
平野は無視して続ける。
「…という事は、佐藤さんは君の身に危険が及ぶ事を避ける為に、あえて真実を隠しているんじゃないのか?」
「何だ? その、モンスターに戦っているって真実を?」
「…」
無言で頷く平野。
「…あのさあ。…私、まだるっこしいの苦手だから単刀直入に聞くけどさあ、そんな事して何になる訳? ホントどうかしてんじゃないの?」
「佐藤さんは君が大事な友達だから…」
「そうじゃなくて、お前が、何でそういう話を一々でっちあげられるのかって聞いてんだよっ!」
志穂の大声に驚いて、周囲の生徒達がニ人の方を向く。視線に気付き姿勢を戻す志穂。
「…」
平野はふう、と息をついてから口を開いた。
「何にもならないだろ、そんな事したって。確かに、俺が撮ったこの写真、これ位はパソコンの合成で作ろうと思えば簡単に作れるよ。…でも、俺が聞きたいよ。そんな事して何になるんだ? もし俺が佐藤さんなり、リジャーナーさん…だったっけ?なりを好きだったとしたら、俺ならこんな写真の前に、素直にアイコラを作ると思うよ?」
「アイコラ?」
「アイドルコラージュ。…まあ、この場合アイドルじゃないけど…つまり、ヌードモデルの体の画像に、佐藤さんの顔の画像をうまく合成するんだよ。わざわざ嘘の写真をでっちあげるんだったら、そういうのの方が実用的だろ? 男にとっちゃ。」
「…」
やや眉を上げつつも、志穂は軽く頷く。
「それにもし俺が佐藤さんを魔法使いに仕立てたい、とか思ったら、こんな学校の屋上での写真なんかにはしない。西洋の古城を舞台に竜と戦わせるね。…大体、この写真の佐藤さん、言っちゃ悪いけど鬼みたいな形相してるぞ。普段の佐藤さんは可愛いのかしれないけどさ…この顔をコラージュの素材にしちゃ、それこそ佐藤さんに失礼だろ?」
「…お前の妄想の方法はどうでもいいんだけどさ。この写真しか証拠が無いんじゃ、どう言い訳してもお前が勝手に変な事を言っているってとるのが普通だと思うぞ。」
平野はムッとした様子で眼鏡を上げた。
「俺を疑うのはそれこそ勝手だ。でも、今こうしている間にも佐藤さん達はモンスターと戦って命を危険に晒しているかもしれないんだぞ。仮にストーカーが訳の分かんない噂をたてていただけなら、それは迷惑ではあってもすぐに命には関わらない。でも万が一、本当に佐藤さんがモンスターと戦っていたんだとしたら、どうする? 俺が佐藤さんの友達で、彼女を本当に大事に思っていたなら、まずはそっちの可能性を考えると思うけどな。」
「…」
志穂は何か言い返そうとしたが、しばらく無言で宙を見つめ、やがて平野を見て口を開いた。
「…携帯電話持ってるか? 番号とメルアド知りたいんだけど。」
「え? …あ、ああ…」
頷き、腰のポケットをさぐる平野。
平野の取り出した携帯の液晶画面を見ながら、志穂は自分の携帯に同じ番号を入力する。
「…今は、誰にも言うなよ。この事は。」
「でも、もし彼女達の戦いが今、孤独で、皆の助けを必要としているんだとしたら…」
「とにかく、言、う、な。」
「…分かった。」
顔をにじり寄らせる志穂に平野は頷いた。
「…大体俺が言った所でストーカー扱いされるだけだしな。」
「されたくないんだったらもうちょっと筋肉でも付けろ。」
携帯のメモリを操作する志穂は、おどける平野に目もくれずに答えた。


