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いろいろ記念


キラが緊張した面持ちで声を上げた。
「戦闘開始!」

シスコとキラがフェイザーライフルを構え、ナデシコ居住区の廊下を早足に歩いている。2人とも表情は硬い。

2人はドアの前の左右に立つ。
「…」
指でエリナに合図をするゴート。頷くエリナ。3、2、1。

「「!」」
ライフルを構え部屋に入るが、部屋には人影は見当たらない。

「シトラスパルス、照射!」
ぴぎいいいいいいいいん。
シスコの声に合わせ、キラがフェイザーライフルから部屋全体に拡散性のビームのような物を照射する。

「「良い香りだ/ね…」」うっとり。

ぴろりろりん。
「ベシアより司令官。どうやらレベル17には流動体生物はいないようだよ。」

「そうか、それでは居住区のチェックが終わったら合流しよう。」
通信に答えるゴート。

「ドクター、この流動体生物は基地の構造に詳しいわ、くれぐれも気を付けてね。」

「了解!」


ふと一点に目をとめたキラが声を上げる。
「…ちょっと、司令官、あれ!」

「ん?」

ぎゅにゅるにゅるにゅるにゅるぎゅにゃにゃ。
壁際にあった1/6三井ゆりフィギュアがみるみるスライム状に変形し、ドリル付きミニ4駆になった。

きゅい、しゅい、しゅいいいいいいん。
「うっ」「きゃああっ」

めり、ずごごごごごごごご…
「「…」」
ゴートとエリナの間を擦り抜けて部屋から走り去り、途中で床に穴を開け消えていくミニ4駆。

「…りゅ、流動体生物を発見! プロムナードの方に向かった!」
バッジを叩き叫ぶゴート。


プロムナードでは、艦隊とイブジョー防衛軍の制服を着た士官達が集結し、慌ただしく行き来していた。
連邦標準語、イブジョー語、フェレンスケ語、アオバシア語等いくつもの言葉で書かれた大きな案内板の陰に隠れ、オブライエンが士官達全員に通信を入れる。

「ええか、今から5数えてプロムナードにパルスを一斉照射や!」声を張り上げるジャム。
「5、4、」
ぷすっ。

「か゜、か゜ははあ゜っ、か゜…」(バタッ)

オブライエンの首をプッ刺したまま、ルドーは案内板からいつもの「美少女型」に変身し、案内板からニュルニュルと離れた。


「そこまで! 捕まえたよ、マイハニー。」
駆け寄って来てルドーにフェイザーライフルをつきつけるドクター。しかし口調とは裏腹に呼吸は荒い。

ざざざ、ぎしゅっ。しゅうう、ざっくり。ぼとっ。
「その前にチーフが死んでます。」
トウジの生首を持ち上げて見せるルドー。ドクターはルドーの言葉に肩を上げ、「ふう」と息をつく。

ゴートとエリナもようやく彼等の所に走りついた。2人とも相当へたっているようだ。
「はあ、はあ…コンピューター、今回のタイムは?」
汗を拭いながらキラが聞く。

ぴぴ。
「3時間17分です。」

「まだまだね…」

「3時間あれば、美食者がナデシコに与える被害は甚大ですね。」
虫のたかって来た生首を放り投げながら言うルドー。

「訓練法の再検討が必要だな…」

ルドーが司令官に頷く。
「ええ、そうですね。とにかく何でも徹底的にスキャンしてみて下さい。あの人達の変身能力は私の比じゃありません。私には無理ですが、あの人達なら他のヒューマノイド…例えば司令官、になりすますのも訳はないでしょう。」

「そうか…」
きーっ、きーっ。ばさばさばさ。
プロムナードの一角でハゲタカが集まりだした。


「ああっ、すいません、もう訓練は終わりましたかネェ。」
深刻な様子のシスコ達の間に、プワークが割って入って来た。

「もう構わないわよ。」肩を上げ答えるキラ。

「ああ、そうですか、それは有り難いですなあ。いや何、訓練の間民間人の方が歩けないとなると、こちらも商売上がったりですので。…ああ、ところでルドーさん、ちょっとよろしいですか。いやー、実はですネェ、今度ルドーさんが変身する時に、出来ましたら私にだけそうっと変身する瞬間の写真を撮らさせて頂けないかと…いや実は、ルドーさんはステーションの中でもファンの方が何人かいらっしゃいましてネェ、ファンの皆さんが言うには、ルドーさんは変身されている瞬間が一番セク」
「…」

「……あ、い、いや、こ、この話はまた今度ゆっくりと、お話いたしましょうネェ。」
ルドーの視線に押し戻されるようにして、プワークは自分の店に戻って行った。


「今回の訓練に関するミーティングは、明日会議室で行います。皆さんしおりを忘れないように。それでは解散。」
エリナが腰に手を当て大声でそう言うと、プロムナードの士官達は各自の仕事場に戻り始めた。


どこかいそいそとした様子のキラが、シスコに尋ねる。
「…あ、ねえ、司令官。ところで、今夜の夕食はもう食べた?」

「ん、ああ、いや、人と約束をしてるんだが。」

一瞬考え込むような表情を見せたエリナは、「ああ」と手を打った。
「イエイツ船長ね?」

「確かに、そうだが…」

「えーっと、確か、貨物船の船長さんなのよね? アキト君の紹介で知り合ったんでしょう、結構綺麗な人よねえ。で、どう? どの位までいったの?」

「別にそんなんじゃない。勘違いしないでくれ。大体私にはミナトがいるんだそ。私と彼女はただの、良い友人だよ。」

「へえー? 良い友人、ねえ。そう言う態度はイブジョーじゃ、「挿したまま5年」って言うのよ。」
楽しそうに眉を上げるエリナ。

「別に私は彼女と」
「安心して。そういう意味じゃないから。…いや、まあ、似たような由来だけど。要は、「鈍感」って意味なのよ。」

分かったような分からないような様子で、溜め息をつくシスコ。
「…まあとにかく、今日はそういう事だ。じゃあ、また明日。」

「ええ、また明日。(…ックックックック、つまり、2時間はか・く・じ・つにアキト君とのフリータイムが出来るってー訳ね! フッフッフッカッヒャッヒャッヒャ」

「何が出来るって訳なんだ?」
不思議そうに聞き返すゴート。

「あ゛、いや、ううううんん、こっちの話よ。じゃ、イエイツ船長にもよろしく伝えといてね。」

「 あ、ああ…」
キラはシスコから逃げるように立ち去った。あるいは逃げた。


ぴーぽご。
「どうぞ。」

「ごっめーん、待たせちゃって!」

自室で私服(学ラン)になりくつろいでいたシスコが振り返ると、ドアに紫の髪の女性が立っていた。舌をチョロっと出して謝っている。
「いや、構わないさ。君が」

「って、ゴート君どうしたの、その髪型!?」
女性は驚いた声でシスコの言葉を遮った。

「…ん、ああ。これか。」
ゴートは自分の頭を触る。彼のヘアスタイルは、つんつるりんのすってんてん(平たく言うと無毛)だった。とはいえかなりの断崖絶壁でもある。

「以前の私の髪型は、安全上問題があった。…ここだけの話、カドで手を切ったり野良猫がぶつかって死んだりする被害が絶えなくてね。」

「ふうん…」

「ポッキーの葬式で彼の父親に殴られた時は、やはりへこんだよ。…まあ、そういう事もあって、思い切って剃ってしまう事にしたんだ。」

「へ、へえ…(ポッキー?)」

遠い目になっていたシスコは思い出したように付け足す。
「…ああ、それに、艦隊は坊主の人が多いから、何かとこの方が話も合わせられるし気が楽なんだ。」

女性は触覚を振りながら微笑んだ。
「…うん。似合ってるわよ。照明要らずだし。」

「それは良かった。これでもヨード卵マッサージは欠かさないんだ…ところで船長。船長は、今回は」

「嫌だなあ、メグミって呼んでよお。」
メグミ・イエイツはむくれながら言う。

ハゲシスコは一瞬戸惑いつつ頷いた。
「…あ、ああ、メグミ、君。今回はどれ位、ナデシコにいられるんだ?」

申し分けなさそうな表情になるメグミ。
「…ごめん。実は、明日には…」

「何だって。…そうか。随分、仕事が繁盛しているみたいだな。」

「おかげさまでね。」
ソファーに座るゴートとメグミ。

シスコはふいに、そのクリフハンガーを光らせた。
「ああ、そうだ。メグミ君、実は今日は君に、プレゼントを用意しているんだ。」

「あら偶然、私もなの。」

「じゃあ…」

「先に見せて。」

「…ああ。」シスコは微笑んで頷くと、ソファーの陰から包みを取り出した。

「開けていい?」

メグミに頷いてみせるゴート。

がさがさ。
「ああっ! すごい、JR深名線の全線走破超美麗映像チップ! こんな貴重な物、どこで手に入れたの?」
イエイツは、頬に手を当て目を輝かせた。

「ジャリアンの大使に、少し貸しがあってね。」

「「あの朱鞠内駅の情景が今、蘇る−」 うんうん、凄い凄い!」

「メグミ君、君のプレゼントは何なんだ。」

メグミは恥ずかしそうに頷く。
「あ、うん…これに比べたらつまらないかもしれないけど、」がさごそ。
「これ…私の故郷、モテオシティーのモテオシティー電気鉄道、略称M電の特急「にがり」のヘッドマークよ。」
背後から直径80cmはある円形のプレートを(どこに持っていたのか)出す船長。

「ついでに方向標示板もパクって…ゴホ、ゴホ、貰って、きたわ。」
更に40cm前後の液晶ディスプレイを軽々と手渡す。

「鉄道が、走っているのか!?」

「うんまあ、観光用だけど。M電680系のつりかけモーターの音を聞くと、自分の家に帰って来たんだな、っていつもほっとするの。」

「つりかけモーターか…一度マギスイートではなく、本物に乗ってみたいものだな…」

イエイツは嬉しそうに笑った。
「もし貨物船でよければ、送ってあげるわよ。」

「片道8日の旅だが…生のつりかけモーターなら、行く価値はあるな。」

「あ、やっぱりそう思う?」
2人は頷きあった。


「ねえ。ところで今日、ドッキングリングに何だか整備員さん達が一杯いたけど、何かあったの?」

シスコはイエイツの言葉に、やや表情を曇らせた。
「いや…特にどうと言う事は無いさ。」

「隠し事。ゴート君は秘密が多いなあ。」

「いや、そういう訳では…分かった。」手を上げるゴート。
「…今、ステーションは、ドミネソンの攻撃に備えているんだ。」

「そう…最近は、どこへ行ってもその話ね。アオバシアもそれで国境を封鎖したっていうし。でも、グルメの為に宇宙を侵略するなんて信じられない。…クロスシートで食べるますのすしに勝るグルメが、この世にある訳がないじゃない、ねえ。」

シスコは頷いた。
「ああ、全くだ。…まあ、今は仕事の話はよそう。」

「そうね、さっそくだから、今からこの深名線の映像をじっくりと…」

ぴろりろりん。
「ダックスより司令官。」


シスコは溜め息をついた。
「ああ、どうした。」

「至急司令室に来てくれ。」

「分かった。…じゃあ、すぐ戻ってくる。…幌加内以降のシーンは私も見ていないから、待っててくれ!」


学ラン坊主が司令室にやってくると、リョーコが目でモニタを指した。
「意外な客が来てっぜ。今さっき出て来たとこなんだけどよ。」

「あれは…ゼレンゴンの新鋭艦、ポヤッチオか。」
モニタには、連邦で言えばギャラクシー級並に大きい最新型のゼレンゴン船が映し出されている。チベットのラマ教寺院のような妙に写実的な目の絵が印象的だ。

「艦長のゲンパチロック将軍が話したいそうだ。」

「通信を繋いでくれ。」
片目の無い、いかにもゼレンゴンらしい様相の体格の良いオヤジがモニタに現れた。

「帝国より御挨拶を申し上げたてまつりまするぞ。大佐殿。」

「こちらこそ、ナデシコへようこそ。急な御訪問で驚きました。」

ギョロ目でニッと笑いながらゲンパチロックが頷く。
「こちらは只今長旅の途中で疲れておりましてな。出来ましたらナデシコで休まさせて頂けると有り難いのですが…」

ゴートとリョーコは目を見合わせる。
「ええ、もちろん構いませんが…」

「かたじけない。恩にきりまするぞ、司令官。…遮蔽解除だ!」
大声で命令するゲンパチロック。


すると、ナデシコの周囲に潜んでいた何隻ものゼンレンゴン船が一斉に遮蔽を解除し、姿を見せはじめた。旧型から最新型まで、30隻以上ありそうな大群だ。

「「え、ええええええ」」
ナデシコ周囲は目玉印で埋め尽くされた。



 
Evan Trek -Martial Succotash Nadesico

Evan Trek Deep Space Nadesico
エヴァントレック ディープ・スペース・ナデシコ
 
The Way of the Worrier
「ゼンレンゴンの妄挙」


「さあてと。ここでそのまましてしまっても勿論構わんが、まあ、女性もおられる事ですから…トイレは、どこですかな。」
会議室にやってきたシスコとキラは、ゲンパチロックの言葉に目を丸くした。

「ま、ま、まさか、ここで検便をしろって言ってる訳じゃないでしょうねえ!」
声がかなり上ずるキラ。

将軍は何を言うのか、という顔で答えた。
「当然でしょう! 今、我々がある人物が本物なのか、可変種の化けた偽者なのかを見分けるには、その人物の出した便が10秒以上放置しても流動物質化せずに便のままでいるかどうか、をチェックする以外に方法が無い、というではありませんか。」

「ふう…」溜め息をつくシスコ。
「良いでしょう。ここのドクターが開発した、瞬間自動便採取器、通称クソチェッカーがあります。そちらをお貸ししましょう。」
ゴートは近くのケースから、ハイポスプレーのような装置を取り出した。

「もちろん服を着たままで構いません。この発射部を、肛門の所に近づけて、ボタンを…」ぷしゅっ
「う、うう…」やや恍惚の表情になるシスコ。

「これで終了です。こちらのケースに。」クソチェッカーについたカートリッジ式の5cm×2cm程度の透明なケースの中に、メイド・イン・シスコのブラウンの物体が密閉されている。

「ほう…」「ううぇええええ。」
しげしげと見る将軍と目をそらす少佐。

「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0。」
便は変化せず、便のままである。シスコはカートリッジの部分を空の物に取り替えた。

