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404 File Not Profound(旧Encyclopardica Frankena)5周年記念
 

フユツキ・コウゾウ・ピカードが目を開く。

「うふふ…」
彼のボルト締めの顔の周囲を、なまめかしくいくつもの手が撫でまわしている。

彼の周囲には、何人ものシンちゃんが全裸・ハダエプ・猫耳などの姿ででまとわりつき、彼等全員が女の子らしいフェロモンを(おおむね全裸であるにも関わらず)撒き散らしている。

「おお…そうかそうか。ここか? ここがええのんか?」

「ひゃんっ! …も、もう、やめてください!」
フユツキの手に、彼の隣のシンジきゅんが抗議する。だが、頬を赤らめながらのその抗議は弱々しく、本気のものとは思えない。

「おお、そうか? でもうぬが体は嫌とは言ってなかばてーんあぱかばーる。ぬふ、ふふふ…」

「そ、そんなこと…」

「そうか? …それなら、私から手を出すのはやめるとするか。」

「え…そんな…」
フユツキの言葉に、はだけた巫女服姿のシンタソはしゅん、となって顔をうつむかせる。

ピカは笑った。
「お? およよ? 嫌だったんじゃなかったのかね?」

「そ、そんな…その…もう、艦長はいぢわるですっ!」

「はは、悪かったりゅん。それじゃあこっちのしっぽの方を…」

「あ、ああんっ!」
ピカが何かに手を回すと、シンジ・クラッシャーは体をしならせ、叫び声をあげる。

「うり、うりうり。パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンッ!」

「ああん、あん、あんっ、あん、うっ、あん、あ、あ、あああああああああっ!」
体をビクビク、としならせるシソジ。シソジはそれきり、糸が切れたようにぐったりとしている。

「ふむ…やはりこのf/1ゆらぎ効果を取り入れたフェイズ連動式エネマグラに勝るものは無い、か…」
プラスチック製らしい曲がりくねった棒のような物を手に持ちながら、感心したように頷くフユツキ。

「艦長…今度は…僕に…」

「ん? そうかね。それではさっそく…」

「うふ、うふふふふ…」

「ふふ、ふふふふふふ…はははははは…ふふふふふふ…それっ!」

「ああんっ!」

フユツキの周囲のシンジは何人もいる。見渡せば、地平線まで行ってもどこまでもシンジきゅんの裸体だ。その数は数十人、数百人、いやそれどころではなく、数万人は数えられそうなシンちゃん達が、皆全裸でフユツキにかしづいている。
フユツキはそのシンジ達の痴態に頬を緩ませながら、今度は首輪と手錠だけの格好のシンジに新たなエネマグラを



「…はにゃ?」
碇レイぬいぐるみで埋め尽くされている部屋の中で、ピカードは手首を落としつつ起き上がった。夜間に相当していたらしく部屋は非常灯しか明かりがついていない。

「コンピューター、ライト。」
ぴぴ。
手首を拾い、きゅっきゅっとはめながらフユツキが言う。部屋の明かりがついた。フユツキはそのまま壁面のモニタに顔を向ける。

「コンピューター、プチモビクスだ。」
ぴぴ。
画面には、安っぽいCGとケバい女二人、それから良く分からない物体一体が表示された。

「さぁ、今朝も始めよう! 水曜日は首筋から白い神経繊を取り出して、おもむろにプルプル言わせる運動だ!」

「よぉし!」
モニタから流れるナレーションに頷き、自分の首後ろに手をあてるピカ。

そこでふと、ピカは背後に人の気配を感じ取った。
「ん…何だ、シンジ君かね。一体どうしたんだね?」

「あの…艦長、一人で、眠れなくって…」
艦長が振り返ると、そこには大きな枕を抱えながら、身をちぢこませて顔を赤らめているダブダブパジャマのシンちゃんが



「…にぎょ〜?」

ピピ、ピピ、ピピ…

フユツキは目を開いた。
今度こそ夢から覚めたらしいフユツキは、寝転がっていたソファーから起き上がる。デスクから通信を知らせる着信音がうるさい。

「…」
艦隊の制服姿のフユツキは、何度か眠そうにまばたきをしてから、机のモニタのスイッチを押した。

「ULTRAMANCOSMOーーーーーSっ!」(>v<)//

「…」
モニタからの原色パカパカと素っ頓狂な大音響に、眠そうな顔を更にしかめる艦長。

「あら、ピカちゃんいつになくシリアスな表情ね。もしかして…くるみプアーの第二シーズンが待ちきれなくて悩んでいるのかしら?」

「いや、あの…ナチェフ提督、」
ピカードは画面を一面の造花で覆っている(どうやら巨大な衣装の一部らしい)、顔だけ穴から出したオバサンに声をかけようとする。

「今日は漫湖記念日ーっ! 漫湖、漫湖、漫湖、漫湖、漫湖ッ!」

「うっさい! っつーかあんた小学生男子かっ! 狼板の駄スレかっ!」

明後日の方向を向いてひとしきり叫んでいたレミは、ふと素の表情になってフユツキの方を向いた。
「大佐。だってしょうがじゃない。今日は大変なのよ。何故なら記念日だから。漫湖の。」

