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<…はあ。>
リジュワナは口とテレパシーでため息をつくと、立ち上がり、練習へと戻ろうとする。
<まあ、好きにすれば良いわ。>
<何か引っかかる言い方だな。>
私は眉を上げる。
<結構逆なんじゃないの? 実はリジュワナがプオにラブラブだったりして、私が遊んでいるのが気になって仕方がないのか?>
<はあ? …何言ってるのよ。>
リジュワナはちょい驚いたように目を開くと、そのままグラウンドへ歩いていこうとする。
<本当はこれの耳で遊びたいんでしょお。>
<あなたと一緒にしないで。>
<あー、ひーこ? そろそろ練習…>
<おお!>
何か呟く美耶の隣で、モニクが勢い良く頷く。
<実は自分が彼の事を好きなのに、それは恥ずかしいから言えなくて、でも他の人の行動はとても気になっちゃう的シチュエーションだね! 王道王道!>
<だしょ、だしょ? むしろ自分に後ろ暗いところがあるからこそ人をあれこれ言うんだよな、な、な?>
<練習…>
<ヒロインニ人が一人の宇宙人を巡って三角関係…うふふふ…うわ、そんな事まで? しかも三人で!?>
<…モニクちゃん、何想像してるの…?>
美耶の横でモニクは首を振り、こちらを見て力説する。
<いやむしろ、リジュワナちゃん本人は自分の気持ちに気付いてもいないんだよ! だからひーこちゃんがプオちゃんとイチャイチャしているのを見ると凄くイライラするんだけど、どうしてそう感じるのかは自分でも分からなくて悩むの!>
<ああ、なるほど! リジュワナ、可哀想に…そんな事で悩んでいたとは…おばさん気付かなかくってねえ…>
<うん、でも恋愛は自由なんだから、リジュワナちゃん、もっと自分に素直になったほうがいいよ。ひーこちゃんに気兼ねなんかしないで…>
<…>
私達は、ふとリジュワナの姿を探した。
<大分、飛行も上手くなってきたじゃないか。>
<いや…やっぱり動くのは苦手ね。系の魔法の方が得意分野みたい。飛ぶ事はまだ何とかなるんだけど、飛びながら何かをするとなると難しいわ。>
<ホクさんがあの綺麗な飛行で「苦手」って言ったら、私の立場が無いですよ。>
<いや、アリーザもコントールはなかなかのものだぞ? 後はお前の場合はもうちょっと基礎体力があるとより良いだろうけどな。>
<…>
<…>
三人はグラウンドの向こうの方で、何やら語らいあっていた。
<あ、あんたら真面目に参加しろっ!>
<真面目に参加してないのはひーこ達でしょ…>
シュウウウウウウウウンズバアアアアアアアアアン!