「なるほど便利だな。それでは私が。」クソチェッカーをシスコから受け取り、自分の尻にあてるゲンパチロック。
ぷしゅ。
「あ、ああん…」ぶるぶる、と震える。

「うむ…」カートリッジの中には黒くコーン混じりのブツが。
「…3、2、1。変化無し。…よろしいな。それでは少佐。」
ゲンパチロックはエリナにクソチェッカーを手渡す。

「…」怒り混じりの溜め息を深くついたキラは、覚悟を決めたように乱暴にクソチェッカーを自分の尻にあてた。
「ったく…」まだ何やら唸っているキラ。
ぷしゅ。
「…(ゴク)…フン。これで満足?」
エリナはカートリッジを外して見せる。

「「…」」「…ちょ、ちょっとそんな凝視しなくても良いでしょっ!」
「「…」」「ま、まばたき位しなさいよねっ!」
「「…」」「何で2人とも顔がにやけてんのよっ!」
「「…」」「も、もう充分10秒経ってるでしょっ!」

キラ改めエリツィン並レッドフェイスは自分のカートリッジを手で奪い隠した。
「…ったく、もう少しましな検査方法無い訳? これじゃただのセクハラコーナーじゃないっ!」

シスコが深刻な表情で呟いた。
「少佐。…今日はちょっと軟べ」「殺すわよ。」

「まあ、とにかく、これで3人とも可変種でないという事ははっきりしましたな。御無礼を働き、誠に申し訳ない。」

「…いえ、まあ事情は分かりますから…」頷いてみせるシスコ。3人はようやく席についた。


ゲンパチロックは2人に笑みを見せた。
「本題に入りましょう。我々が今回ここに御邪魔しているのは他でもありません、連邦と共に、ドミネソンに一矢報いる覚悟でやって来たのです。」

まだエリツィン気味のキラが、眉間に皺を作った。
「本気? そんな簡単に、ドミネソンを叩けるとは思えないけど? あなたも、この前、ロミュラスカとアオバシアの合同軍、…正確には、マル・シアーとイボシリアン・オーダー、それぞれの星の秘密警察組織の合同軍ね…が、美食者の本拠地に攻撃をしかけ、逆に反撃を受けて全滅した、という話は聞いてるでしょう? 」

「それでは只彼等が侵略してくるのを黙って見ていろとでも言われるのですかな? 戦う以外に活路等無いでしょう!」

「気持ちは嬉しいのですが、今の所御協力は必要ありません。」
ハゲが答える。

「…し、しかし、帝国最高議会の決定ですぞ!」
2人の予想外の反応に、ゲンパチロックの戸惑いは大きいようだ。

「ボソンホールを見る限り、ここの所ドミネソンの活動は落ち着いているようです。今こちらから攻撃を仕掛ける必要性はない、と連邦は見ています。」

「司令官。良く考えて下さい。向こうが責めて来てからでは、遅いのですぞ?」


プロムナードはゼレンゴン人で溢れかえっていた。
「…じゃ、そのコップも飲み物も全部お前さんって訳だ。」

カフェテリアでセイヤ・ガラックは、同じテーブルの向かいの席のルドーを興味深げに眺めた。
「はい。イブジョーの飲み物は粘着性が強いので、真似がしやすいです。」

ルドーは「ゴルピス」の入った「コップ」を手に持って見せている。
「こうやって飲んでも、」にゅるにゅるにゅる。

「いくらでも増やせます。」

「ほう…」

「私は食事をしませんから。食事会とかがある時はこういう風にして「飲む」事にしています。」

「そうか…お前さんなりに、気をつかってんだな、ルドルド。」

「……」無言で見つめるルドー。どこか困った表情に見える。

「…すまん、無理があった。忘れてくれ。…あ、そうだ、ところでルドー。最近のアオバシアの噂は聞いてるか。」
黄色い食用メトロノームをかじりながら、やや声の上ずったガラックが尋ねた。

「…いえ。国境を閉鎖したという事以外、特には…」

「聞いた話じゃよ。暴動は起きるわ、イボシリアン・オーダーは崩壊するわ、どうも大変らしいぞ。」

ルドーは笑うような表情を見せた。
「ガラックさん、アオバシアにまだ情報源の方がいたんですか。」

「いんやあ、最近誰も連絡がつかねえから困ってんのさ。こりゃ近い内に、革命が起きるとみて間違い無えな。」


感心したように頷くルドーは、ふと背後の音に耳を寄せた。
「おいお前、そのバッグの中身を見せろ!」

ルドーが振り向くと、後ろでゼレンゴン人達が誰かを囲んでいる。
「…(オタオタ)」

「怪しい宇宙人め、もし俺達の言う事が聞けないと言うなら、このジグソーも粉々にしてやるぞ!」

「…(アタフタ)」
ゼレンゴン人達に囲まれているのはモネタケだった。「ちょっとすいません。」とガラックに言い、彼等の方へ行くルドー。

「すいません。そちらの方の荷物を見るというのは、誰の権限でしているんですか?」

やって来た自称少女にゼレンゴン人達は不愉快そうな表情を向けた。
「ダ・イバッ・テキ!」

「そう言われてもな。」ルドーの後ろからやってきたセイヤが口を出す。
「お前さん、こいつが本当に女だ、って言い切れるか? 「ナオンはすっこんでろ」なんて言われても、単に好きで女の姿形になってるだけの奴に」
「…」

「あ、い、いやあ、つまりだな、」

「フン。…持っている物が怪しい、それだけで充分だろう。」
ゼレンゴン人の一人が連邦標準語で答えた。

「いいえ、それだけでは駄目ですよ。そのわらべのTシャツも、ザ・ベストテンのジグソーも、まるごとHOWマッチのバッグも全てモネタケさんのただの趣味です。」

「充分怪しい趣味だがな。」ガラックが付け足す。

「モネタケさん、エディングトン少佐があちらで呼んでいましたよ。」

「…」モネタケはルドーの声に頷くと、その場を離れていった。

こぶしをプルプルと震わせるゼレンゴン兵士達。
「ゲロ状生物やギター吉スリーHey!共に、指図など受ける覚えはない!」

「そうは言っても、ルドーはこのステーションの保安責任者だからな。やっぱり言う事は聞いとい…ごあああっ」
頭をかくセイヤに、ゼレンゴン人達が殴り掛かって来た。

ぼすんがすんごすんぼすぼすがすんどたんばたん。
「る、ルドー! み、見てないで助け」がすぼすどすん。

「ふう…」
つくづくどうでも良い、という表情で眺めていたルドーは、軽く溜め息をつくと、
ぷすさくさくさくぷすっ。

「「「「「…」」」」」(バタバタバタッ、バタ、バタ。)
全員に空気穴を開けた。
「って何で俺まで殺すんだよ…」(バタ)


「何だいガラック、じゃあ君はゼレンゴン語が喋れるってことか?」

「そりゃお前さんっだって、ゼレンゴン人に化ける時はゼレンゴン語を話すだろうよ。」
医療室のベッドに寝かされる(生き返った)ガラックは、ハイポスプレーを注射されながらドクターに答える。

「あれ? でもそもそも僕達は万能通訳機で誰とでも」

「それは言うな。」

眉を上げてみせるドクター。
「なるほど? …しかし、どうして君がゼレンゴン人に殴られるのか、さっぱり分からないねえ。何か心当たりでもあるの?」

「いや…悪い言い方だけどよ、ルドーが嫌われるっていうなら話は分かるぜ。流動体生物なら誰でも憎い、って奴は大勢いるだろうからな。だが、アオバシアとゼレンゴンの場合は、長年友好関係を保っているからな…正直理由が分からねえな。」
ガラックは分からない、という顔で首を振る。どうやら本心からそう答えているようだ。

「でも、パパパパパフィー星雲ではもめてたじゃない。」

「あんなのは小競り合いだ、大した事じゃねえよ。」

「それにしたって、」医療用モニタをチェックするベシア。
「助骨12本脊髄4ヶ所、頭蓋骨及び大腿骨と肩甲骨と骨盤を粉砕されてるんだよ? よっぽど何か恨みを買ってるとしか、考えられないけど?」

「俺に染み付いてるセメダインの臭いが気に入らなかったのかもしんねーなあ。」

ドクターは顔色を変えて、寝台の患者に向き直った。
「そんな! ガラック、それは君の大きなチャームポイントじゃないか! 君のその匂いは人を心地よくさせるものであって、不快にさせるものなんかじゃない! 僕はその点は断固主張したいね!」

「あ…や、そ、そうか…じゃ、じゃあ…誰かと俺を間違えてたのかな?」

「ああ、多分そんな所かもしれないねえ。」
まだ息の荒いドクターは頷いた。


「…ローヤルゼリーの、おしゃれ、おしゃれえええん泥棒ぉおおおおお♪」
司令室の、中村美津子や長山洋子のポスターがベタベタ貼ってある一角から聞こえる歌声が、ふいに途切れた。

「ん? お、おい司令官、救難信号だ。貨物船ウサタンからだよ!」

「何だって。」

「イエイツ船長の船ね? さっき、一時間前に出航したばかりじゃない!」
それぞれおままごとセット、「少年誌」、を置き、立ち上がるシスコとキラ。

「ウサタンから通信が入った。」パネルを操作するダックス。

画面には脅えた様子の船長が映った。
「こちら貨物船ウサタン船長、メグミ・レイナード・イエイツです。」がす、がしゅううん。
「きゃっ! げ、現在攻撃を」
ずざー。

「通信妨害だ!」リョーコがゴートの方を向いて言う。

「通信の発信源を突き止めてくれ。」シスコは腰のキーホルダーを揺らしながらターボリフトに向かう。
「エステバリス出撃準備! クルーは直ちに集合するんだ! …ヘッドマークの権威を、ここで失う訳にはいかん…私はエステバリスで待っている。」


エステバリスはワープ航行を止め、周囲のスキャンを開始していた。

「いたわよ。どうやら別の船が、ウサタンをトラクタービームで引っ張っているらしいわね。」
ゴートに報告するエリナ。

「映像を捉えたわ。」
スクリーンに、ちょっとグロテスクなまでに擬人化された「うさたん」の絵が描かれた民間船と、それをトラクタービームで捉えた中型のゼレンゴン船が映る。

「やっぱりウサタンと通信は出来ねえな。妨害されてるみてえだ。」なぜか頭を手で押さえながら首を振るリョーコ。

「ゼレンゴンと通信は出来るか。」

「やってみよう。…返事が来たぜ。」

「スクリーンへ。」

「こちらはゼレンゴン戦艦デジキャラットの艦長タニ・ケイボクだ。何か用か。」

シスコは頭を光らせつつ会釈する。
「こちらはUSSエステバリス艦長ゴート・シスコです。そちらの貨物船を拘束されているようですが、理由を聞かせて頂きたい。」

ケイボクは当然のように言い返す。
「イブジョーの領域を出る船は全て我々が立ち入り検査をする事になっている。」

「検査? 何の検査です。大体誰の権限でそんな事を?」

「ジブロン総裁直々の命令だ。どの船に流動体生物が紛れているかもしれん。だから全ての船の貨物にシトラスパルスを照射し、全ての乗員の検便を行う事になった。」

キラが口を引きつらせた。
「ちょっと。いくら何でもやりすぎよ! 大体その船に流動体生物がいるっていう証拠でもある訳?」

「それは、調べてみない事には分からん。」

「良い事、ここはイブジョーの領域です。イブジョー内で勝手に船の臨検を行われては、主権の侵害にあたるわよ。」

「しかしこれが私の任務なのでな。」
ケイボクは通信を切った。


「…軽く威嚇をしよう。シールド張れ。ダックス、フェイザーで」
びしゅん、びしゅうううん。

「そう簡単に撃つなあっ!」
エステバリスからデジキャラットのやや横をかすめてフェイザーが発射されていった。

「…え?」極普通の表情で呟くリョーコ。

「「え」じゃない、「え」じゃ! 威嚇だ。エネルギーを充填させる位で充分だろう?」

「…そうでもないみたいよ。トラクタービームは解除されないわ。」

「なら、花火ボタンだな。」ぽちっ。

「だから勝手にぽんぽん打つなっ!」
ひゅうううううん、ぼん、ぼん。
「「「綺麗だ…」」」

見とれるクルー達。

するとトラクタービームが解除され、モニタにデジキャラットからの通信が入った。
「お、おい、お前達、一体何をしている! 我々は同盟国ではないのか!?」

「「「…」」」
互いに顔を見合わせるクルー達。

「あ、あんな恐ろしい武器を使うとは…」

「…もう一度言うわ、ここはイブジョーの領域なの。あなたが違法行為を行っている事がはっきりしている以上、直ちにここから立ち去るよう通告するわ。」
手を腰に当て、気持ち良さそうに言い放つ少佐。

「ぬうう…総裁がこれを知れば、ただではすまんぞ!」
ケイボクは忌々しげに通信を切る。旋回し、エステと貨物船から離れていくゼレンゴン船。


「ゼレンゴンは花火に弱い…メモっておく事にするわ。」ダックスに微笑むキラ。

「…(何で花火があるんだ…)」

「司令官、ウサタンから、通信が入ってるぜ。」

「…あ、ああ、繋いでくれ。」

ちょっと瞳を潤ませた船長が、笑って語り掛ける。
「さすがね、ゴート君。あんな新式の威嚇用魚雷が装備されてるなんて、やっぱり連邦の船は凄いなあ。」

「「…」」
「…あ、ああ…そうだな。無用な戦闘はしたくないからな。…無事か?」

「何とかね。…助けてくれてありがと。ゴート君。」

「またいつでも呼んでくれ。せん」「め・ぐ・み!」

「…あ…ああ。メグミ、船長。」

「うん。」メグミは頷くと、「バイバイ」と手を振って通信を切った。


「「…」」

「…何だ、その目は。やっぱりラブコメ扱いか。」

「別にそんな事言っちゃいねえぜ。ゴート君。」「うっ」

「結構悪い気はしてないんじゃないのお? ゴート君?」「…」

溜め息をつく艦長。
「…(全く、どうしてこう誤解を受けるのだ…それは確かに船長がボンデージファッションを着てムチを振ればなかなか、いやそうではなく、」

「何がそうじゃないって?」

「あ、え?」キラに聞き返すシスコ。


士官達はナデシコに戻っていた。会議室のリョーコは、手持ちのパッドを叩きながらゴートに渡す。
「一応長距離スキャンを見た限りでは、デジキャラットはイブジョー領域を出たらしいぜ、ゴート君。」