「…だからですね…」

「倒置法って素敵ね…」
遠くを見ながら、しみじみと呟くレミ。

「今日が記念日の理由? それはいくら大佐でも、教えられない気がしないでもない祖師谷大塚32%だわ…」

「いや、別に聞いていないんですが…」

「いや…もしかしすると俺達は、とんでもない思い違いをしていたのかもしれないっ!」

「…何がです?」

「まあ、カスミンとマンケツに何らかの答えが隠されているという事まではバラしてしまっても構わないわね。うわ、マンケツですって、嫌らしいっ! すけべえだわ!」

「あの、提督…わざわざ連邦の緊急回線を使って伝えたい事は、そんな事だったのですか?」

「ん? ああ、ここまでは季節の挨拶って奴よ。一応私も、連邦士官としてのプライドがあるから。」

「は、はあ…」

壁から顔だけを出しているレミは、フユツキに顔を向けた。
「ピカちゃん。何だかね、連邦で緊急連絡網の通知が来てて。何でも、ディープ・スペース・カキツバタからの報告によると、長距離センサーに」

「いや、分かってます。」
ピカードは深刻な顔で、ナチェフの言葉を遮った。

「シンちゃんですね?」

「…」

「…」

「…い、いや、ペングが来た、ってことらしいんだけど…シンちゃん? 誰それ?」

「…おや?」



 
Evan Trek First Contact娘がメガネをかけた時萌え。激萌え。

Evan Trek First Concoct
ファースト・インパク知


ダンボールハウスをこれでもかと天井にのっけた宇宙船が、星雲を背景に華麗に飛んでいく。「え」の字を描いた無数の大漁旗は、勇ましいと同時に誇らしげだ。

会議室らしき部屋に集まっているクルー達は、首を押さえながら口を開くピカの言葉に、耳を傾けていた。

「今回地球に向かっているペングシップは一隻だけだ。既に周囲の基地を破壊しつつ、一直線に地球に向かっている。」

「それで? ペンギン達が地球に着くまで、後どれ位かかるのかしら?」

「恐らく後4時間50分後らしい。」
爪にマニキュアを塗っているドクターの方を向いて、答える艦長。

「それなら、今すぐ地球は助けが必要って事っすね。まあ、助けるかどうかは置くとしてえ。」

「この船なら、現在の座標からセクター001まで、最大ワープで3時間15分で到着可能よ。」

会議室に洋式の浴槽を持ち込んでいるカウンセラーの隣で、レイタが艦長に言う。

頭を縦笛が何本か貫いている副長が、髭をなでつつ肩を上げた。
「そうか。…まあ、命まで賭けるのはアレですが、一応冷やかしだけは行ってみるとしますか? 確か、落合記念館は地球にあったはずですし…」

「いや、我々はロミュラスカとの国境地帯へと進路をとる。」

一同は艦長の言葉に、意外そうに顔を上げた。

「ロミュラスカぁ?」

「そうだカウンセラー。この事態に乗じて、ロミュラスカの連中がいつ、警備の手薄になった連邦を挑発してくるとも限らない。この重大な危機に備え、我々は国境地帯を万全の体制で警備しなくてはならない。」

「…悪いけど、艦長。ここ3ヶ月、連邦とロミュラスカの間でトラブルらしいトラブルは一切起きていないわ。互いに住み分けは、とうの昔に終わっているもの。…それに、ドミネソンの事もある以上、彼等の行動は今まで以上に慎重よ。そう安易に挑発に出るような事態は考え難いわ。」
眉をあげつつ言うレイタ。

「ふむ…」

所々泡だった状態ながらも、おおむね人の形になっているマコトが息をついた。ただしバイザーは無く、特殊なインプラントを目に装着しているようだ。
「はあ、やっぱりこれだ。艦隊本部は、僕達をいまだにまともな戦力だとは考えていニャいんですにゃん!」
ぴぎゅん。

「ひぎゃっ!」

「あなたからニャン子言葉を聞くとは不愉快ね。ぎりぎり死にかけそうで本当に死ぬ、というレベルでフェイザーを撃ちましょうか。」

「こ、これはだから、半年以上プチットの中に入れられたまま放置された後遺症で…って言うかもう撃ってます…(バタッ)」

「艦長。このUSSエバンゲリオンEは既に1年近く、6代目のエバンゲリオンとして立派にやって来ているのよ。…まあ、私も別に地球なんかどうでも良いけど…艦隊の判断は多少、理解に苦しむところがあるわね。」
燃えかすの隣で、フェイザーをしまいながら言うドクター。

「あ、ああ。…私も本部に、本当にこの命令なのか、確認しなおしたが、決定は変わらなかった。…以上だ。レイタ、さっそくロミュラスカとの国境地帯に進路をとってくれ。」

「…了解。」
怪訝そうなクルー達の中で、レイタは頷いた。


♪か、なう、わきゃない、えぶぃ・でい、えぶぃ・ないと、すうぃー・はー、すいまっせーん、きみがすべ、て、さ…

広めの個室。テーブルには、プーチ(偽アイボ)と生のウニ、そしてタモリ倶楽部手ぬぐいが散乱し、それらがスピーカーから流れる大音響にびりびりと震えている。

窓から宇宙の景色を眺めているピカード。窓に、何本かのリコーダーの影が反射する。ピカードはそれに気付き、振り返った。

「…ウインズですか?」

「フレームだ。あまり息のあっていない多重ボーカルがスリリングで良いだろう?」
リョウジに答えるフユツキ。

「はあ…」

「少なくとも、ヘッズ辺りではこのうらぶれた叙情感は出せんよ。この…今にもプロデューサーに男娼まがいの事をしかねなさそうな叙情感はな。…コンピューター、音楽を止めてくれ。」
ぴぴ。

「ここ4時間の、国境地帯の調査結果です。」
ライカーはパッドを艦長に手渡した。見入る艦長。

「ふむ…1平方メートル辺りのホリケン粒子が0.4ミリグラム。3光年先までのエリア内に、 ED治療を訴えるペレが2人、ダーツの旅を実行中のスタッフが4人…これは、心してかからないといけないな。」
皮肉っぽくそう言うと、ピカードは忌々しげに首を振りながらパッドを机に置いた。