グラウンドの別の一角では、つむじ風が起き、何も無い場所から水色の光が爆発するように現れた。
「頑張ってる?」
<お、ジュチャ。もう用事は終わったのか?>
<地球人との用事はね。>
風の中から現れた、サリーのような袴のような服装の女性がこっちに歩いてくる。
<…>
ジュチャは途中で立ち止まり、こちらと向こうを見比べた。
<如実に分裂してるわね。真面目グループとサボリグループが。>
<な、何をうっ!>
<私はずっと、練習するように言ってたんですけど…>
<美耶、あんた仲間を売る気?>
<私もさっきまでずっと練習してたよ?>
<ああ、モニクまで!>
<…それはとにかく、地球人との用事はどうだったの。>
リジュワナがジュチャに聞く。
<日本の偉い人達と会ってきたわ。>
肩に手をあて、ふう、と息をつきながらジュチャが念じる。
<どうも、彼等は状況が気に入らないみたいね。気に入らないというか、急すぎてどう状況を受け入れていいのか分からない、といった所でしょうけれど。>
<でも、私達が本当に戦っている事は認めてくれたんですか?>
<一応ね。多少読心術を使わせてもらったんだけど…って地球人だし、大まかな感情しか読めないけど、本当に信じているっていうよりは今の所、戦略上認めているっていう感じね。>
<賢明です。>
アリーザが頷く。
<今、日本の世論は私達に同情的なようですから、私達に敵対するのはリスキーでしょう。>
<「私達」の味方になるのも充分リスキーな気がするわ。>
リジュワナが、何でかこっちの方を見ながら念じた。
<まあ、宇宙船がある事をNASAが認めたのが大きかったわね。あれで「今までNASAは知っていて隠していたのか」っていう点に話題が集中して、私達の信憑性が逆に上がっているみたいだわ。>
<それで、日本政府は私達をどうするの? ただ認めるだけ?>
<私達っていうか…クザラル星と、国交樹立する事を提案してきたわ。>
モニクに答えるジュチャ。首をかしげるモニク。
<ふーん…でも、クザラル星って国じゃないよね? 星の名前でしょ?>
<ええ。大体私はクザラル星の代表でも、シオブラルの代表でもないし。まあ、一応国評…国際評議委員会と言って、クザラル星を代表する国際組織なんだけど、そこに連絡はするって答えたけど。>
<高級会議じゃなくてか?>
<…建前としては、魔法協会は一種の職業団体に過ぎないもの。公式な話は国評に持っていくのが筋でしょ?>
難し気な表情で、ジュチャがプオに答える。
<そりゃそうだろうけど、魔法協会じゃないか、実際に話が動くのは。>
<…そんな事したら、ソドゥがまたごちゃごちゃうるさいでしょ? 私が船で、ゆっくり寝られなくなるじゃない。>
<なるほど?>
<…それから後は、日本の軍をモンスター退治に提供するとも言ってたわね。>
<へえ…。>
<自衛隊だよね、正確には。>
リジュワナの横で、モニクがこっちを見て念じてきた。
<え? ああ、うん、自衛隊ってよく言うよね。>
<それって軍隊と何か違うの?>
リジュワナが聞いてくる。
<え…っと…そういう名前なんだよ、よく知らないけど。>
<でも、自衛隊は…あるいは在日米軍でも多国籍軍でも何でも良いですけど、普通の軍隊は対モンスター戦に役に立つんですか。>
<立たないわね。>
ジュチャはアリーザの質問に、一言で答えた。
<火力で魔力は消せないもの。防御の魔法で何でも遮断出来てしまうんだから。>
<核兵器でも使えば話は別だけどな。>
<そうね。そこまでやればさすがのモンスターも魔力無しで撃破できるわ。地球人の住む環境もろともね。>
肩を上げるジュチャ。
<所詮、魔力がある者を魔力無しで叩くのは非合理的なのよ。>
<反論する訳じゃないが、クザラル人だって大多数は魔力なんて無いけどな。>
<そうね。…まあ、持久戦に持ち込めばね。魔力を持つ者を弱らせれば魔力は当然弱まるんだけど。>
<どういう事?>
リジュワナが聞く。
<食べ物が食べられないようにするのよ。動きは止められないでしょうけど、モンスターの行くところ行くところ、奴の食べそうな植物は全て焼き払う事ね。そうすれば数週間後、そのモンスターは飢え死にするんじゃない?>
<それ…抗戦になっていないと思うんだけど。>