「ゴ、…。…そうか。」

「でもイブジョーでも連邦でもない領域で検査をやられたら止めようが無いわね、ゴート君。」「…」

「まあな、少佐。そりゃ、連邦やイブジョーの船が検査される、って言うなら話は別だろうけどな。ゴート君。」「一々語尾に付けなくて良い!」

猫科の目つきになっている2人とユデダコ1匹のいる会議室に、ゲンパチロックがつかつかとやって来た。
「ああ、丁度良い所に来てくれました。将軍、実はお話が」

「これを受け取るが良い!」
ゲンパチロックは何やら筒をつきつけると、そのまま会議室から出て行ってしまった。

「…何だ、これは?」筒を開けるシスコ。中から紙が出てくる。
「「つうしんぼ。2年∀組、たに・けいぼっく。」…」

顔を見合わせる3人。
ゴートはついでに中身も読んでみる。
「「保護者の方へ:活発ですが、集中力にやや欠け、覗きが苦手のようです。」…何だこれは?」

深刻な表情のダックスが、唇をかんで答えた。
「これは…デジキャラット艦長の通信簿だ。これが渡されると言うのはつまり…奴は処刑された、という意味さ。」

「「!」」

「…ゴート君。」「付けんで良い。」


「どうして彼は処刑されたのよ。」

驚くキラに、冷静なシスコが答える。
「結果的に宰相の命令に従わなかったからだろう。次からはゼレンゴンは止められない、と言いたいらしい。」

シスコはダックスの方を向いた。
「ダックス。これから私達はどうしたら良い。」

「そうだな。」耳に挟んだ鉛筆をいじり、考え込むダックス。
「このまま奴等を放っておいたら状況は悪くなるばかりだろうな…ああ…昔、コウイチロウが好きだった歌にあった歌詞だが…カツオ漁船は男の戦場、だそうだ。」

「…つまり?」

「つまり、ゼレンゴンを本当に動かす事が出来るのは、ゼレンゴンだけだ、という事さ。」
真面目な顔で言うリョーコ。

「「…おい。」」

「何。ゴート君。」「止めれ。」


ゴートは溜め息をついた。
「…ところで、この「覗き」、とは何なんだ?」

「ああ。向こうにゃそういう科目があんだよ。」

「ふむ…」

「…あら? イブジョーにもあるわよ?」
キラは不思議そうに聞き返した。


ドッキングリングの競り上がりドアが下にさがり、何人もの乗客達が現れて、それぞれの方向に歩き出した。
「だ、大丈夫ですか御客様? 御気分の方は」

「悪いに決まってるだろお! ううううう」
げろげろぴい。
降りてくる乗客達の列を乱し、一人の乗客がフラフラとさまようように歩いて来ている。制服を見る限り、一応艦隊の士官のようだ。

「うううう。ううううう。すん、すん、すん…」
泣き出す士官。どうも下半身が濡れている。他の乗客達は迷惑そうな顔で彼の遠くを歩いている。

「も、もう、大丈夫だから。1人にしといてくれよおお!」泣き叫ぶ士官。

「わ、分かりました…当船御利用、有り難うございました…」


「ああ、少佐、久しぶりですわ!」
士官の前に、オブライエンが走って来た。

「う、うわああん! チーフ! 怖かった、僕怖かったよう…」

「あ、そ、そ、そ、そうでっか…」胸に抱き着く士官に頬がひきつるトウジ。
「せやけどほんま変わってまへんな。…あ、少佐、ステーションを案内しますわ。どうぞ、こっちです。…ほ、ほら、そんなよっかからんと。こっちです。こっち。」


ドッキングリングを覗きに来たプワークは細目で髭をなでた。
「何ですか…絵に描いたようなゼレンゴンの方ですネェ…」


「招集を受け来た。」

司令官室のシスコは立ち上がり、手を差し出した。
「ようこそ、ゲォーフ少佐。来てくれて嬉しい。」
握手する2人。

「…エバンゲリオンは、残念だったな。」

「…ああ。」
シスコは椅子に座り直す。(椅子が無いので)立ったまま頷くゲォーフ。

「今まではどうしていたんだ?」

「惑星ゼーレの歓楽街で、ストリップの修行をしていた。他のストリッパー仲間達との禅問答は深遠で、非常に得る物があった。」

「そうか。」頷くゴート。
「修行の邪魔をしてしまってすまない。が、この任務の間は、我慢してくれないか。」

「ふん、問題ない。もう休暇も終わる頃だったのだ。」

「それなら良いのだが…それでは、休暇の後の配属は決まっていたのか?」

「いや…退役を考えていた。」

「理由を聞いても、構わないか?」
ごん、ごんごんごんごん、ごんごん。
「…」

「…故郷を離れ暮らす中で、色々葛藤があったのは事実だ。」
何やら机の上で両こぶしをドンドン叩き、フィギュア相撲らしきものをやり出しているゴートをちらちら見ながらゲォーフが言う。

「と言っても、任務期間中は全力を尽くすつもりだ。」

「そうか。」
ごんごん、ごん。ぱた。
「お。今日の昼の部はララがすくい投げか…今場所はまだ黒2つ。」「…」
パッドに何か入力しているゴート。

「…それでは、状況報告書は読んでくれたか。」

「ああ。」頷くゲォーフ。

「書いてある通り、ゲンパチロックは何かを隠している。が、我々には秘密を教えてくれそうにないんだ。」

「それでは私が聞き出してみよう。」

「頼んだよ。」

「問題ない。」

「ああそれからゲォーフ。」シスコは出て行こうとするゲォーフを呼び止めた。
「私も以前、艦隊を辞めようかと思っていた事がある。…が、あの時辞めていたら、後悔していたと思う。」

「覚えておこう。」
ゲォーフは司令官室を後にした。


「で、何を御注文になられますか?」

「御子様ランチだ。」
プワークの自称バーに来ていたゲォーフは、物珍しそうに周囲を見回しながら答えた。

ゆっくりと首を傾げるプワーク。
「はて…オコサマランチとは、どういった種類の料理で?」

「知らんのか。あのレイの好きな料理だぞ。…まあ良い。なら、ギャニチャーハンだ。」

「ギャニチャーハン!? あんな子供っぽい、ネチョネチョ甘ったるい、イブジョー人しか口にしないような物をよく御注文…ジュン君、ギャニ・ワン・プリーズ。」
ゲォーフの視線から目をそらすプワーク。


「(もしゃもしゃ)…うむ…」

「少佐、これ、やりまへんか。」
バーの一角で、ナガレと一緒にゲーム機の前に立っているトウジが、チャーハンを食べているゲォーフに声をかけた。

「…何だ。」2人の所にやってくるゲォーフ。

「今うちらん間で流行っとる、「ヴァーチャ茶摘み」いうゲームですわ。」

「ああ。この台の上に立って、所定時間内に、出来るだけ正確に多く、そして美しく茶葉を取る事が出来るかを競うゲームなんだけどねえ。」

目が細くなるゲオ。
「…面白いのか。」

「そらもちろんですわ! 一遍やってみて下さい。あ、ほら、どうぞ。」

「…」ジャムおじさんの熱心さに押され、ゲォーフは台の上に立つ。

「GAME START」の文字が画面に現れる。どうやら画面のほっかむりの女性は、プレイヤーの動きをモーションキャプチャーで捉え動けるようだ。
「これで、この低木の葉を取れば良いのか?」

「そうです!」白熱した様子で頷くトウジ。

「…」ちょい。ちょい。がさがさ。ちょい。
ぽとっ
「あ、ヒルが空から落ちてくる!」ベシアが叫ぶ。

「え?」「GAME OVER」
ばしゃあああああっ。

どういう仕組みか、上からゲォーフに本物の水がかかった。タライ一杯分。
「…」「ああ、ええとこまで行っとったんやけどなあ。」「うんまあ、初心者にしては頑張ったんじゃないの?」

「……面白いのか?」


「あら、ドクター、今日はゼレンゴンの方と御一緒なんですか?」
テーブルの向こうから、青い髪のイブジョー人の女性がやって来た。淑やかで知的な印象の女性だ。

「ああ、そうだね。紹介するよ、こちらはゲォーフ少佐だ。少佐、こちらはイツキ・リータ君。ここのヌルキチャガールをしているんだ。」

「はじめまして、ゲォーフさん。」イヤリングを揺らし微笑むイツキ。

「…イブジョー人で、しかもヌルキチャガールだという割には、随分地味な服装だな。」

「あ、やっぱりそうですか。」作務衣らしき服を着たイツキは、恥ずかしそうに笑う。
「でも、この服はとっても合理的なんですよ。洗わなくても汚れが目立たないし。」

「そうか…」

「まあイツキ君は、ヌルキチャガールの中でもかなり特殊だからねえ。そもそも本職はこれじゃなくて、連邦オーナーである僕の秘書を…ああ、これは秘密だから今は言えないなあ。」
両手を上げるベシア。

「「…」」「あ、じゃあ皆さん、楽しんでいって下さいね。あは、あははは…」


2階から、キラとダックスが何やら言い合いながら降りて来た。
「冗談じゃないわよ! 何で私があんな役をやらなきゃいけないのよ!」

「何言ってんだい。言っとっけど、良い方の役譲ってやったんだぞ。」

「良いわよこんなの譲らなくて。大体これ、男の役なんでしょ?」

「また2人の好みが合わなかったのかい?」

「え? そうなのよドクター。一応主人公らしいんだけど、それが無職で…」

「無職じゃねえ、フーテンだっ!」

「だからフーテンって何よ!」

「フーテンは…フーテンだよ! 心の問題だっ!」

「分かるように説明しなさいよっ!」

トウジが思い出したようにゲォーフに言った。
「あー、少佐。紹介しますわ。こちらはキラ少佐、基地の副官ですわ。少佐、こちらはゲォーフ少佐ですわ。」


「あ、ああ。はじめまして。」コクコク頷くエリナ。

「ああ。…中々渋い服装だな。」茶色の背広と帽子をまじまじと見るゲォーフ。

「あ、い、いや、いつもはこんなダッサイ服装じゃないのよ。今、マギスイートの方にいたから。」「あんだと?」

「そうだろうな。」

「それから、こちらはダックス大尉ですわ。」

トウジの言葉にゲォーフは脅えた表情になり、膝がガクガク震えだした。
「だ、ダックス? も、ももももしや、あなたがあのコウイチロウ・ダックスか?」

「あ? ああ、それは前のホストだぜ。」快活に答えるリョーコ。

「ふう。そうか、今は違うのか…命拾いをした…ゼレンゴンでは、コウイチロウの名を聞いて失禁with昇天しない者はいない、と言われているからな…」

「また、大袈裟な…」
ダックスは苦笑する。

「いや、今も濡れているから分かり難いが、ややちびりではある。」「そうですか。」

リョーコは頭を押さえつつ振った。
「まあでもあれだ、俺の方がコウイチロウよりメザ・マ・シジャン・ケンだろ?」

「…」少し考え込むゲォーフ。
「そうかもしれん。」


カウンターでは、ゼレンゴン人達がケイケツワインを飲みながら大声で騒いでいる。
「お、お前良いケツしてんじゃねえか?」

「な、ちょっと、止めて下さい!」

「「ぐあっはっはっは」」
リータにちょっかいを出し、ゲラゲラ笑い合っているゼレンゴン人達。

「あれは確かゲンパチロックの息子…。ちょっと失礼する。」
カウンターの方を見ていたゲォーフは、ダックス達にそう言うと向こうへ歩いて行った。

「ねえ、さっきゼレンゴン語で何て言ったのよ。」

「訳したら面白くねえよ。…何だ、ゲォーフは、奴等を止めにいったのか?」
リョーコは腕組みをして面白そうに眺めている。

ゲォーフは彼等に近づき、何気なく素通りしてそのままバーを出て行ってしまった。


「「「…え?」」」

「ああ、少佐変わってへんわ。なんや安心するなあ。」

「な、何しにカウンターに言ったんだ、奴は?」

オブライエンはダックスに当然、という表情で答える。
「多分、奴から何やすったんちゃいます?」

「ああ。そうえ゛え゛ええええ?」


「…よっ、はっ」

自室でヴァーチャ茶摘みの練習をしているらしいゲォーフ。彼のバッグから、ボーイッシュなゼレンゴン少女の写真が顔を出している。
「いつでも見ているぞ。お前が媽媽の名を汚すような事をすれば、すぐさま首をかき切ってやる。 荒苦蒼風」
写真の中の少女は、誰かの返り血で真っ赤な顔で、口裂け女の如く笑っている。


ぴーぽご。
「…入れ。」
既にたらい27杯分の水をくらったゲオは、ドアを見て言った。

「ゲォーフ、貴様一体の何のつもりだっ!」
やって来たのは肩を怒らせたゲンパチロックだった。

「ゲォ…、おお。Sexy。ベリSexy。」
シャツ越しに乳首が透けて見えるゲォーフを前に呟くゲンパチロック。

「いやん。」一応ポーズを付けてみるゲォーフ。
「…何の用で来た。これか。」
ゲォーフはそばに置いてあった筒を手に取った。

「そ、そうだ! 我が息子の通信簿、どうやって手に入れた? まさかすったのか?」

「そんな訳は無い。ゼレンゴンはそんな事はしない。」
諭すように言うゲォーフ。

「そ、それではやはり…私の息子と決闘して勝ち取ったと言う事か!? …息子は、まるで覚えが無いと言っていたが…」

「何とでも好きに言うが良い。」ゲォーフは筒をゲンパチロックに渡した。
「それに、もうこの通信簿にも用は無い。…あなたを呼べたからな。」

「わ、私を呼ぶだけの為に、息子の名誉を汚したというのか!」

「アイドル声優達の未来と同じだ。もともと存在しない物を、汚す事等出来ん。」

ゲンパチロックは威厳ある(そしてベリsexyな)ゲォーフの様子にやや押されつつ、太い眉を上げた。
「息子に名誉が無いと言うつもりか! してその父は?」

「どうだろうな。」ゲォーフは首を振った。
「あなた達のやっている事は正気の沙汰では無い。ガラックに怪我を負わせ、他国領域内で勝手に船の検査をし、更にはケイボクを処刑した。一体何を考えている。」