ぷっぽっぷー。

「…ん?」
笛の音に、ピカは眉をあげる。ライカーは息をついた。

「すいません、つい、心の声が…艦長、艦隊は何故俺達に、こんな事をやらせているんですか!」

「良いではないかね。危ない事は他の船に任せて、段ボール船の我々はこうやってゆっくりしていれば。」

苛立たしげに声をあげる副長。
「危険手当をはずんでもらえるから、俺はこの船にいるんです! トロイからの借金がいくらになってると思ってるんですか。…艦隊は、この船が就航してまだ日が浅いから、信頼性に欠けると思っているんですか? それは確かに雨には弱いですし、まだガムテープがしっかりついていない場所も無いとは言いません。ちょくちょくクルーが、段ボールの穴から放り出されていきます。…それでも、この船は艦隊の最新鋭艦である事に変わりはない。この船を行かせないでどうするって言うんですか。」

軽く息をつき、フユツキは頷いた。
「艦隊は…この船と、そのクルーにはおおむね信頼を置いている。」

「それじゃあ…」

「だが、その艦長は違う。」

「…」

「知っての通り、私はオトコハオオカミ365の戦いでモロキュータスとなり、ペングの一員となり連邦を攻撃した。」

「だから? その記憶があればこそ、艦長は対ペング戦の知識には詳しいんじゃ?」

「そうかもしれん。だが、私がペングに近づく事で、その記憶が悪い方に作用し、私がまたペングに取り込まれないとも限らない。少なくとも艦隊はそう思っている。」

「そんな、馬鹿馬鹿しい、」

「あるいは、わざと取り込まれて面白半分に地球を攻撃するかもしれん。…艦隊本部は、私の人格をそう評価しているんだろう。」

憤懣やるかたない表情のリョウジは首を振り、机に手を置いた。
「確かに艦長は、そういう人格です。でも、それはそれで面白いからアリじゃないですか! 所さん的に!!」

「艦隊本部は、そうは思っていない。」

「…そんな、彼等は一体安全保障というものを」

ぴろりろりん。
「かんちょー、まあどうでも良いんっすけどお、ペングが地球についたらしいっすよ、いちお。」

「…」
通信で入ってきたミサトの声に、フユツキとリョウジは視線を交わした。

「分かったカウンセラー、すぐブリッジに向かう。」

「…あ、こら、リンチンチン、浴槽の外に出ちゃ、(ばしゃんっ、がぶ、がぶっ)ああっ、リンチンチン吐きなさい、そこの少尉は食べる物じゃ、違う、甘噛みもしないっ、…ああもう片足食っちゃったんだったらそっちの左足の方も」
ぴっ。

艦長は通信機の音声を切ると、副長と頷きあい、部屋を後にした。


「ホーク中尉。」
ブリッジにやってきた艦長と副長。艦長は前方、レイタの隣に座っている太っちょの男性士官に声をかける。

飴玉を食べていたらしいホークは振り向き、のたのたと声をあげた。
「あぁ、艦長。セクター001からの通信を受信しましたよお。でもぉ、音声と味だけで映像は無いですう。」

「分かった、流してくれ。」

「了解ぃ。」
ホークがパネルに手を触れる。ピカード達は手近な場所にある味覚通信インターフェイスを舌に当てる。

エバンゲリオンEのブリッジ内に、緊迫した様子の音声が流れ出した。
「…被弾。だ、がっ。もうこれ以上蟻融合炉がもちません!」
「USSチョナンカン、応答せよ! 今すぐ全員転送する、クルーは」
「チョナンカン、爆発しました!」

あらゆるの船の混乱した通信が、同時に行き交っている。それと共に爆発音、レーザー音、つんくサウンドとクルー達の悲鳴が混じりあう。

ピカ達は、深刻な表情でその通信を聞き、味わっている。

「…戦闘不能。め、メザシがこちらの方向へ、あ、うあああああ」
「ペングのイソノケフィールドを中和する。USSシナガワショウジとUSSモリサンチュウは指定の座標へ! パオパオチャンネルビームで」
びびっ、ががっ。
「ククククエーッ! クエッ、クエ、クエクエクエッ!」「…我々はペングだ。お前達の技術は我々に吸収され、またお前達は我々に同化される。…抵抗は、無意味だ。」

連邦の通信チャンネルに、ペングのクエクエ声と翻訳音声が流れ出す。

「…モロキュータス…」
「…ん?」
どこからか、声が聞こえる。フユツキは味覚インターフェイスを外し、首をくるくるくると720度回転させて周囲を見回した。

「どうしました艦長?」

「いや…(空耳、だったか…)」
ライカーに答えるピカ。

きゅっ、きゅっ。
自分の首をしっかり締め直した艦長は、ホークの方を見た。
「中尉。セクター001に方向転換。最大ワープで向かい給え。」

「えっ…で、でも…」
飴玉デブは、やや怖気づいた様子で周囲のクルー達を見回す。

艦長は頷きながら周囲に目を向けた。
「君達、私はこれから艦隊本部の指令にそむくつもりだ。異議のある者は、今のうちに申し出てく」「はい」

「早すぎっ!」
トロイに叫ぶピカード。

いつもどおり全裸のミサトは浴槽に肘をつきながら肩をあげる。
「だってぇ。そんな、めんどいじゃないっすかぁ。地球くんだりに何でわざわざぁ?」

「と、いうことで艦長。私達クルーの心は一つよ。地球へ行くわ。面白そうなアトラクションの前では、艦隊の規則なんて、日本版サバイバーにおけるネプチュ−ンの存在並に無意味よ。」