<昔、モンスターがクザラルを最初に襲った時は、本当にそんな感じだったのよ。>
リジュワナにジュチャが念じる。
<今でも魔力を持つ者は全クザラル人の8%程度だけど、昔は更に少なかったから。つくづく、よく生き延びれたものだわ。>
<まあ、余りよそに勧められる戦い方じゃあないな。じゃあ自衛隊は断ったんだな?>
<「後方支援」はお願いしたわ。具体的に言うと、私達の警備とか、モンスターが現れた際の住民の避難の誘導とか、マスコミの規制とか…>
念じながら、ジュチャはあくびをした。
<…魔法協会もこれ位協力的だったら助かるんだけどね。>
<これから船で、協会と会議か。>
<ええ。とにかく人材が少なすぎるじゃない。確かに星の防衛も大事だけど、いい加減にしてほしいわよね。彼等は地球を何だと…>
「う、ぐうっ!」
聞こえてきた声に、全員が顔を向けた。
<あれ、アリーザちゃん大丈夫?>
<…え、ええ…ちょっと…体調が優れないみたいです。>
自分の口元をおさえながら、アリーザがモニクに頷く。よく見ると、っていうか見なくても、かなり顔色が悪い。
<最近根詰めてたから、疲れがたまってるんだろ。今日はもう休んだほうが良い。>
プオがアリーザの肩に手をかけた。
<そうですね。…そうさせてもらえますか。>
<そうね。皆も無理はしないでね。病気になられたらこっちも大変だし。…じゃ、私は船に戻ってるわ。>
<ああ。…じゃあ、リジュワナ、俺はアリーザを家に送っていくから、宏子達を適当に見といてくれないか?>
って…
<…何よ、その指示系統。>
しかも適当かよ。
<え…ええ。>
<あ、私もアリーザちゃんの家へ送っていきます。>
アリーザに肩を貸すプオ。その後を追いかけるように、美耶もついていって河川敷を後にした。
<…>
ジュチャも光と共に消える。歩いていくプオ達のシルエットも、建物の陰に隠れてやがて見えなくなる。
<…>
そっちの方向を見ているリジュワナ。
<…>
<…>
私とモニクは、無言で佇むリジュワナの様子をじい、と眺めた。
<…何よ。>
<…いや、別に?>
<あなたが「別に」っていう時って、基本的に碌な事考えてないわよね。>
<あー、その反応は。>
<モニクまで、何?>
お団子を振りながら、ぶん、ぶんとリジュワナが私達を睨みつける。
<冷静なリジュワナちゃんがこうまで感情的になるとは…罪な男だね、プオちゃんも…>
<…>
<私も肩を貸されたい、そして看病されたいっ!>
<うわ、もしかしてアリーザちゃんはそれを計算していたのかもよ? リジュワナちゃん、今すぐアリーザちゃんのアパート行った方が良いって! 変な事が起きる前に!>
<ニ人とも、一生そういう事言ってなさい。>
知らない内にアイスボックスとスポーツバックを両肩にぶらさげていたリジュワナが、こちらを振り向いて念じた。
<あ? リジュワナちゃん、まさか本当に行くの?>
<家に帰るのよ。あなた達とじゃ練習もしづらいでしょ。>
<…>
私達が顔を見合わせる間、リジュワナはそのまま振り向き、スタスタと歩いていってしまった。リジュワナの方にテレビカメラも向いていく。
<…まあ、もう日も暮れてるし?>
<でも、リジュワナちゃん毎日練習フルでやってるのに。何で急にサボるんだろ?>
<さあ? 案外プオのどうのこうのが図星だったとか?>
モニクが笑いながら手を振った。
<まさかあ。リジュワナちゃんは大人だもん、本当言うと、子供のプオちゃんとじゃ釣り合わないと思うよ。やっぱり組み合わせで言ったらプオ・ひーこだと思うな。>
<…あんたもしつこいっていうか色々引っかかる言い方するね。>
私はへらへら笑っている金髪女に念じた。
<だいたい人の事言ってっけど、あんたはどうなのよ。子供、って言い方するならあんただって子供じゃん。>
<…あは、私って大人の事を何にも知らない、うぶな美少女に見える?>
<…>
どうも、私のテレパシーはまだまだ未熟なようだ。相手に言いたいニュアンスが全然伝わっていない。おかしいなあ。翻訳機を使って会話するより意味が正確に伝わる、ってジュチャ達は言ってたんだけど…。
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