「その事か…ゲォーフ、全てはアルファ宇宙域の平和の為なのだ。」

「平和の為、か…ゲンパチロック。余り空々しい事を言っていると、この写真の女がお前も殺しに来るぞ。」

瞬時に冷凍されるゲンパチロック。
「う゜…そ、そうか。しかしゲォーフ、私は君と争い合いたくはないのだ。」

「それは私も同じだ。ゲンパチロックの家は名誉ある家系だ。しかし将軍、私は将軍がここに来た、本当の理由が知りたいのだ。」

「私は…ジブロン総裁直々の命を受けここに来ている。」ゲンパチロックは睨みをきかせた。
「ゼレンゴン戦士ならこれ以上の説明は不用のはずだ。」

「私はゼレンゴン戦士であると共に連邦の士官だ。そして仲間由紀恵の準メンバーでもある。」言い返すゲォーフ。
「その説明では不十分だ。」

「…今は、これ以上は言えん。しかしゲォーフ。我々の邪魔をすれば、それは帝国を滅ぼす事になるぞ。覚えておけ。」
ゲンパチロックは筒を持って、部屋から出て行こうとし、振り返った。
「…それからゲォーフ、仲間由紀恵はグループではないな。」

「む…それならT-BACKSはどうだ。」

「いや、…まあ良い。」


「はっ! はあああ、はっ、はあっ!」
暗い洞窟の中で、ゲォーフは剣を手にエイリアンと戦っていた。
「ふうう、ふっ、ふっ、ふんっ!」
鮮やかな手さばきでエイリアンを倒していくゲォーフ。

「…なあ、もしかして、一番弱いレベルでやってねえか?」

ゲォーフが声に振り向くと、緑髪のスバリル人が腕組みしてこっちを見ている。
「ああ、そうだ。…ふんふん、はっ!」「きえー」
ゲォーフは目の前のエイリアンを全て倒した。

「お見事!」

予期せぬ客に頬をやや赤らめながらゲォーフが答える。
「これはなかなか手応えがある。マギスイートに、ゼレンゴン用のプログラムがあるとは知らなかった。」

「ま、ゼレンゴン用って言うか、一応あたし用なんだけどな。」

「コウイチロウが使っていたプログラムか?」

「いんや。このあたしが、使っているのさ。…どうだいゲォーフ、もう良い加減「乳児用」レベルでウォーミングアップするのも飽きただろ? そろそろ一般用で」

「ああ、いや、今日はウォーミングアップだけにしようかと思っている。」

「そうか? まるでラジオ体操じゃあるまいし。ゼレンゴンらしくねえな…」
不満そうな様子のリョーコは、ふと「わたし、楽しい事を思い付いちゃいました!」という表情になった。

「あ、じゃああたしと対戦してみるか? それ位なら「乳児用」よりはマシだし、本当のプログラムに比べりゃ大した事無えだろうからよ。」

「あ、い、いや、私は今日は」

「分かってるよ、女の、しかもゼレンゴンでもない奴とやっても詰まらねえと思ってんだろ? でもま、こっちの方が「乳児用」よりは良いって。コンピューター、ギンガミソードをあたしにくれ!」
ぴぴ。しゅううん。
ダックスの手にゼレンゴンの剣が現れた。

「いや、ああああのあのあのちょっと」

「へっへっへ、こっちこそ、遠慮はしないぜ? 「世界を、革命する力を!」 さあ!」剣を向けるダックス。

「…」
ゲォーフは恨みがましそうに自分の剣を上げる。


「…、はっ! はっ、はっ!」ざくうっ
「ぐあああっ」
ざくっ、ぐさっ、びちゃっ、びちゃっ、どくどく…
「ふっ、はっ! はっ! あはははは、はっ! はっ! あはははは」「…(白目)」

「た、た、大尉…」

ふと我に帰ったダックスが足元を見ると、もとゲォーフだった肉塊が散乱していた。
「あ、す、すまねえ少佐!」慌てて肉塊を集めるダックス。
「思わず本気になっちまってさあ。そりゃあ、あたしなんか本気で反撃するような相手じゃないかもしれないけどさ。それにしたって、少佐も少しも抵抗しないから…」

「…あ、ああ。死ぬかと思ったぞ。」首を振るゲォーフ。


「ああ、す、すまねえ…少しでも少佐に気晴らしをして欲しかったんだが…逆効果、だったか? あは、あははは…」

「…どういう事だ?」

リョーコは首を振り、苦笑した。
「…仕事だよ。イマイチ、うまく行ってねえんだろ?」
リョーコは(大体元の形に戻った)ゲォーフの隣に腰を下ろす。

「…そうかもしれん。」ゲォーフは頷いた。
「…ゲンパチロックは、秘密を話さない。周囲の者もな。私の弟のゲンシューンが元老院にいるが、彼も何も教えてはくれなかった。」

「皇帝はどうなんだ。」
リョーコが聞く。

「アンノス皇帝だよ。数年前あの伝説の皇帝が突然現れて、結局それは残っているDNAから作られたクローンだと判明したが、それでもソイツは帝国の皇帝として復活したっていうじゃねえか。」

「しかし彼はただの象徴で、政治的な実権は無い。」

「それでも、一応ジブロンと並んで帝国を代表する存在なんだろ? 何か知ってると考えても、良いんじゃねえのか?」

「ああ。」ゲォーフは頷く。
「…彼にも聞いた。が、やはり口をつぐんでいる。」

「そうか…少佐、お前、…嫌われてるんだな…」
沈んだ空気になる2人。

「なあ、…誰か少佐を嫌っていないヤツはいないのかよ。」

「いただろうか…」「えー。」


ダックスは立ち上がり、自分の服の埃をはらった。
「ま、そうだな。ゼレンゴンなら、少佐の一族に何か恩のあるヤツとかに聞くのが近道、なんじゃないのか? …ところでよ。本当のゼレンゴンは、格闘の際はそういう風にするものなんだな。」

「…何の話だ。」

「服だよ。いや、服って言うか…」
リョーコがちら、とゲォーフ(もちろん全裸でバドガール)を見る。

「いや、これはただの趣味だ。」

「そうか…一瞬そうしなきゃいけないのかと思ったぜ。」気の抜けた表情になるリョーコ。
「少佐、結構お前ってさ…可愛いな。」
リョーコは笑ってそう言うと、洞窟を出て行った。

「(この部分を見て言われてもな…)」
自分の一点を見て難しい表情になるゲォーフ。


モニタの向こうの、メガネをかけたゼレンゴン人が憤慨している。
「あなたにそんな事、言える訳無いでしょ!」

「そ、そこを何とか! クヴァダ君、君には以前シ…あ、誰だったっけか? をやったではないか。」
自室のモニタでゲォーフは通信を入れていた。

「それはそうだけど…別に、あなたがくれた訳じゃないじゃない。」

「それでは…やはり美少年か? やおいか?」

「え?」
細い眉を上げ、煙草の煙をぷかー、とくゆらせるヒロコ。

「やおいがええのんか?」

「…ま、悪い言う気は無いけどな…」何故か関西アクセントになっている2人。

「イブジョーで売っている写真集から、いくつか見繕おう。」

「は。それじゃまるで買収みたいじゃない。そんな話に私が乗ると思う?」

「5冊。」

「量の問題じゃないわよ。」

「10冊。」

「ちょっとゲォーフ少佐、あなた人の話聞いてる?」

「15冊。」

(3時間経過)

「と、トラック3台分!」

「うーん…私、奇数より偶数の方が好きかしら…昔からラッキーナンバーだったし…」

「よ、4台分!(ぜえぜえ)」

「ふう。」ぷかー。
「…全く。しつこい男は嫌われるわよ。」ヒロコは半笑いで、頭を振った。

「お、教えて。くれるんだな。」

「4台分って、言ったわね。」

「も、問題無い…」


「何だって! なぜゼレンゴンがアオバシアを侵攻するんだ!」
司令官室のシスコは驚いた顔で声を上げた。

「聞いた話では、アオバシアでは現政権が崩壊し、権力が軍部から革命政府に移動したそうだ。」
腰からみのの如くキーホルダーをじゃらじゃら繋いでいるシスコを前に、ゲォーフは報告を続ける。

「それと侵攻と、どう繋がりがある?」

「ゼレンゴン指導部は、この革命にドミネソンが噛んでいると考えている。」

「…何か証拠があるのか?」

「今の所無いようだが、彼等の助けが無ければ中央司令部を倒す事など出来なかっただろう、と考えているらしい。」

「それで、今の内に芽を摘んでおこうと言う訳か…ダックス、ゲンパチロックを会議室に呼び出してくれ。話がしたい。」

「分かった。」
頷くリョーコ。

シスコはじゃらじゃら音を立てながらゲォーフの方に向き直った。
「よくやってくれた少佐。今回の任務は、君にとっては辛い物だったろうな。」

「…いつか、祖国と連邦とどちらかの選択を迫られる時が来ると覚悟はしていた。」

「そうか。まだその選択はしないで」「ま、沙知世と光代並にどっちもどっ」

「…しないで、良いぞ。」

「ああ。分かっている。」頷き合う2人。


会議室に来たゲンパチロックは、ゲォーフの方をちらちら見ながら口にした。
「それにしても連邦の情報収集能力は侮れませんな。情報源を是非とも教えて頂きたい物だ。」

「それは重要ではありません。良いですか将軍、攻撃は直ちに中止して下さい。」

「それでは、アルファ宇宙域がこのままドミネソン達の手に渡って、全域がゲロ臭くなっても構わないと言われるのですかな?」

「「…」」少し想像するシスコとキラ。

「…それでは、アオバシアがドミネソンに操られているという証拠が何かあるのですか。」

「司令部が倒れたという事が一番の証拠ですぞ。」

「それでは不十分よ。もし彼等とドミネソンが関係無かったら?」

「それは運が無かったと言うしかないでしょう。既にどこかへ消えてしまったdosのtaeco並に。」
キラに答えるゲンパチロック。

「運、ねえ。」キラは眉を上げた。

「…はっきり言っておきますが、連邦評議会は今回の帝国のアオバシア侵攻には反対です。」

「何ですと。」将軍はシスコの方を驚いた顔で見た。
「それでは、連邦は、我々がアルファ宇宙域を命を懸けて守ろうとしているのに、それに手を貸さないと言うのですか!」

「いくら相手がギター・マッドネス・スリー・ペーであろうと、不当な攻撃には協力出来ません。既に連邦からジブロン総裁に連絡も行っていますが、もし攻撃が行われれば、両国の和平もここで終わる事でしょう。」

慌てた様子で音量を上げるゲンパチロック。
「ちょ、ちょっと待って下さい! 我々は連邦と敵対するつもり等無いのですぞ!」

「それは私達も同じです。…将軍、もう一度、考え直してもらえませんか。」

ゲンパチロックは、ぷりちーなミノを付けた黒光っている絶壁ハゲを前に唸りだした。
「う、ううむ…分かりました。総裁と相談します。一時間後に、結果をお伝えしようではないですか。」


リョーコに呼ばれたらしいゴートとゲォーフが、慌ただしい様子で司令室に入ってきていた。
「奴等が動いたぜ。スクリーンを見な。」

ダックスの声に目を上げる2人。ゼレンゴンの船団は、次々と遮蔽状態に入り、姿を消していく。
「さきほどゲンパチロックは全艦隊に指令を出している。一言、「ビ・イチ・ボーイ・ズ」ってな。」
リョーコが深刻な表情で言う。ゲォーフの方を見るゴート。

「「戦闘開始」、という意味だ。」

「…」

「センサーの反応から見て、奴等ワープに入りよったらしいですわ。」

「行く先は分かるか。」
オブライエンに聞くシスコ。

べちゅべちょ、べちょ。
「計算中…出た。アオバシアステージですわ。一直線に向かってます!」
トウジの報告に、士官達は目を見あわせた。


士官達は会議室に集まっていた。
「評議会はジブロンの言葉を聞くまでは、判断を保留する意向だ。が、さっきからジブロンと連絡を取ろうとはしているが答えが返ってこない。」
ララをプラレール的な鉄道(ジオラマ)の前に寝かせ、ひき飛ばしてみたりしながら話している司令官。

「イブジョーも連邦の決定に従う意向よ。」
キラが言う。

「なあ、アオバシアに警告も出したらいけねえのかよ?」

「なーに言ってるの、まだ連邦とゼレンゴンは同盟国なんだよ? 簡単に裏切れる訳ないでしょう。」

「そう、ドクターの言う通りだ。」同意するシスコ。

「実際ゼレンゴンの言ってる事もあながち的外れじゃないんじゃないかな? ドミネソンが、アオバシアの実権を握る事が絶対に無いって言い切れるかい?」
髪をかき上げながら言うナガレ。

「ええ、確かにあの人達ならそれ位の事は簡単に出来るでしょう。」ルドーが頷く。

「でも、ドミネソンがいなくても革命はありえるわよ。」反論するエリナ。
「アオバシアでは、男気に馴染めない人々を中心に反政府気運が高まっていたもの。イボシリアン・オーダーの崩壊で一気に革命に繋がったのかもしれないわ。」

「アオバシアだけが問題なのではない。」士官達はゲォーフの方を向く。
「帝国には、長年の平和で国民がたるんできた、と感じる者も少なく無い。彼等は昔通りのゼレンゴン…戦い、略奪するゼレンゴンに戻ろうとしている。」

溜め息をつくシスコ。
「ドミネソンの関与は口実か…もしゼレンゴンが昔の姿に戻れば、アオバシアだけで満足するとは思えないな。」

「次は連邦かもね。」

「イブジョーの方が危ないんじゃねえのか? ボソンホールの管理権は、喉から手が出るほど欲しいはずだぜ。」
リョーコがエリナに言う。

「こりゃどうも困ったね。仮にアオバシアに警告を出したらゼレンゴンとの条約違反になるし、放っておけば次は自分達が標的だ。」
ベシアは少し考え込んで、ふとシスコに言った。