「はぁぁっ? ちょっとレイタ、何思いっきり私スルーしてんのよっ!」

「う、わぁぁっ」
ぐちゃっ。
「艦長、地球へ行くわ。コースセット、最大ワープ。」
レイタは隣の席のホークを近くの壁へぶん投げ、彼の席のパネルを操作する。

「ちょ、ちょっと! 艦長、異議あり! 私は行かないっすよ!」

「もちろん私達は「地球を救い」に向かわないと。そうよね艦長。」

「艦長!」「艦長。」

「な、え、えと…」
迫るミサトとレイタを見比べるフユツキ。

「う、う…ううっ」
じょ、じょーじょーじょー…。

「わ、汚な! ってしかも血尿だし!」
しぶきをあげながら足元に赤い水溜りを作るピカードに、トロイが顔をひきつらせてあとずさる。

「…発進。」
赤い血尿しぶきまみれのレイタは、平然とした様子でパネルに指を触れた。


1隻の巨大なメザシ型の宇宙船の周囲に、それよりはかなり小振りな連邦の宇宙船が何隻も群がって攻撃を加えている。
しかしペングシップの強力なフィールドの前にその効果は薄く、逆にペング側からのビームに連邦船は次々と炎をあげている。デカメザシにとって連邦船は、通行の軽い障害程度のものでしかないようだ。


がががっ! びば、びばしっ

「被害報告!」
火花が飛び散り、既に一部の機材が破壊され、騒然としたブリッジ。狭めのブリッジ中央の艦長席に座る、色黒のハゲ男が叫んでいる。

「遮蔽装置起動不能ですわっ!」

「シールドは12%。バッタ制御システムに異常が発生してまっせ!」
壁際に立っているロミュラスカ人と、その近くの席に座って壁のパネルを操作中のジャムまみれの地球人が艦長に答えた。

「攻撃システムはまだ大丈夫、でももうウォンバットは切らしてるから、使えるのはチャトランだけよ!」

前方の席に座っているエリナにゴートは頷いた。
「そうか。それでは流されチャトラン砲を」

「でも司令官。それでペングに対して与えられるダメージって、ほぼゼロなんじゃないんでしょうか。むしろこうやって悪あがきしている間に、向こうから攻撃され」
ずが、ずがががあああああん。

後方の席に座っているルドーが言い終わる前に、ブリッジに激しい衝撃が伝わる。

「きゃああああんっ!」
頭に乗せたミッフィーを押さえながら叫び声をあげるシスコ。

ぴろりろりん。
「ドクターより司令官。…いやあ、オーナーより司令官、と言った方が良いかなあ、この場合。司令官、この船、もう大分やばいんじゃないの? 僕はもう脱出ポッドに乗っちゃったけど、皆も早くそうした方が良いでしょう。」

「あ、おい、汚ねぇぞドクター!」

顔を上げて叫ぶスバリル人士官の言葉に、通信の声は笑いを返す。
「まぁまぁリョーコちゃん、落ち着く落ち着くぅ。…大丈夫、万が一脱出ポッドまで間に合わなくても、その辺の船が転送収容してくれるよ。…まあ? その転送された先の船がどこまで攻撃に耐えられるかはまた別の問題かもしれないけどねえ。」

「ご、ご、ごわいよおおおおっ!」

「な、うるさい、ゲォーフ泣くな!」
後ろを振り返るダックス。

「じゃそういう事で適当に頑張ってよ皆。僕はお先〜。」

「あ、こら、ドクターっ!」

ずがががああああん。

「おわっ!」
ビュースクリーン目前の巨大メザシからビームが発射されてくる。震動の中、自分の髪をおさえるリョーコ。

「きゃあああああっ、いや、いや、いやあああああああああああああ」
「ごごごごわいごわごわぼぼぼぼぼぐまだじにだくなああああああ」
ぷすぷすっ。

「か゜…」「あ゜…はく…」

抱き合いながら叫んでいたゴートとゲーフの頭部を、一本の大きな針が一直線に串刺しした。

「静かにしてもらえると助かります。お二人とも。」
右手人差し指を金属化させつつ言うルドー。

前方の席のダックスは、パネルの表示に目を向けた。
「おい、中佐、これを見てくれ! 新しい連邦の船が来ているぞ。」

頷くエリナ。
「え? ええ、そうね。シェキドル級。…エバンゲリオンだわ。」

顔を上げる二人。
ビュースクリーンには、ペングシップの攻撃を交わしつつ颯爽と現われた巨大段ボール船の姿があった。


「USSエステバリスの乗員は、全員転送完了しましたぁ。」
報告するデブ。

「そうか中尉。」

エバンゲリオン、ブリッジのドアが開く。白衣姿のリツコが、タバコをふかしながら歩み出てきた。
「艦長、転送されてきた患者の中で一名、うるさすぎて処置の施しようもないのがいるのよ。そっちで引き取ってもらえると助かるんだけど。」