田んぼを真っ直ぐに貫く道路を、狼頭とこけし頭がゆっくり歩いている。それから目を離さずに、30メートル近くも離れた所から後をつける一人の少女がいる。
自分の肩に手を置かれたので、その少女は飛び上がらんほどに驚いた。
「ひゃっ!」
「Shiho-chan! What are you doing?」
「…ああ、モニクか。」
志穂はニコニコしている少女の、主に胸の部分を見て言った。自分の目の高さが大体その辺りだからそうなるのだが、見れば見るほど複雑な気分になるので志穂は視線をはずした。
−ようやくサイズの合ってる制服着るようになったのは進歩だけどな。
「You are surprised?」
「サプライズ…アー、イエス、アイ・シンク。」
「Oh, sorry.」
「ノー・ソーリー。」
笑って首を振る志穂。
「ユー・ゴー…ホウェア?」
「Well, was gonna go shopping at 7-11.」
「…えっと…」
「SSEHVVVENNN, EEELLEHVVENNN.」
繰り返すモニク。
「…セブンイレブン?」
「Yup, yuppy!」
「…変な所にショッピングに行くんだな…」
「I'm gonna buy Pockey there. Now that's wha'cha gotta call cooly cool, ya know.」
「ヤナ?」
「Pockey. Snap, snap snap!」
口の前で何かを折るしぐさをしてみせるモニク。
「あ、っと…」
「Oh, well, never mind.」
モニクは笑って手を振った。
「You belong to a club, don't ya? ...CLUB.」
「クラブ?」
「Yeah. It was...Kando?」
言いながら、モニクは竹刀を持つ構えらしきものをしてみせている。
「アー、ノー。ケンドー。」
「Ah ha. Kendo. It's beautiful. That flowing swing me have to learn from it.」
「ビューティフル? ノー。ノー・ビューティフル。」
「It is! ...Bu'cha don't have a club activity today? TODAY, NO KENDO?」
「アー、ノー。」
「So, YOU. GO, WHERE, TODAY?」
「えっと…」
視線を泳がせる志穂。
「アー、ホーム。トゥデイ、スタディー。」
「Study? Really!? Oh, I'm sorry I interrupte...well, ah...see ya tomorrow then! Cha!」
「オー、チャ…? まあ、バイバイ。」
「Bon courage pour ton travail!」
モニクは手を振りながら志穂を追い越し、先を歩き出していった。
「バイバイ…って。」
ふと我に返り、前を見る志穂。
「あ、どこ行った、狼頭?」
宏子と美耶は、既に志穂の視界から消えていた。
「モニクの奴…」
ため息をつく志穂。
「って、あ、そうか。あいつも写真にいたんだ。」
慌てて前を見る志穂。歩くのが速いのか、既にモニクは十数メートル先を行っている。
「…」
志穂は唇をなめると、前から視線を外さずに自分の歩くペースを上げた。


モニクは時々彼女が知っているらしい生徒達に声をかけながら、通学路をどんどん歩き、住宅街を通り抜けていく。10分ほど歩くと彼女は商店街の通りに出て、そこの一角のセブンイレブンに入っていった。
ほどなくして、満足げに小さなビニール袋をぶらさげた彼女が店を出てくる。冷静に見ればかなり変な見た目なのだが、制服の彼女はいかにも自然な雰囲気で、一人で更に歩き出す。
そこから3分もしないで、彼女は古利根川の河川敷に到着していた。


「…」
堤防脇に停めてあった車の陰に隠れ、そこからモニクの方を志穂は覗き見る。
「…あっ。」
小さくだが声を上げる志穂。モニクの向こうに、顔までははっきり見えないものの、背格好から言って恐らく宏子と美耶であると思われるニ人の女子生徒が立って、モニクに近づいていた。
「…」
志穂は目を細める。
「え…?」
草に隠れて見えなかったが、更に人がいる。男性と女性一人ずつが、モニク達と何かを話しているようだ。
「…何なんだ、あれは…」
ジュチャとプオラギイックを見た志穂が呟いた。

続く



Written by FML (AKA Franken).
Ver. 1.00 on 2002/5/22.

<ねえひーこちゃん、私達って魔法少女なんだよ、凄いと思わない?>
<思わない。>
<あら宏子、クザラル星では、魔法少女は星を守る英雄とされているのよ?>
<なこと言ったって、ここ地球じゃん。>
<でも佐藤さん、地球上で今の所、私達だけなんですよね。魔力を持つ存在って。そこに何か、使命感のような物は感じませんか。>
<私は、別に…。>
<宏子、あなたが私達の中で一番力があるみたいだわ。残念だけど、私達の命運はあなたに預けられているようなものね。>
<あーっ、もうあんたらさっきからうっとうしいっ! どうせ念じるんだったら何かもっと毛色の違った事念じてよっ!>
<…><…><…><…>
<じゃあ、宏子、言わせてもらうけど…>
<…何よ。>
<日本のカレーってマズイわね。>
<知るかっ!>
<次回「魔法少女佐藤」第5話、「チームだ! 魔法少女」、後編。お楽しみに。>
<それなら、ポッキーを食べると良いよ!>



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