「司令官、最近お勧めの穴は?」


リョーコは、パッドを手で叩きながらゴートに見せている。
「第一陣は100隻以上の艦隊だそうだ。」

会議室にやって来たガラックは、驚いた様子で2人を見た。
「あのー、お、俺、今さっきここに呼ばれた、よな。」

「ああ勿論だ。ガラック、実は今度の特注の穴を作るに当たって、いくつか注文があるんだ。そっちにメモしておいたが…」

「「感触はマリア、合成ボイスがリョウ。材質が…」」ちら、とパッドを読むセイヤ。
「ああ、まあ、貰っとくぜ。」

「それから、私のサイズを測ってくれないか。」

「司令官のサイズは控えてあるぞ?」

「いや、最近ゆるくなったんで、測り直して欲しい。」

「…そうか。なら。…ここで、測って…良いんだな?」
シスコが頷いて見せると、ガラックは何か「分かった」、という表情でメガネを上げる。
ガラックはシスコの下を脱がせ、棒の付け根から先まで測定器で測りだした。

「…ゼレンゴンは、今回の侵略に、全軍の3分の1を導入して決着を付ける気らしいぜ。」
下半身フリーのゴートに、真面目至極な様子でリョーコが伝える。

「ゼレンゴンが目的地に到着するのはいつだ?」

「アオバシアステージに奴等が着くのは、もう1時間は切ってんな。」

「そうか。全く由々しき事態だな。」頷くシスコ。
「…ガラック、測定は終わったか?」

ガラックが測定器のスイッチを押した。
「あ、ああ司令官、ちゃんと最新のデータに更新させて貰ったぜ。」

「そうか。それでは今度の穴は楽しみにしているぞ。」
下の制服をはき直すシスコ。

「任せておけ。ピッタリのサイズの奴を作ってやるよ。じゃあ、邪魔したな。」
セイヤは片手をあげ、会議室を後にした。


キャベツ畑人形や城の模型、拘束グッズやプランター等が所狭しと並ぶ店の一角で、ガラックがモニタ相手に唾を飛ばしていた。
「良いからその音楽を止めろ!」

モニタの向こうのアオバシア人は渋々音楽のボリュームを絞る。
「けど、理由が分からないっスね。何でゼレンゴンがアオバシアを攻めるっすか。」

「何でも奴等、アオバシアの革命はドミネソンの陰謀だと考えているらしい。」

「ど、ドミネソンんん? あっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ」「笑い事じゃねえぞ!」

ギター男は肩を上げた。
「ああ、申し訳ないっスね。それにしてもそんな、つんくがドラマに出るサマ並に馬鹿な話がある訳ないじゃないっスか。」

「知るか。とにかくゼレンゴンがそっちに向かっている。」

「そっちで何とかして貰えないっスかね。今こっちは別の事で忙しくて。」
頭をかくシゲック。

「…大方、まだ民衆の反乱が収まらないとかいうんだろ?」

「…ガラックさんも、相変わらず色々探っているみたいっスね。」

「イボシリアン・オーダーが倒れて以来、情報が筒抜けなんでな。」
メガネを光らせるセイヤ。

シゲックは肩を上げた。
「まあ、イボシリアン・オーダーが無くなった以上、工作員としてのガラックさんの未来ももう無いっすけどね。ロッケンローが嫌いなアオバシア人なんて、笑い話にもならないっすからねえ。ま、そこで一生穴を彫って生活するっていうのも」
「良いかシゲック、お前さんに言いたい事は色々あるが、今は一刻を争う事態なんだ! もう言うべき事は言ったからな! 後は知らんぞ!」


司令室のダックスは、モニタを睨みながら言う。
「ゼレンゴンの通信によると、奴等はアオバシアの国境近くのコロニーは制圧したみたいだな。でも今は、アオバシア側の抵抗もあって結構てこずってるらしいぜ。」

「まるで誰かが事前に警告したみたいね。…ゼレンゴンもこれで、考え直してくれれば良いんだけど…」

「それはない。ゼレンゴンは一旦戦いだせば最後までやりぬこうとする。」
エリナに答えるゲォーフ。

司令官室のドアが開き、シスコが司令室にやって来た。
「司令官。評議会は、どない言うてます?」

「連邦評議会は正式にジブロン総裁に抗議した。」トウジに答えるゴート。
「それに対しジブロンは帝国内の連邦市民を追放、連邦に居る大使を引き上げさせた。」

「外交関係の断絶って事?」エリナがゴートに聞く。

「それだけではない。彼はトダ・スリー条約も破棄すると宣言した。連邦とゼレンゴンの和平協定は、失われた。」

「そんな…」言葉を失うキラ。

「「…ゴート君。」」「黙らっしゃい。」


じゅぶじゅぶ、じゃぷ。
オブライエンが眉を上げた。
「ああ。ゼレンゴン船が遮蔽を解除して現れましたで。ドッキング許可を求めてますわ。ジブロン総裁が乗りはってて、ゲォーフ少佐と話したがっとるらしいです。」


薄暗い船のブリッジに、どことなく濡れそぼっているオヤジが歩いて来た。
「おお、来たか、ゲォーフ! 待っていたぞ!」

ぽんぽん。
椅子に座っていた狸フェイスが立ち上がり、ゲォーフの元に歩み寄る。と同時に周囲のおつきの者が鼓をたたく。

「ああ。…」

狸はゲォーフの来ている艦隊士官の黄色い服を見ながら笑う。
「いつか、その服がお前に仇をなす事もあるだろうと思っていたぞ。」
ぽんぽん。

「ああ、総裁。…しかし私は、自分を恥じて等はいない。」

「勿論だ。お前には自分の信念があろう。その言動から敵も多かろうが、少なくともこの私は敵ではない。共にガイナラスを打ち破った時の恩は、私は勿論忘れて等いないぞ。」

ジブロンの言葉に、ゲォーフはほっとした表情になった。
「感謝する。それを聞いてちびりも引いた。」

「ああ。そしてゲォーフ、我々は今一度、共に戦うべき時が来た、そうは思わんか?」

眉間に皺を寄せるゲォーフ。
「私に、一緒にアオバシアを攻撃しろと言うのか?」

「ああそうだ。今こそアルファ宇宙域を守り、ゼレンゴンとしての栄光を勝ち取るチャンスのけ!」


ゲォーフの眉間の皺は更に増えた。
「…のけ?」

「もののけ口調だ。」
ぽん、ぽんぽん。

「……」
ゲォーフは頭を振り、答えた。
「勝手にしろ。私は行かん。」

「何故だ! お前を友人と思っているから、わざわざゼレンゴンとしてのチャンスを与えているのけ!」
威厳たっぷりに言う総裁。

「私には、ここでの任務がある。私は連邦の士官だ。そしてT-BACKSの」

「連邦等所詮地球人の組織にすぎん。お前の居場所ではないシカ。」

「…何だ?」

「ナウシカ口調シカ。」
ぽん。

「………」

「良いかゲォーフ。お前は私がお前の家系の汚名をそそぎ、名誉を回復させてやったという恩を忘れたシカか?」

「確かにあなたの恩は忘れない。…しかし、アオバシアへの侵攻は間違いだ。」

「そうピュタか…」

「何かに統一しろ!」息を荒くさせるゲォーフ。

「ゲォーフ。私に逆らえば、もはやお前の帝国での居場所は無い君。お前の弟は評議会から追放、家の領地も没収君。何も残らない君。」
ぽんぽん。

「何だそれは。」

「隣の山田」「そうか。」

ゲォーフはゆっくりと首を振り、ジブロンに言い放った。
「それでも、誇りと愛は残る。」

「愛? どういう事だ?」「…口調飽きたのか?」

ゲォーフは息をつく。
「ここで説明するつもりはない。…ああそれから、もう遅いとはいえ、お前、一体何を考えてる? あれを全米公開してどうする気だ?」

「あれは…まあ、嫌がらせだ。」

「最初から世界進出する気等無かったな。」

「ネズミー慣れした奴等に繊細な私の物語が分かってたまるか。」ジブロンはニヤリと笑った。
「お前もだ、ゲォーフ。そうまで言うなら勝手にしろ!」


ぽけー。
ゲォーフは緑ゴルピスを飲みながら、何をするでもなくプワークの自称バーでぼうっとしていた。

「調子どないです?」
ゲォーフは声に顔を上げる。

「ああ、チーフか。…例のゲームで負けたな。」

水に濡れ、少し硫酸か何かで溶けているトウジは苦笑した。
「ええまあ、ええとこまで行ったんですけどねえ。サルバドールのカーニバルに出る言う面でミスってもうて。」

「(良く分からん…)そうか。」

「…」
向かいの席に座るオブライエンに、ゲォーフは話しかけた。
「チーフ…ペングにさらわれたピカード艦長を救出した時の事を、覚えているか。」

「そら、忘れろ言う方が無理なんちゃいます?」
イエキコーヒーを手に頷くトウジ。
「あん時は大変でしたわ、そらもう、間違いなく連邦はペングに同化されるんやなー、思いましたし。」

「私はあの時は、何も怖くなかった。」ゲォーフは頭を振った。
「あの時はラブの為なら何でも出来るような気がしたものだ。ただ、YOU THE ROCKのテレビ進行の寒さだけが怖かった…」

「若かったあの頃、でっか? そない言うても、少佐も蟻重力コイルの修理はようせえへんでしょう?」
笑って見せるトウジ。

「…」ゲォーフはオブライエンを見て、口を開いた。
「私は、艦隊を辞めるつもりだ。」

「何言うてはるんですか! …そら、今までのエバンゲリオンは無くなったか分からんけど、又すぐ新しいエバも出来ますて!」

「…しかし、私たちの思い出の詰まった、あの伝説の樹のある母校は既にこの世には無いのだ。…ガジュマルの原生林のな…」

「少佐…。で、これからどないしよう思うてはるんでっか?」

「ゼーレのストリップ小屋に居ようと思っていたが、最早無理だ。ゼレンゴン領域に私の居場所は無かろう。」

「そやったらなおのこと、連邦におった方が良えんちゃいますのん?」

「いや…この服を着ている限り、祖国に尽くせない負い目、それに何より、叶わぬラブの事を思い出せさせられてしまう。」

「叶わぬ…ラブ?」

「ああ。」頷くゲォーフ。
「私はピカード艦長を愛していた。今も君に、胸キュン。(血栓で)だ。…が、艦長は応えてくれなかった。艦長はいつも二次元に夢中だったからな。…一度無理に唇を奪ってみたが、彼の私に対する冷え切った心が変わる事は無かった。」

「………そ、そうでっかー。」
何となく声の音程がおかしくなっているオブライエン。

「ああ。…連邦にももう居られない。確かクリムゾン連合がお笑いの出来る士官を募集していたはずだから、そこに行こうかとも思っているのだが…」

「あんな遠くにでっか! 娘さんはどないしはるんです。」

「アレか。アレはもう知らん。今は「自分より強い奴を探す」等と言って四国近辺を放浪しているらしい。」

「中途半端に狭いでんな…っちゅうかまだ6、7歳ですやん。」

「ゼレンゴンの子供は育ちが早い。」

「分からんもんでんな…」


どんどん、どん。
「今日はミスターノリックがバタフライで初金星だな。」
再びフィギュアで遊んでいたらしいゴートはゲォーフを見て首を振った。

「駄目だ、まだ君の辞表は受け取れない。」

「何故だ! もう僕はいらない子供ではないのか?」

「ゲォーフ、君は子供ではない。」ごく普通に返答するゴート。
「む。」

「…君には、アオバシアとゼレンゴンの紛争が続く間はここに留まってもらう。」

「しかし…」

「今は優秀な士官を1人でも多く必要としているからな。」

「…」

ドアが開き、キラが司令官室に入って来た。
「ゴート君、」「普通に定着させるな!」

「イブジョー情報局の連絡が入ったわ。ゼレンゴンはアオバシア艦隊を撃破、現在アオバシアステージへ向け航行中。アオバシアステージには、52時間以内に到着する予定よ。」
パッドを読むエリナ。

ゲォーフが言う。
「…ゼレンゴンが昔のやり方に戻ったら、母星を鎮圧し官僚達を処刑するだろう。それから「学園」を置き、町中にアイドル声優達の曲を流させるはずだ。…宍戸留美とか。」

「ピントずれてるわねー。」

「…そろそろ、アオバシアと直接話す時が来たようだな。」
シスコは立ち上がった。


モニタに現れた人物に、シスコ達は目を見合わせた。
「いいいいいぇええええええええいいいいろっけんるるるぉぉうぉおおおおおおおおお! おおお、おお? おお、シスコ兄貴じゃないっすか!」

「…私は、革命政府の人間と話したかったんだが。」

「ええ、だから俺が出てるっすよ。」当然のように頷くシゲック。
「革命政府、デパガ評議会軍事顧問のガル・シゲックっす。いいぇええええい。」

「あんたはターボ湯切りか。…何だシゲック、中央司令部とは袂を分かったのか。」

「俺は国のロック魂に身を捧げる一軍人にすぎないっす。支配者が誰かを問題にするようでは、まだまだ肝っ玉マザーが小さいっす。」

「要は、上手い事乗り換えたって訳ね。」エリナが口を挟む。

「ライク・ア・ローリンストーンっす。寿司BOYは明石に2店舗っすよ。」
シゲックはアオバシア語風すぎて地球人には分かり辛い返答を返した。

「まあ良い。シゲック、ゼレンゴンがアオバシアに着く前に、そちらの政府要人を安全な所に移したいと思うんだが。」

「ええ、どうしたら良いっすかね。」

「この座標まで来てくれ。」星図の一点を指すシスコ。
「ここで落ち合おう。ここから戦闘区域を出るまでは、我々が護送する。」

きゅいきゅい、きゅやあああああんがあああああああ、きゅうぉおおおおおん。
ゴートの言葉にシゲックは持っていたギターを一しきりかき鳴らした。喜びの表現らしい。
「有り難うございまっす! 恩に着るっす! 連邦のこのような暖かい処置にデパガ評議会はナウさっそく感謝ソングを」