「何?」
振り向くフユツキ。ドクターが一歩横に動く。

彼女の後ろから現われたゲォーフが、涙と唾液を輝かせながら一目散にこちらに飛び掛ってきた。

「か、艦長しゃあああああああああああんっ!」
「だああああああっ」
がしゃがしゃがしゃんっ。

「あ、ああっ、艦長しゃんがばらばらにっ!」

「久し鰤タソじゃないかゲォーフ、元気でやっていたか?」

艦長の残骸を乗り越えつつ、ライカーが笑顔を見せてゲォーフの肩を叩く。

「え、あの…艦長が…」

「大丈夫よ、ちゃんと掃除しておくわ。…ラヴェル中尉が。」

「え゛、私がですかっ!」
レイタの言葉に、ブリッジ後方の壁際にいたマリエの額に縦線が入る。

「ゲォーフ、エステバリスは面白い船だな。小さいが、バカギミック満載だ。特にあそこに浮かんでる、ペットボトルとか…」

リョウジに頷くゲォーフ。
「あ…ああ。そうだな。…ん? いや、待ってくれ副長、ペットボトルに関しては」



「ところでゲォーフ、エバンゲリオンは今戦術士官が不足しているんだ。怪我の具合がそう悪くないようだったら、手助けしてもらえると助かるんだが…」

…ぷるぷるぷる
「け、か、か…け、か、けけがのぐあいはだいじょうぶだ。こけこここわくなんてないぞ。かかかんちょうのたたためならな、な、な。」

「…そ、そうか。」
目の焦点があっていないゲォーフを前に、やや笑顔の引きつるライカー。

副長は苦笑しつつ、口を開く。
「足漕ぎ式じゃない宇宙船の操縦法、ちゃんと覚えてるか?」

「…」
無言で副長を見るゲォーフ。

「…冗談だよ。」
リョウジは手を軽く振った。

「……多分、4割弱は覚えていると思うが…」

「…いや、冗談だぞ? っていうかその数字の微妙さ加減は何なんだ。」


「こちらはUSSエバンゲリオンのピカードだ。今から私が攻撃の指揮を取っちゃっても、いいかなー? いいともー!」

「って復活早すぎです!」
知らない内にブリッジ中央に立って通信を始めていたフユツキに、叫ぶリョウジ。

「輪っ。…小さな輪、大きなバーツッ! 水、ザバーッ!」
艦長は自分の両腕でバツ印を作りながら、ひとしきり「神様」の顔真似をやっている。

「「…」」「…うむ。」

何かに満足したらしいピカードはシリアス顔に戻り、近くの席のパネルに手を触れた。

「艦隊の全船に告ぐ。ペングシップの、この部分に一斉攻撃だ。こちらの合図で始める。」

「でも、艦長。その部分はペングシップの重要な機能を司る部位では無いと推測されているのだけど。」

「良いんだレイタ。私を信じろ。」

「…」
ピカの言葉に、レイタは眉をあげつつ前方に向き直った。

「攻撃開始しちゃっても……いいとも!」
ピカが両腕で大きな輪を作った。


シェキドル級、オハガール級、イジリー級、アヤパン級、レモンエンジェルズ級、ワンギャル級等、連邦の誇る最新鋭の宇宙船が集結し、一斉にカンガルーやウォンバットをペングシップのある一点に発射し始めた。

どがが、どががが…。

見る見る内に、その一点から火花が飛び散りだし、火炎性の爆発がその場所から連鎖的に広がっていく。

ずがががが、ぼが、ずがががが…。

急旋回してペングシップから離れていく連邦船たち。

ぼががが、ぼがが、どががががああああああああん。

ペングシップはバラバラに空中分解し、マグマのような爆発と共に破片となって360度に散り散りに吹き飛んでいく。


「…ふう。これで落合記念館の安全は守られましたね。」
ほっと息をつく副長。

「いやちょっと待て副長。レイタ、あの飛行物体は何だ?」

ビュワーには、崩壊したペングシップの中から飛び出した一筋の細長い物体が表示されている。その様子は、まるでメザシから排出された糞のようだ。

「…ペングシップ内部から排出された小型のペングシップ。連邦では同タイプをペングシットと呼んでいるわ。現在地球に向かい進行中。」

「後を追い給え。」

「了解。」
パネルを操作するレイタ。

ビューワーに映っているデカメザシのメカウンコは、まっすぐ地球の大気圏へ向かいつつ、その周囲にホカホカ風の湯気らしきものを立て始めた。

「…ペングシットの周囲にリカコ粒子を検知。艦長、ペングは時間を移動する気よ。」

ぽっぽー。
「タイムトラベルか!」
レイタの言葉に、縦笛が音をたてる。

「ラヴェル中尉!」

「は、はい!」
艦長はふいに後ろを向く。背筋を伸ばすマリエ。

「「タイム」、と言い給え。」
厳しい表情のフユツキ。

「は…は?」

「これがホントの、タイムと」
「レイタ、そのままペングを追え。俺達も時間の流れに突っ込むぞ。」

「了解。」
ライカーに頷き、レイタはパネルを押す。


もわもわとした湯気を立てつつ地球へ突き進んでいくメカウンコ。それを追い、同じく湯気に包まれながらエバンゲリオンが続いていく。濃い湯気の中を直進しながら、やがてウンコはその中に立ち消える。そのすぐ後を追ってきたエバンゲリオンも、まるで穴に入ったかのようにその場から姿を消した。


ガタガタガタガタ…。
「この揺れは…何だ?」
やや小刻みにブリッジが揺れている。レイタに聞くライカー。

「時間の流れの中に入ったことによる一時的な震動よ。この流れを抜けたところで納まるはず。」

「そうか。かんちょ…艦長?」

「…」

「…」

「あー、何か自分の言った事の詰まらなさに固まっちゃったみたい。まぁ、ほっときゃ自然解凍するっしょ。」

「そうなのか?」

目の前の氷像から、視線を全裸士官の方に移す副長。

ミサトは目を前方に向けた。
「それよりライカー、あの地球は…一体何?」

「ん?」

リョウジがビュースクリーンの方に目を向ける。

湯気の向こう、前方にあるはずの星は真っ黒で、大陸も海も全て黒く染まっている。人工物らしき明かりがあるので無人ではないようだが、その様子は本来の地球の景色とはまるで異なる異様なものだ。