「いい、いい、ナウは良い、シゲック、時間が無いから後にしてくれ。」

「そうっすか…ところで、護送中にゼレンゴンが攻撃して来たら?」

「彼等も、連邦の船は攻撃しないだろう。…多分な。」

「そうっすね、兄貴の船っすからね!」シゲックは快活に頷くと、モニタのスイッチに手を伸ばした。
「じゃあ、この場所で会いましょう!」通信は切れた。

ゲォーフが口を開く。
「…もし、アオバシアが本当にドミネソンに乗っ取られていたらどうするのだ。」

「そんなもん、ぎったんぎったんに殺ってやるまでよ。良いチャンスじゃない。ねえ、司令官。」

「あ、ああ、そうだな、少佐。」

キラに頷いてから、シスコはゲォーフの方を向いた。
「ゲォーフ、君が頑張れブロークン・ハートで艦隊を辞めたがっているのは分かるが、今は一緒に来て欲しい。」

「…承知した。」


エステバリスがナデシコのドッキングリングを離れ、旋回し、こびり付いたカビを光らせつつ発進した。

艦長席のMr.腰ミノは考え込むかのように手を合わせながら、命令を下した。
「これよりワープに入る。トゥルール、遮蔽装置を起動してくれ。」

カグヤは司令官の指令に顔を上げた。
「大佐? アルファ宇宙域での遮蔽装置の使用が、我々ロミュラスカとの条約違反である事は御存知ですわよね?」

「でも使うしか無いでしょう。シゲックとの合流地点に着く前にゼンレンゴンの大艦隊にやられたら元も子も無いしねえ。」

「そういう事だ。」ドクターの言葉に頷くシスコ。

「む…よろしいかしら、この事は、後でしっかり帝国に報告させて頂きますわよ!」

「ま、ロミュラスカがアオバシア要人救出に力を貸してくれるんなら、話は早いんだけどねえ。」

「冗談をおっしゃらないで。帝国は彼等野蛮人同士の争い等に一々構ってはいられません。」
ベシアの口調に眉をひそめるトゥルール。

「だったら我々が行くしかないと言う事だな。遮蔽装置起動。合流地点へ、最大ワープで向かってくれ。ゲォーフ、ゼレンゴン船は遮蔽しているかもしれない。シメジ粒子を常に見ておいてくれ。」

「承知した。」


ゲォーフはパネルの数値にニヤリと笑い、艦長席の方を向いた。
「物体の破片を発見した。どうやらアオバシア船のようだ。」

「推力4分の1。」
シスコ達の前のスクリーンには、ギター型宇宙船の残骸や紙テープやペンライト、缶スウェット等が漂っている様子が映っている。

「生存者は?」

「いるかもしれねえが、メインセンサーを使うには遮蔽を解除しねえと…」
口ごもるリョーコ。

「今遮蔽を解除するのは危険だ。おそらく近くにゼレンゴンの艦隊が、遮蔽して待ち構えている。」ゲォーフが首を振った。

「へっ。まるでロミュラスカみたいな手だな。」

「フン。」相手にせず、鼻息で答えるトゥルール。

「勝てさえすれば良いのだ。…私達には、建前と本音がある。建前では我々は勇猛な戦士という事になっているが、そういった美学が生まれるのは、むしろ私達が本質的に臆病で寂しがりやのロンリネスだからだ。」

「おやおや? じゃあ何だい、現実には狡猾さに置いて、ゼレンゴンはロミュラスカ辺りと大差無い、と、そう言う事かい?」

「我々と彼等の差はせいぜい、彼等がより知能犯だという事位だろうな。」ドクターに答えるゲォーフ。

「ほう?」

「…って、人を○○○○みたいに言うなっ!(泣)」
どーん。

「遮蔽したまま通過するぞ。我々には使命がある。」

「了解。」テキパキと会話しているシスコとキラ。


「回虫反応を探知。前方に、ゼレンゴン船3隻に攻撃を受けているアオバシア船がいる。被害は大きいようだ。」
ブリッジにやって来た艦長に、ゲォーフが報告する。

「シゲックの救難信号を受信した。今、再生する。」パネルに触れるダックス。

「こちら、戦艦キース・リチャーズのガル・シゲックっす! 現在攻撃を受けているっす、シールドも既に消失、至急援軍を求ムっす! きゃおおおおおうう」
雑音混じりにシゲックのシャウトが聞こえる。

「映像を受信した。」

「スクリーンへ。」ゲォーフに言うゴート。

スクリーンには、ギブソン級戦艦に集中砲火中の3隻の小目玉船が映っていた。

「長年の和平が、こんな形で終わるのか…」
唇を噛むシスコ。


「…シゲックの船の装甲は、もう長くは持たねえぜ。」

シスコは深呼吸をすると、腰のキキ(の1人)を手に持ち、甘噛みし、頷いた。
「苦い味だ…暴れウォンバット砲、装填。遮蔽解除、シールド張れ!」


エステバリスは遮蔽を解除し、周囲にその姿を現した。


「僕は医療室に行っているよ!」
ドクターがブリッジを出る。船内は非常警報が鳴り響き、赤いライトがついている。

「ゲォーフ、ゼレンゴンに攻撃を直ちに中止するよう通達してくれ。」

「彼等がそのような事を聞くとは」ずがああああん。
さっそくゼレンゴンからの攻撃を受けるエステバリス。衝撃に揺れる船内。

「う、うう、うううう…」じょーじょーじょー。

「確かにそのようだ。」恐怖で涙と尿を放出中のゲォーフにシスコが答える。
「仕方あるまい、反撃開始だ! 攻撃パターン、オメガ・ドライブ・庚(かのえ)!」

「了解、そう来なくっちゃな!」約一名のクルーが急に目を輝かせ出した。
「ほうら、やってやれええい、うううううら!」
ぴぎゅ、ぴぎゅ、ぴぎゅん。ぴぎゅん。

「のわあああ」「いやあああ」「うう。うう、ううう」「きゃああああ」「ふっへっへっへ」
キリモミ飛行で回転しながらゼレンゴン船を翻弄するエステ。急な移動に重力制御が対応しきれず、クルー達が壁から壁へ飛び交っている。

「し、シゲックから通信よ。」
(何とか着地したらしい)エリナが言う。

「スクリーンへ。」
次の瞬間ギターの唸る音が。

きゅやよやいいいいいん。きゅるるるる。
「いやあ、兄貴、ホントに来てくれたっすね、感激っす! この気持ちを歌にするなら、そう、タイトルはユー・ファッキン・ビッチズ・アディク」

「それはともかくシゲック。今から逃げるから全速力で付いてくるんだ。」

「ようし、ダマール、全速前進でゴウっすよ!」画面のシゲックは前方にいるらしい操舵手に命令を下している。

「で、でもガル、もうエンジン付近は向こうの方に飛んで行きましたが…と言うよりシールド、武器システムは全滅、そもそも残っているのが俺達の居るブリッジ付近だけ、って、さっきから…言ってたんすけど。」

「…何ですと。」ダマールの答えに目に見えて老け出すシゲック。


「それではシゲック、転送で君達をこちらに収容する。」

「おおお! 流石兄貴! この気持ちを」「ですがその為にはそちらのシールドを降ろさなくてはなりません。」
シゲックの前に金髪のアンちゃんが割り込み、ゴートに告げた。

「その心配はこちらでする。良いから準備しておくんだ。」

「了解!」ダマールは頷くと、後ろのシゲックを置いて通信を切った。と同時に。

ぼがああああん。びばしっ。
「Oh、ガアアアアッ!(ボトッ)」ゼレンゴン船の攻撃が再びエステに命中、パネルから飛び散る火花でゲォーフが殉職。

「エンジンを狙った攻撃はイマイチ効果が出ねえんだよ。」
頭を振るダックス。

「そうか、えっと…任せた。」

「お、おお!」頷くリョーコ。

「あ、あのね。」

「実に合理的な命令ですわね。」感心しているカグヤ。

「…」目で何かを訴えるキラ。

「…よっしゃ!」ずが、ずがああああん。
その時、ダックスの乱射していたフェイザーが命中、ゼレンゴン船の一隻が爆発した。

「…ね?」「…」

どこかへ旅立ちたいかのような表情になっていたキラは、ふとパネルの表示に向き直った。
「司令官、また船が現れたわ! …ポヤッチオ級よ。」

戦場に、サイズが他より遥かに大きい戦艦が、遮蔽を解除して現れた。

「もうシゲック達の船も限界よ。って言うかまだもってるのがかなり納得行かないわ。」

「そうか。シスコより転送室。シゲック達受け入れの準備をしてくれ。ドクター・ベシア、救援の準備を。」

「「了解。」」

「保安班も転送室へ行くように。全員に検便を行う。」

「検べ…検、査?」エリナが聞き返す。

「…あらゆる可能性を考慮したいからな。」

「司令官、シールドを下げてシゲックの野郎共を転送するのに2分はかかるぜ。」

「…装甲が持ちこたえるかしら?」

「「「…」」」

「いや、考えがある。」と言うと同時に何かスイッチを押すダックス。

「「だから勝手に押すなっ!」」

ずどーん。ずどーん。
エステの両側にある発射口から、巨大ホンコンフラワーが連続して打ち出された。

「「綺麗だ/ね…」」

「これでしばらく奴等はひるむはずだぜ。」

「(…だからどうしてこんな発射装置がエステバリスに…)」

「…し、司令官、転送よ!」

「あ、ああ、そうだ、シールド下げろ、転送開始!」

ぴぎゅん、ぴぎゅん。ずがあああん。
「「「「くううっ」」」」
ゼレンゴン船の猛攻撃を受け、震動に揺れるエステ。

「反撃、攻撃パターン、リョウリョウ・乙! くうらあああああ」

「…りょおりょお?」呟くエリナ。

「転送室、まだ転送は終わらないのか?」

「後一分はかかります!」

「それまで装甲がもつか…」ずがあああん。

「後部の装甲が破損!」叫ぶキラ。

ずが、ずがあああん。
「くっ…送有袋類口も破損だっ!」

ぴろりろりん。
「転送室よりシスコ兄貴、全員収容完了したっすよ!」
シゲックの声で通信が入る。


ほっと息をつくシスコ。
「よし、トゥルール、遮蔽装置起動だ。」

「…え? もう壊れてますわよ?」

「…何だって。」

「さっき言いましたわ。聞かなかったのはそちらの落ち度でなくって。(ムシャムシャ)」
素知らぬ顔でラードフォンデュをつまんでいるカグヤ。どうやら扱いの悪さにふてくされているらしい。

「…。そうか。それでは帰りはハードだな。ナデシコへコース設定、最大ワープ!」

「了解っ!」
ダックスの操作で旋回するエステバリス。後方では、ホンコンフラワーの花園の中でキース・リチャーズ(の残存部分)が大爆発を起こしていた。


医療室では負傷したロン毛達の中で、ドクターが忙しく動いていた。
「ああ、ガル、ちょっと待ってくれるかな。」

「…何っすか、ドクター?」
医療室から出て行こうとしていたシゲックは振り返った。

「君にもこれをやって貰わないとね。」自動便採取器(略称クッチェ)を取り出すドクター。


「な、何なんすかあの装置は!」
ブリッジにやってきたシゲックはシスコに声を上げた。

嬉しそうに肩を上げるエリナ。
「…ふふ。おごりなさいよ。ゴート君。」

「うっさいわボケ。」

「…な、何の話っすか?」

ゴートは鼻を鳴らした。
「…今、キラ少佐と2人で賭けをしていたんだ。ここに来た君が最初に感謝の言葉を口にするか、不満を口にするかをな。」

「ねえ、不満に決まってるわよねえ、あんな検査法!」意気込むエリナ。

「あの検査法の何がいけないんだ? 何回かやってくると、段々こう…癖になるぞ。」

シゲックは少し困った表情でうつむいた。
「あ、兄貴がそう言うなら…イイのかもしれない…」

「そうか!」「あ、あんたらオカしヨ!」

シゲックはブリッジの一角を見やった。
「おや。…ところで、船のブリッジにゼレンゴンの方がいるようっすけど、大丈夫なんっすかねえ。」

「ゲォーフ少佐は連邦士官だ。問題は無い。」

「ぐすっ。ぐう、ぐすっ。すんすん…」
ゲォーフ(生還)は涙を拭いながら、自分の飛ばした血やら尿やらを雑巾で拭いていた。

「……まあ、さほどはな。」「はあ。」


セイヤは頬をかきながら、カウンターに座った。
「あんかけサンゴを一皿頼むわ。」

どんっ。
「はい只今!」瞬間的な早業で皿を差し出すジュン。

ジュンの隣のプワークは、あくびをしながらガラックに言う。
「今日のこれは、店のおごりです。」

がじ、がじ。
「ああ? …どうしたんだ、お前さんにしちゃ、偉く気前が良いじゃねえかよ。」

「良くもなりますよ。まだ倉庫にサンゴは2017トン。保存しやすいから、ついつい大目に仕入れてしまって…ですが、アオバシアが攻撃されれば、あれをお食べになるのはあなただけだ。」

「ほう。お前さんにまで影響があるとは思わなかったな。」

プワークは首を振った。
「ああ、やっぱりいとこの言う通り、私も素直に映像作家になれば良かった。」

「映像作家?」

「せくしぃな映像を作って売る職業ですよ。まあ、イブジョー風に言うなら「神聖」なね。」

「ああ、大体分かるぜ。」頷くガラック。

「あれは儲かるらしいですからネェ…実際、どんな事があってもあれだけは売れる。中華が食べられなくなってもせくしぃは皆さん、買われ続けますから…」心なしか髭も下がりぎみのプワーク。
「しかし、私はそういった直接的なせくしぃよりは、皆さんが食事等をする時に見せる間接的、暗示的なせくしぃによりひかれた。皆さんが麺物を食べた後に汗を拭うしぐさ、組み替える足、お分かりになりますか? そしてその時私の提供させて頂いた食物がその方の体内でうごめいている! 御想像になって下さい、このせくしぃさの方が裸の映像等より余程刺激的ですなあ。」

「いまいち良く分からんが、ま、お前さんの性には合ってるんだろうな。」

「ええ。でもその結果、うちのいとこは今や「だんご一人っ子」から「だんご653兄弟」までの全ての著作権を連番で手に入れる程の大成功、一方私はここで赤字続きですからネェ…」