「レイタ…生命反応はあるか?」

「人口80億人。種族はほぼ地球人…だけど、ペングも若干いるわ。」

「そうか…」

レイタが眉を寄せながら報告を続ける。
「それより不思議なのは…どうやら、全人口の99%が男性のようよ。ここから詳細なスキャンは出来ないけど…」

「「…」」
視線を合わせるライタとリョウジ。

「あのぅ、すいませぇん。地球から何か、通信が入っているんですけどお…」

「…ああ、分かったホーク、それじゃあ音声だけ流してくれるか。」

「了解。」

ホークが頷く。ブリッジに、音声通信が流れだす。
「クク、ククク、クックックッ…」

「何だ、この笑い声は…」
「…」
目を細める副長。レイタは、何かを考え込んでいるような表情だ。

「ククク…アッハッハッ!…こりゃ、とんだ道化だな! この蛆虫どもっ! おい、そこの船! お前達がここに近寄るつもりなら、我が漆黒の狂惑星政府はホスト料として一億クレジットを要求する!」

「い、いちおくぅ!?」

「はっ。それくらい、この星に停泊出来る名誉を考えれば安いもんだろう? 神の力を手に入れた、我が漆黒の狂惑星にな。」

「「「…」」」
クルー達は乾いた表情でお互いを見合う。

「従えないと言うなら…」

「…」
ライカーは親指を横に向けて合図する。頷き、通信を切るホーク。

笛をへなへなとしならせつつ、リョウジは息をついた。
「さて…一体何が起きたんだ、地球に。」

「具体的な変化の詳細はまだ分からないけれど、原因の推測は容易だわ。」

レイタの言葉に、後ろでコンソールに寄りかかりながらタバコをふかしていたドクターがあくびまじりに頷く。
「そうね。ペンギン達が過去に行って、何か地球の歴史を変えたんでしょう。」

「…にしても、どうしてあたしらは元のまんまなのよ?」

「現在この船を包んでいるリカコ粒子のお陰で、歴史の変化の影響を受けないですんだものと推測されるわ。」

ミサトは良く分かっていない表情で、レイタの言葉に首を傾げる。
「つまりリカコ粒子に包まれている限り、時代に取り残される、って事?」

「何にしろ、これもペングの攻撃の一貫である事は間違いないだろ。俺達もこのままペングを追って、彼等が過去でやった事を阻止しないと。レイタ、このまま時空の流れに乗って」
「はう・どぅゆ・どぅ。ぜ・ん・し・ん、いかぁが?♪」

「…」
笛から湯気を立て、リョウジはフユツキを睨む。

「…了解。」
やや不快そうな表情でレイタはタッチパネルを押した。


「きゃっはははははあ。」
茜色のセミショートの髪の地球人女性が、楽しげな笑い声を上げている。

周囲は木々があり、野外のようだ。時間は夕方か浅い夜。すぐ近くに建物があり、そこから明かりがもれている。建物の看板には、「ビッグエコー 西モンタナ店」と書かれている。

そこから歩いて出てきたらしいその女性は、隣に立っている地球人男性にしなだれかかった。その男性はすらっとしていて、黒い短髪で清潔な感じのする容貌だ。

「うふーん。楽しかったね、スローンー。」

「何でそんなに酔っ払ってるんだよ…」
呆れた様子で女性に声を返す男性。

「なあ、失礼なあ。私、お酒なんか全然飲んでないよ。飲んだのはアイスのラード茶だけだもん。後はずっと、健康的に歌っていたのでしたあ。」

「だから、何でそれで酔っ払えるのか、って…」

「スローンー。」

「何だよ、もう、ラード臭いなぁ。」

「モー娘って、何で新メンバーをとる時に必ずブサイクを混ぜるのかな? つまり新が」「だあっ、そういう事言わない。…ほら、しっかり自分でちゃんと立つ!」

「…仁絵が」

「それは違うだろ! 漢字の読みも違うし、っていうかそれも言っちゃダメ!」

「じゃあ、言って良いのは小川だけ?」

「基準が分からないよ!」

「ねー。何で平家は首切られるのに未だに稲葉は残ってるんだろう…ああいう突っ込み所を、敢えて残しているのかな?」

「だから、そんな話を振られても僕には全然分からないから…」

「メーロン記念日♪しーばった以外は全員ドブ」「だーっ、がーっ、もうやめろって! 勝手に変な歌も作らない! …だから飲みすぎるなって、僕はあれほど言ったじゃないか。」

「うん、ほんとに不思議だよねスローン。何で、「掃除が出来ない女達」、なんていう全然どうでもいい話題でニュースの特集に出来ちゃったりするんだろ?」

「そんな話、今の今までしてなかったよ…」

「でもさあスローン、自転車って、鍵を壊して盗んだバイクで走り出す場合は犯罪になるらしいよ。窓ガラスを叩いて回るから。くるくるって。それって泣けるよねー。」

「ええと…何をどう突っ込めば良いのか…」
ため息をつくスローン。

「…」
彼はふと、夜空を見上げた。

「どうしたの?」

「あ、ん…コクレーン、何なんだろ、あれ…」

スローンが空の一点を指差す。同じ場所を見上げる女性。

「えっと…」
空に光の点が見える。

コクレーンは目を瞬かせ、口を開く。彼女は素面の時なら、なかなか聡明そうな顔つきだ。
「あそこだと…確か、「当たり屋」座じゃなかったっけ。ちょうどあの星が、ボンネットにぶつかった腰の部分を…」

その光は流れ星のように動いている。というより、どうやらこちらに近づいてきているようだ。

「…あら?」

「コ、コクレーン、これって、もしかして」

きゅううううううううううううううううううううううんずががああああああああああああん!!