「お前さんの仕事の成功を、祈るぜ。」微笑むガラック。

「有り難うございます。…そうだ、一度あれをお試しになったらどうです? ジュン君、ワン・ウドン・プリーズ!」

「了解! お待たせしましたっ」
どんっ。
2秒で目の前に持ってこられた皿を見て、セイヤは眉をひそめた。

「何だ、これは?」

「地球の料理ですよ。どうぞ、遠慮なさならずに御食べになって下さい。」

「…」紫色の汁に浮かぶ黒光りする楊枝のような物体を、箸で恐る恐るつまむガラック。
しゅわあああ。
「スープは炭酸か?」

ガラックはその麺を口にすると、途端に顔をしかめ、胸を押さえてむせだした。
「げほ、げほ。何だこりゃ。おい、げほ、これ食い物なのか? 随分な味じゃねえか。」

「ええ、そうでしょう。」
プワークは頷いた。

「酸味と甘味のバランスがおかしく、クセがキツすぎる。…が、どこか無邪気だ。」

ガラックは箸を置き、目を上げた。
「まるで連邦みてえだな。」

「ええ。ところがこのうどんという料理、慣れると段々癖になるようでして…」

「そりゃあ、侮れねえな。」

「ええ、全くですネェ。」

「…プワーク。連邦は、俺達を救えると思うかい?」

「そう祈らさせて頂くより他、ありませんな。」プワークは苦笑した。


ぐー。ぐー。ぐー。
モニタの向こうのシスコが、ガンガン音を立ててアピールしている。
「こら、起きろ、チーフ! 早く起きるんだ!」

「チーフはさっきまで忙しく働いていて、今日分のエネルギーは全て使い果たしてしまったようです。」
泥のように眠るチーフの横、ナデシコ司令室のモニタの前に、長髪の男が顔を出した。

「ああそうか、エディングトン少佐。」頷くシスコ。

ゲンイチロウはコンソールの表示に顔を曇らせた。
「司令官、そちらの後方に…ゼレンゴン船のワープサインが2隻分確認されますが。」

「その通りだ。そちらへは5分で到着するが、新システムの準備は出来ているか?」

「さ、さあ…全てチーフがやりましたから、今チーフが寝ているのが全て仕事が終わったからなのか、途中で投げたのかは何とも…」

「…。もう時間が無い。ああ、来るまでにチーフを起こしておいてくれ。…出来たらな。」

「ど、努力します。」


ぴー。ぴー。ぴー。
「こ、今度は何なんです?」

「多分こりゃ、ゼレンゴンの襲撃だな。あばよ。」
ガラックはプワークのバーを出る。他の客もあたふたとバーから出て行きだした。

「全く…最初はアオバシア、次がドミネソンで今度はゼレンゴンですか…ここもあまり商売に向いた場所とは、言い難いですなあ…」


ナデシコ司令室にシスコ達がやってきた。
「状況報告。」

「ゼレンゴン船2隻はナデシコから離れ、こちらの方角へ向かったようです。」
テーブル上のディスプレイの一点を指すゲンイチロウ。

「君の髪が邪魔で全く見えないが…そうか。」

「どうせ奴等の事っす、宇宙ステーションが相手では勝ち目が無いと思って逃げ出したに決まってるっす!」

「シゲック、ゼレンゴンを甘く見ない方が良いんじゃないかしら。」

「そうだな。エディングトン、今現れたこの反応は何だ?」

「これは…ゼレンゴン船ですね。いや、船というよりは、艦隊です。」
士官達は顔を見合わせた。

「…司令官、ゼレンゴン艦隊は約20隻、ポヤッチオ級も含まれているわ!」

「連邦の艦隊本部に連絡をとった。すぐに援軍を回すそうだ。」
報告するゲォーフ。

「到着はいつ頃になる?」

「到着は、すぐには無理だ。」

「ゼレンゴン船はもうシールドを張り、カンガルー砲も準備しているぜ!」

「…」シスコはモニタの前に立ち、腰のキキを再び甘噛
「あっ」ぽろっ。ごくっ。

「…力を入れすぎてしまった…」
首のちぎれたキキを呆然と見る大佐。

「喉ごしは、イマイチだな。…ナデシコ、戦闘配置!」


プロムナードに民間人の姿は無く、フェイザーライフルを構えた士官達だけが行き来している。

フェイザーを持ったセイヤは、居住区の一角、ドアの前に立つシゲック達の前にやってきた。
「動くな! お前一体、何しにここに来た?」
ダマールがシゲックの前に立ち、ガラックにフェイザーを突きつける。

「いや何、お前さん達が元気にやってるかと思って見に来たんだがな。」

「政治的に何か良からぬ事を考えて来たんじゃないだろうな?」

「そりゃとんでもない、サブロウタ・ダマール君よ。むしろお前さん達の方が、そこまで評議員を必死に守るのが本当にロック魂からなのか疑問だがな。」

「何だと! お前、「ロックよ、静かに流れよ」をもう一度見直せ!」
セイヤの首根っこをつかむサブロウタ。

「まあまあダマール。ガラックさん、ここは充分俺達で守れるっすから、御自分の穴ショップに戻られてはいかがっすか。」

「お前らだけじゃ、心もとねえよ。」
ガラックはフェイザーをゆっくり上げると、シゲック達の横に並び、廊下の方へフェイザーを向けた。

「…言っておくっすけど、ガラックさん、ゼレンゴンを狙って撃つっすよ。標的は間違えないようにしてほしいっすね。」

「ああ、努力するっすよ。」ガラックは首を振った。


司令室のクルー達の手にはフェイザーが配られていた。
「ゲンパチロックから通信が入ってるわ。」

「繋いでくれ。」

「大佐、そちらにアオバシア新政府の評議員達がおりますな。直ちにお引き渡しを。」

「それは出来ません。検便の結果、彼等が可変種でない事ははっきりしています。」

モニタでは、ゲンパチロックの横から、ジブロンが顔を出した。
「もはやそんな事はどうでも構わん。アルファ宇宙域の安全の為には、我々がアオバシアのヒバリーヒルズ連中を支配しておく事が必要なのだ。渡さないと言うなら、力ずくでも奪い取るぞ。」

「連邦と戦争を始める気ですか?」

「戦争の原因は連邦だがな。」
狸が短い眉を上げる。

「歴史がそうは認めないでしょう。それに言っておきますが、このステーションは、この一年間の間ドミネソンに備え着々と防衛準備を整えて来ています。」「ぶう。」

「はっ! 自給自足もままならないステーションに何が出来ると言うのだ。」
豪快に笑う総裁。

「この子豚達はステーションのマスコットです。それはまあ、緊急用には食料でもありますが…」
自分の周囲のカラフルな子豚達を見回すゴート。

「はっ。パイレーツがどんなにデカい態度を見せた所で、所詮パイレーツはパイレーツだな。」

「どうですかね。このパイレーツは、あなた方が思う程弱くはありません。」シスコは(奇跡的に目を覚ました)オブライエンと目配せをする。
「現在も、暴れカンガルー砲5000発があなた方の船に狙いを定めています。嘘だと思うならスキャンしてみる事です。」

「…」モニタの向こうでジブロンがそばの士官に目をやる。頷く士官。

「どうせ嘘言に決まっている。ユーカリウムを投影してカンガルー砲だと思わせているのです!」
ジブロンに進言するゲンパチロック。

「嘘ではありません。」

「じき分かる。ガン・ドレ・ス!」
ジブロンはそう叫ぶと通信を切った。

「…時間切れ、という意味だ。」
シスコの視線にゲォーフが答える。



ぴぎゅん。ぴぎゅぴぎゅぴぎゅん、ぴぎゅん、ぴぎゅぴぎゅぴぎゅぴぎゅん。

ゼレンゴン船団が一斉に動き出し、ナデシコへの総攻撃を開始した。


「暴れカンガルー砲発射準備。」
ナデシコの壁から飛び出し式の発射口が次々と顔を出す。発射口から、グローブを手にはめ軽くジャンプしているカンガルー達の姿が見える。

「発射!」
きえーん、きえーん、きえーん。きえーんきえーん、きえーん、きえーん。

連続して発射されていくカンガルー達。次々にゼレンゴン船に命中し、大爆発を起こしている。

「敵は依然接近中よ。」首を振るエリナ。

「フェイザー発射、ああ、それから花火もだ!」

「了解!」
ぴぎゅううううう、ぴぎゅん、ぴぎゅん。ぴぎゅん、ぴぎゅん。ぼん、ぼん。

「花火が一番効果があるわね…敵艦は8隻が爆破。他数隻にもダメージがあるわ。」

「今の内にジブロンに連絡を入れよう。ダメージが広がる前に戦闘を終わらせたい。」

ゴートの命令に頷き、パネルを操作するトウジ。
「…応答ありまへんで。」
ぴぎゅ、ぴぎゅ、ぴぎゅん。ぴぎゅん。
ずがん、ずがずがあああん。

フェイザーの衝撃で揺れるナデシコ。
「今のが答えか。…引き続き暴れカンガルー砲発射、フェイザー発射!」

ゼレンゴンの船団がナデシコの周囲を飛び回るが、ナデシコ側の予想以上の反撃に彼等も面食らっているようだ。


ゼレンゴン船内で、ゲンパチロックは感心して呟いていた。
「いや、敵ながら天晴れ。彼等はまるでゼレンゴンのような戦いっぷりだ…」

「それならゼレンゴンのように死なせてやるのけ。シールドを破るのけ。」

ジブロンの言葉にゲンパチロックが頷き、部下に命令を出す。
「シールドジェネレーターを集中攻撃だ!」


ぴぎゅん、ぴぎゅん、ぴぎゅん、ぴぎゅん。
ずが、ずがああああん。
ゼレンゴン船団から多数のフェイザーが、ナデシコ中央部にある看板、「冬物処分市」の「物」付近に集中砲火をあびせる。爆発が起きる「物」付近。

「くううっ! 司令官、シールドジェネレーターが2基破壊された!」
ぴぎゅいいいいいいいいん。
ダックスが声を上げると同時に、ステーションの司令室にゼレンゴン兵士達が転送されてきた。


ぴぎゅん、ぴぎゅん。
すぐにフェイザーで応戦するキラ。倒れるゼレンゴン兵士達。

「うううるぁああああああ、どっからでもかかって来いってんだああ! はっ、ふっ!」「「「うわあああああ」」」
約一名の士官は、既にギンガミソードを手に兵士達を切りまくっている。

ぴぎゅいいいいいいいん。ぴぎゅいいいいいいいん。
「「「「「訴えてやるううううっ!」」」」」
次々に倒れるゼレンゴン兵士達の後ろから、更に転送で続々と現れてくるゼレンゴン兵士達。

ぴぎゅ、ぴぎゅん。
「…何やってるの、司令官。」
フェイザーを打ちながら、エリナはゴートの所に走ってきた。彼は何か石位の大きさの物に火を付けようとしている。

「さっきガラックのおもちゃ屋で買ってきた。花火の一種らしいんだが…」ぼっ。しゅっ。
火のついた物体を兵士達の方に投げるシスコ。

しゅっ。むりっ。めりめりめりめりめりめりめりめり…
「「「「おわあああああああ」」」」
その灰色の花火はまたたくまにふくれあがり、高さ幅奥行き各3m位の巨大な物体となって兵士達を飲み込んだ。

「す、凄いな…」

「それほんとにおもちゃなの?」


ぴぎゅいいいいいいん。
プロムナードでもゼレンゴン兵士達が転送で現れ、フェイザーを手に走り回っていた。
「デパガ評議会の奴等はこの下の階だ、下を探せ!」
「「「了解!」」」

ぷすぷすぷす、ぷすっ。
「「「「あ゜、あ゜か゜く゜…」」」」
物陰から出てきたルドーは針状になっている指を元に戻す。その時彼女の背後からゼレンゴン兵士が現れ、無言で彼女にフェイザーの照準を合わせた。

「あれ? あそこにいるの、あれ、みればなっとくに出てる倹約夫婦の奥さんじゃないかあ?」「何っ!」
ぴぎゅん。

「うあああっ」ばたっ。

ルドーは驚いて、倒れた兵士の向こうを見た。
「…ドクター。」

「ま、君に死なれると連邦としても色々不都合もあるからねえ。」

「有り難う。…ドクターってやっぱり、良い人ですね。」

「そう思わせるのも手の内って事。」肩を上げるベシア。


ガラックはいい加減うんざりだ、という表情で頭を振っていた。
「あ゛あ゛あ゛ああ、もうゼレンゴンの奴等、一体何人来れば気がすむってんだよ!」
ぴぎゅん、ぴぎゅん。

「そう言うなら、とっとと自分の店に戻れば良いだろう。」
続々やって来るゼレンゴン兵士達を撃ちながら、サブロウタがセイヤに答える。

「戻りてえとこだけどよ、」ぴぎゅん。
「こいつらがうじゃうじゃ来るから動きが取れねえんだよ!」

「ガラックさんは、こういったのよりは密室で拷問をする方が好きなんでしたっけねえ。」

シゲックに頷くガラック。
「ああそうだ。そっちの方がよっぽど洗練されていて、効率も良い。」ぴぎゅ、ぴぎゅん。

「それが間違いっすよ。人を拷問して何が楽しいっすか。」「「…」」

「は、何か俺の顔に付いてるっすか? 物真似用付けぼくろでも?」

「い、いや…」「い、いいえ…正論です、ガル。」

「でしょう? …おっと」
ぴぎゅ、ぴぎゅぴぎゅん。ぴぎゅん。
彼等の前には死んだゼレンゴンの山が出来ていた。


ぴぎゅいいいいいん。ぴぎゅいいいいいいん。ぴぎゅいいいいいいいん。
「ったく、何人やられりゃ気がすむんだよっ! はっ、はっ」
司令室にも依然兵士が何人も転送されてきている。

ぴぎゅ、ぴぎゅん。ぴぎゅん。ぴぎゅん。
「う、うう、うう…」
もはやジャム切れが近いのか、目が線になり首が据わらなくなりだしているトウジ。

「だ、大丈夫かチーフ?」
「おりゃあああああっ」「うきゅうっ」
トウジの方を見たゲォーフは、その隙にゼレンゴン兵士にギンガミソードで刺されてしまった。

「きゅううううううう…」「しょ、少佐!」(目が覚めた)オブライエンは、血を流し倒れるゲォーフのそばに駆け寄った。
「しょ、少佐に何ちゅう事してくれたんや! …おい、ステファニー!」

「ぶう、ぶう、ぶう。」トウジに青の豚が近づく。
「少佐が、今からお前に乗って突撃する言うてはるさかい、分かったな。」「お、おい!」

「ぶひー!」頷いているらしいステファニー。
「ふごっ。」

「きゅ…お、おい、こら、勝手に乗せるな、おい、あ、あわわわわわ助けふうっ。」
「ふごっ、ふごっ、ふごっ!」
既に失神した(そして流血中の)ゲォーフを乗せ、ステファニーがフェイザーの光線が飛び交う中を元気良く走り回る。

「「「「聞いてないよおおおお」」」」
突撃して来る豚に逃げ惑う兵士達。


「ふっ、はっ、たっ! ふらあああっ、ふっ、はっ!」
ニヤニヤ笑い、少し唾液をたらしながらソードを振り回しているダックス大尉。
ぴぎゅ、ぴぎゅん。
「「のわあああ」」ばた、ばたっ。

「うらあああああ…う、あ、お?」

「その2人で、ここは最後だったみたいね。」フェイザーを下げ、汗を拭いながらキラが微笑んだ。

頷くリョーコ。
「おお、そうか…(はっ)何であたしがこんな血まみれの剣を持ってるんだ?」

「(違う人格なっとったんかい)…司令官。…司令官はどこ?」

「ここだ。」
上から聞こえてきた声に2人を顔を上げた。

「「…」」

「見ての通り、自分でガラック特製花火に呑み込まれてしまった。」灰色の巨大ネリケシ的物体から、上空2mに顔だけ出したゴートが言う。

「「ゴート君…」」「揃えるな。」

キラはターンして、パネルに目をやった。
「司令官がそこを脱出するまでは、私が指揮を執りましょ。チーフ、シールドを復旧させて。ち」

ぐー。ぐー。ぐー。

「…あ、あたしがやっておくぜ。」

「…お願いね。ルドー、そっちの様子はどう?」胸を叩くキラ。

「(ぴぎゅ、ぴぎゅぴぎゅん)今はちょうちょエリアに留まっていますが、(ぴぎゅん)中々際どいですね。(ぷすぷすっ)」
色々な効果音と共にルドーが答える。

「そう。」

ダックスが機器メンテナンス用フロアからはしごを上ってきた。
「バックアップ用シールドを設定したが、長くは持たねえぜ。」

「少佐、ゼレンゴンの第2陣が現在ワープでやって来ているようです。」
エディングトンがコンソールの表示を見ながら報告する。

「(…居たの?)そう。」

「いや…このシメジ粒子は、連邦艦隊だ。」
ダックスが顔を上げた。
「ウエストエンドプラスユキを筆頭に6隻が、後15分で到着する。」

「それなら…そろそろ、ジブロン達も言う事を聞くでしょ。通信を入れてちょうだい。」


画面に再び狸の顔が現れた。メガネが割れているが、本人はまだまだ元気そうだ。
「どうした、シスコ司令官は逃げたか?」

「司令官はちょっと…」
目を右上斜め50度にちら、と向けるキラ。「…」
「あの日なのよ。それよりジブロン、話があるわ。」

「どうだ、降伏する気になったか?」

「ジブロン。こっちは侵入したゼレンゴン兵士達もおさえたし、シールドも復旧させてるのよ。援軍もあなた方より早く着くわ。…良い事、私が知る限り、連邦とアオバシア、両方を同時に敵に回して勝てるほど、ゼレンゴンに国力は無かったはずよ。このままじゃあなた達、昔の私達みたいに国を失う事になるんじゃない?」

「はっ、我々はお前等とは違う! 勝つまで戦い抜くぞ!」

「それがドミネソンの思うつぼなのよ!」声を上げるエリナ。
「あいつらはゼレンゴンとアオバシア、連邦とゼレンゴンを互いに戦わせる事で力を落とさせ、征服しやすくさせようと考えているのよ!」

「抜かせ! 良いか少佐、先程うちの部下が面白いスキャンデータを持って来てくれた。ナデシコの暴れカンガルー砲、確か5000発と言ったな?」

「え、ええ、そうよ。」頷くキラ。

「よくもぬけぬけと! 暴れカンガルー砲は500発のみで、残りは全てカンガルー似のピター・バラカンだと言うではないか!」

「え?」エリナは見回してトウジを探す。
「あ、逃げたわね!」


「よく、立場を考えろ。どっちが本当に降伏を」ぴっ。

「…」
電子音にキラは再びターンして、ダックスに叫んだ。
「だから、勝手に、押すなああああっ!」「…え?」

…ぼよんっ。ぼよんっ。
「「「「おお、おおお。」」」」
画面の向こうのゼレンゴン船クルー達は何かにどよめいているようだ。

「ど、どうしたの、何を発射したのよ?」
リョーコに詰め寄るエリナ。

「あー、「巨大水入りペットボトル発射装置」って書いてあんな。」

「………」

「くっ、こ、こんな恐ろしい兵器を隠し持っていたとは!」驚愕の表情のジブロン。

「ジブロン。アンノス様も言っていただろう、「チ・アキナ・ケバシー・ディーウ・レ・ル」と。」
(意識を取り戻した)ゲォーフが威厳を持って言う。

「むう…」

「ゲォーフ殿の言葉に騙されてはいけませんぞ総裁、状況はこちらが圧倒的に有利」

「…いや、ゲンパチロック、確かに奴の言う通りだ。帝国の平和の為に戦闘を中断するのは、決して不名誉な事ではない。」
今までとはまるで違う雰囲気で、ジブロンが首を振る。

「それでは攻撃を中止しろとおっしゃるのですか!」

「ど、どうするの? あなた方がもっと今のが欲しいって言うんなら、攻撃を再開してあげても構わないわよ?」
やや声の上ずったキラが虚勢を張る。

「…今日の所は、銃を降ろそう。」

「し、しかし!」

「今の恐ろしい兵器はお前も見ただろう! …ピカピカ光って!」

「た、確かに強力そうですが…」口ごもるゲンパチロック。

「全艦に告ぐ、アオバシア領内の船は攻撃を中止、退却せよ! …ドミネソンに横から勝利をさらわれては、元も子も無い。」
ジブロンは振り返り、老獪な笑みを見せた。
「しかし我々は連邦も、許しはせんぞ。肝に銘じておくがいい。…ヘドラ!」通信は切れた。

ダックスがキラに報告する。
「…ゼレンゴンは武器を外しているぜ。」

「ふう…終わったわね。」

「今日の所はな。」
キラはゲォーフの言葉に肩を上げた。


「あ、…私はところで、どうやってここから出るんだ。」

上空の一点を見上げる士官達。
「「ゴート君…」」「良いから。」


司令官日誌、宇宙暦、49011.4。ジブロンはゼロノスに戻り、ゼレンゴン艦隊もイブジョー領域から撤退した。今回の戦いで、ナデシコの士官達の勝負強さ、特に運の強さと一部の士官の打たれ強さには非常に感銘を受けた。ナデシコの修理も進み、基地の生活も通常に戻ってきた。だが、私にはもう一つ残された仕事がある。

ゲォーフは自室で荷物の整理をしていた。自分の黄色い制服をたたんでいるゲォーフ。

ぴーぽご。
「入れ。」

「良いか。」

「司令官。ああ、もちろんだ。」

腰から、結婚式でバンパーに缶を付けたアメ車のごとく、たくさん引きずってきたシスコは、ゲォーフにパッドを手渡した。
「君の除隊の書類を持ってきた。艦隊本部に出す前に一応目を通して貰おうと思ってな。」

「問題無い。」ちら、と見てパッドを置くゲォーフ。

「クリムゾン連合に行くらしいな。」

「ああ。午後に出発の予定だ。」

シスコは腰のララの一つを軽くくるんくるん回しながら言う。
「…私も、辞めようとした時は鳥取でフリーターでもやろうかと思ったものだ。」

「…一緒か?」呟くゲオ。
「何故、あなたは辞めなかったのだ。」

「私は実は艦隊を辞めたいのではなく、仕事中に自分のじょお…妻、を死なせてしまったという苦しみから逃げ出したいだけだった、という事に気づいたからさ。艦隊の制服を脱いでしまえば楽になると思っていたが、そんな簡単にはいかない。一時は忘れられても、痛みはすぐ追いかけて来る。本当にそれを乗り越えるには、正面から向き合うしかないんだ。」

「…しかし、その制服は失った思い出させるメモリーがグラフィティだ。」

「…。時にはそうだ。しかし自分が何者であるかも思い出させてくれる。…例え遠くクリムゾン連合まで逃げたとしても、私は、おおむね連邦の士官だ。」

「私もそうだと言うのか。」

「それは君が考える事だ。」

「私は…」ぽっ
「ああ、そうだな。」片手を胸の所にもっていき、やや上目遣いになっているゲォーフ。

頷くシスコ。
「打たれ強い士官を求めている船はたくさんある。例えばウエストエンドプラスユキの艦長とは友人だから、少佐のポジションが空いているか聞いてもいいが。」

「いや……その必要は無い。」
ゲォーフは顔を上げた。


司令室のターボリフトが上がると、士官達が顔を上げた。
「ああ、紹介しよう。と言ってももう皆知っているとは思うが、ナデシコの新たな戦術士官、ゲォーフ少佐だ。」
シスコが手を上げて紹介する。

「あ、ああ。」

「よろしくね。」「おう、頑張ろうぜ!」「どうも。」「めでたいでんなあ!」
士官達に囲まれるゲォーフ。

「それではゲォーフ、さっそく持ち場についてくれ。」

「承知した。」
歩き出すゲォーフにトウジが話し掛ける。

「赤の制服も似合いまんな。」

「問題無い…が、まだ学ぶべきボケはたくさんある。」

「せやったら、ここにはええ師匠達がいますさかい。」

「ああ、そうだな。…やはり私は坊主頭の男だけは…逆らえん。(ぽっ) ゲォーフじゅんじゅんして来ちゃった。」

「そ、そうでっか。」


「先程シゲックとデパガ評議会のメンバーから連絡があった。彼等は無事アオバシアステージに到着したそうだ。ナデシコの士官へ感謝ソングを今度送ると言っていた。」

「全く、私がアオバシアを助ける事になるだなんてね。」

「大丈夫ですよ少佐。どうせ、手柄は全部シゲックさん達が自分の物にしているでしょうから。」
溜め息をつくエリナに言うルドー。

「艦隊情報部から最優先指定の通信が入った。」リョーコの声に士官達が顔を上げる。
「ゼレンゴンは今回侵略したアオバシア領からの撤退を拒否しているらしいぜ。軍を配備し防衛網を敷いているってよ。」

「あいつら、そこに居座るつもりね。」

「しかしここには、我々がいる。」
シスコがキラに答えた。頷くキラ。


「…なあ、ところであれ、どうするんだ? あの光ってる奴。」
ダックスは目でモニタの方を指した。

ナデシコの目の前に、巨大なペットボトルがぷかぷか浮いているのが見える。
「いい加減船の通行に邪魔ですね。」
肩を上げるルドー。

「…だから、何であんな物の発射装置がナデシコに付いているんだ?」

「そうよ! チーフ、あなたががあんな物を作るのに時間を使うから、暴れカンガルー砲を配備する時間が足りなくなったんじゃないの!」

「え、いや、それはやな…」

「まあまあ皆そう言わない。あれは僕がチーフに頼んで付けて貰ったのさ。」
ドクターがスポットライトを浴びつつやって来た。

「な、何でよ!」
にゃあああああああ。

「「「「「…え?」」」」」
士官達がモニタを見上げると、宇宙空間に浮かぶペットボトルの向こうに巨大な目と口が見える。

なー、にゃああああ。なーご。なー。
「あれは…何だ?」
乾いた声で聞くゴート。

「いやだなあ、僕のペットに決まってるじゃない。品種はアビシニアンだよ。」

「(う、うそーん。)」

「…今までどこに隠してたのよ…」

「この間タケシムケン星で買ってきたんだけどねえ、まあ、少しサイズが大きいから、ナデシコを傷つけられても困るし念の為」
ぴぎゅ、ぴぎゅん。

ふぎゃあああああ!
「ああ、こ、こら、ダックス君、勝手にフェイザーを撃つなっ!」

「「ナイスっ!」」声を揃えるゴートとエリナ。

ふぎゃあ、にゃああ、にゃあああああ!
「「「「「「え?」」」」」」
しゃあっ

ずが、ずがあああああん。
ナデシコは、宇宙猫(アビシニアン)の反撃の一かきで再び大ピンチに陥った。

つづく?


次は出来た時。
 
ver.-1.00 1999-5/18公開
 
感想・質問・誤字情報・ごめんね。・無期懲役。・孝弘。・2種。・笑い事じゃない。・リビア。等はこちらまで!

次回予告

イーストビレッジのゲイバー「ASS」のDJ、三郎太は水曜の夜、大麻を吸う日本人女性を見かける。その女性、ユリカに声をかけ、行きずりの関係を持つ三郎太。彼女にはリストカット癖があるらしい。一方日本料理店で働くアキトは店を追い出される。観光客相手のガイド業で日銭を稼ぐアキト。土曜日、セントラルパークで出会ったアキトとユリカの目を見て、三郎太は「今日も太陽が眩しすぎやがる」と舌打ちした。次回「千秋は三十路」第1話、「いいともの客のはずなのに」。御期待下さい。




後書きコーナー

「くぉらあああああああ!」
「(ビク)は、はい!」
「もうプンプン! 私の書き方が酷すぎますっ! こんなんじゃ、私のファンの皆さんも怒っちゃうんだぞっ!」
「…は、はい…」
「…なんて、な。」
「…」
「フッ。…クス、クスクス」
「……」
「面白かったか?」
「…え、あ、あ、え、はい。面白かったです。とっても。…あ、あのですね。碇司令の演ずるエヴァトレTNGのゲォーフ少佐が、ついにナデシコにやって来た訳なんですが、どうでしたでしょうか?」
「分からない、私、三人目だから…」
「…」
「…クックック、最高、俺、サイコー! 今夜は最高! かっはっはっは」
「……どうされたんですか?」
「何だ? …私達の原作も、漫画以外は全てが終わり、もう随分経つ。その後私達が出た仕事と言えばせいぜい、下らんパズルゲーム程度だ。以前君が受けた私の印象から、既に私が違う人間になっていたとて不思議ではあるまい。」
「はあ、なるほど。」
「君は就職はしたのか。」
「な、あ、は? (何ちゅう唐突な)…いや、あの、色々ありまして…」
「そうか。それでは卒業はしたのか。」
「…あ、いや、その…」
「結婚をしたのか。」
「してません。…確かに、ゲォーフさん、変わられましたね…」
「そうだな。…それに私、脱いでもスゴイんです! …フッ。再び俺サイコー。ゲロマブだな。」
「…」
「今度、私が脱ぐという事実を絡めたギャグだ。専門用語を使うなら、「時事ネタ」。」
「…」
「面白いな。」
「……泣いて良いですか?」
 


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