直径数メートルの、大きな魚の日干しらしき物体が落下し、どこか近くの地表に激突する。それと同時にそこで爆発がおき、周囲の建物の破片が飛び散った。

「いや、何この臭い? うわ、クサヤ臭ーい…」

「そんな事言ってる場合じゃないよコクレーン! 早く逃げないと!」

周囲の建物から、慌てふためいた様子でわらわらと人々が出てくる。

ずがああん、ずがあああああああん!
「きゃあっ!」「くっ」

砲弾は二発、三発と発射され、周囲の建物を破壊していく。震動によろける二人。

「…それにしても、今頃どこから? もうロリエ・フィットガード派からの攻撃は無いと思ってたけど…」
呟くコクレーン。

ずががががあああああああん。

「ひゃっ」

「コクレーン、早く逃げよう!」

「う、うん。」
頷くコクレーン。
「って、何でそっちに行くの?」

林の方向に走りかけたスローンを見て、コクレーンは顔を上げた。振り返るスローン。

「何でって、ウオッスが無事か見ておかないと!」

「…別に良いじゃん、あんなボロ船…」
林へ走っていくスローンを見届けながら、まだ酔いの抜けていない様子のコクレーンはふらふらと首を振った。


ガタガタ…ガタ。
「時空の流れを抜け出したわ。」
報告するレイタ。

「艦長。」

ピカはライカーに頷く。
「うむ。」

ビュースクリーンには、ペングシットから地球へ向けて何度も攻撃が加えられている様子が映し出されている。
「レイタ、暴れマコト砲、発射だ。」

「了解。」


「ん…あれ、え、えっ!?」
機関室にいるラ=フォージが、急にどこかへ転送されていく。


「え、え、ええええええっ」
宇宙空間に転送されたマコト。マコトは体を散り散りにしながら、物凄い加速度でペングシットへ一直線に突っ込んでいく。
「ぎゅええええええええええええっぎゅぷっ。」

ぼが、ぼがぼが、ぼがああああああああああん。
ペングシットは中央から火花をあげ、今度こそ粉々に爆発した。


「…ふう。」
息をつく艦長。

「これでよし、と。まあマコト君の残骸は気が向いたら回収しておくとして…レイタ、地球の被害の方はどうなってる?」

副長の言葉に、レイタはパネルを操作する。
「北米地区のモンタナ州、シンカワサキ地区に、攻撃は集中していたようよ。」

「シンカワサキ…どこかで、聞き覚えがあったような…」

ブリッジ後部でパネルの上に腰掛けてタバコを吸っていたドクターは、ふと何かに気付いた様子で、レイタに顔を向けた。
「レイタ。今日の、正確な日付は何日?」

ぴっ、ぴっぴっ。

「西暦2063年4月6日。エチオピア暦なら、2055年。檀君暦で4396年、江頭2:50暦で」

「つまり…」

「…ええ、そうよ。コクレーン博士の、歴史的なワープ飛行の前日だわ。」
レイタはドクターに頷く。

ぴっぽっぷー。
「コクレーン博士…あの、地球人として初めてワープ飛行を成し遂げた?」

「ええ。」
副長に頷くレイタ。ピカードは口を開ける。

「そうだ、思い出したぞ。彼女の宇宙船の基地は、確かシンカワサキにあったはずだ。」

「ペング達は、博士のワープ飛行を妨害しようとしていたのか…」

「それだけではないわ。彼女のワープ飛行を見て、そこを通りがかったヴァルカスカ人は、地球人と初めて公式に接触をする。これが無いと、地球人は外の世界の生命体と接触する機会を失う事になるわ。」

顎に手を当てるライカー。
「それこそがペングのタイムトラベルの目的か。レイタ、シンカワサキの被害の詳細は分かるか。」

「長距離伝書鳩光線装置が故障しているので、これ以上の事は分からないわ。」

フユツキが歩き出しながら言う。
「それでは降りて調べるとしよう。レイタ、ドクター、一緒に来てくれ。」

「了解。」「ふぅ…(地上に、何か面白そうな実験材料でもあるかしらね…)」
3人はターボリフトに乗り込んで、ブリッジから姿を消した。


海岸の崖の上に、ボロい倉庫のような建物が建っている。建物の内部は意外に広々としていて、吹き抜けのような空間を、鉄骨の通路、はしごが何層も行き交っていた。

「基地内は死傷者多数。でも、コクレーン博士が見つからないわ。」
基地内にある、地下湖のような施設のコンクリート護岸を歩きながら、レイタがフユツキに言う。

「それは困ったな。歴史の上では、明日の午後には、彼女はこの宇宙船、ウオッスで、地球人初のワープ飛行をしなくてはならないのに。もし死んだとなると、地球人の未来は暗くなってしまうな。」

「ええ。」
頷くレイタ。

地下の水面に目を向けながら、レイタは報告を続ける。
「ウオッスの方は、攻撃で多少のダメージはあるものの、修理をすれば何とか利用は可能よ。」

「そうか。」

「ええ。それに最悪、ラ=フォージ少佐を粉砕して、ペースト状にしたもので船を包み込めば、恐らく一種の防御シールドとなって故障船でも飛ばせられるわ。」

「ああ、それはそうだな。」

「う、動くな!」

「「…」」
頭上から聞こえてきた声に、二人は顔を上げた。


吹き抜けの空間で、4、5メートル程度上の階層の通路に、地球人男性と思われる人物がこちらに銃を向けて立っている。

「お、お前達は何者だ!」

「私かね? 私は怪しい者じゃない。いやむしろ、全宇宙のビューティーを具現化した存在としてそのやまだかつてないトンチキ美少女っぷりを」

「だ、黙れ! お前の話なんか信じない! コクレーンの船を壊そうとする奴は、僕は誰でも許さないぞ!」

「いや、船を壊しに来た訳じゃない。攻撃してきた奴等と、私達は別人だ。ああ、それはもう、どこぞの三流魔法使い(絨毯被爆笑)と、どこぞの「第三の目チャクラが開ける」とかギャグでなく言ってる人並に別人だ!」

「艦長、その例では両者に大差が無いわ。」

「黙れと言ったろう! 良いか、二人とも、そこを動くな! 両手を上げて、そのままじっとしているんだ、そうでないと撃つぞ!」

「…」
両手を上げてみせるフユツキ。

「…艦長、ここは、私に任せてもらって良いかしら。」

「ん、ああ…」

頷くフユツキ。レイタはしばし、まばたきをしてから、おもむろに空気の椅子にこしかけるようなポーズをとった。
「オザケンモード、始動。」
レイタが呟く。

ぶび、ぶびぶび、ぶびびびびびびびびびびびびっ!

「う、うわあああああっ!」
スローンは恐怖で叫び声をあげた。

レイタの腰から、茶色の気体が大量に噴出される。人間ロケット状態で、レイタはスローンのいる場所へ一直線に飛んでいく。

「ごほ、ごほごほっ。くさ、何か化学合成された臭いが、うっ、ごほっ、ごほっ、」
ガスにむせているピカード。

ぶびびびびびびびびびびびびびび、ぶびっ。…しゅたっ。
「オザケンモード停止。」

「ひ、ひいいっ」

自分の放った茶色い煙に包まれつつ、レイタはスローンのいる階層まで上昇、そこで綺麗に着地して、そのまま平然と歩き出した。

「く、くく来るなっ!」
腕を震えさせながら、スローンは声を上げる。
「それ以上こっちに来ると、本当に撃つぞ!」

「…こんにちは。」
レイタは構わず、スローンに近づく。

「うう、うあ、ああああ」
ずきゅーん。ずきゅ、ずきゅずきゅずきゅずきゅーん。

スローンはレイタを狙撃した。

「…」
自分の体に当たり、そのまま跳ね返る弾丸をレイタはぬぼーっと見ている。

「…え?」

「…」
レイタは気にしていない様子で、スローンのほうに目を向けた。

しゅうううううううううううん…。

「…え、え、え、ええええええええっ!?」

そしてレイタの両目がひも付きロケットパンチの要領で発射され、スローンの体に巻きついた。

しゅるるるるるるるるん…。
「うわあああああああ、あー↑あー→あー↓あー↓あああああああー↑んがっ。」
掃除機の電源コードのように巻き取られていくレイタの目。スローンはコードに引きずられ、そのままレイタの胴体に衝突する。

しゅるるるる…。
「…改めて、こんにちは。あなた、誰?」
自分の両目を入れなおしつつ、レイタはスローンに再び問い掛ける。

「きゅううう…」

「…」
目が戻ったレイタは、目の前のスローンの状態に眉をひそめる。

「大丈夫?」

「…きゅううう…ぶくぶくぶく…」

吹き抜けに振り返ったレイは、階下に声を上げた。
「…艦長、この男性には医療処置が必要だわ!」



「化学合成された一種の毒ガスにやられたようね。原因に心当たりはある?」
スローンの場所にやってきたドクターは、気を失った状態の彼を壁によりかからせつつ、メディカルパッドの表示を見ている。

「ああ、それなら…」「無いわ。」

「「…」」

「レイタがさっき」「理由は不明よ。」

「「…」」

「…毒ガスなら」「恐らく、基地の攻撃で何らかの有害物質が漏れているものと推測されるわ。そうよね艦長。」

「そ…そ、そ、そうだったかも、な…」

「そう…それなら、私達もワクチンの摂取が必要ね。彼だけでなく。」
レイタの言葉に頷きつつ、ドクターはハイポスプレーをスローンの首筋に当てている。

「ああ…そうだな。そうだろうな。多分。後で受けておくとしよう。」
乾いた声で頷くピカ。

「それで、この患者は、医療室での治療が必要ね。」

「ん。ドクター、」

リツコは面倒臭げに手を振った。
「分かってる。「きみとぼくは、漫画だよ。」っていう艦隊の誓いなら知ってるわ。手術の後は、私の完璧なマッドロボトミー手術で彼の記憶を消去してみせるわよ。」

「そ、そ、そうスか…」

リツコは胸の通信機を叩く。
「ドクター・クラッシャーよりエバンゲリオン。直接、治療室へ2名を転送。」
ぴぎゅいいいいいいいいいいん…。

ドクターとスローンが、転送されてその場から消えた。


「…ふむ。」
フユツキは自分の胸を叩き、同じように通信機を起動させた。

「ピカードよりライカー。」

ぴろりろりん。
「はい? 何ですか艦長、ちょっと今、おいしい日干し大根作りの真っ最中なんです、邪魔しないでもらえませんか?」

「副長、ウオッスが攻撃で受けたダメージの修復を指揮してくれないか。明日の午後にこの船でワープ飛行が出来ないと、地球の未来が大きく書き変わってしまう事になる。…それから、ブリッジで勝手に農作業はしないでくれ給え。」

「いやだな艦長、これは農作業なんかじゃありません、れっきとした食品加工業なんですよ。つまりITイットです。良いですか、艦長もよくご存知のはずでしょう、フランスの格言にもありますよね、「おかし」の「お」、おジャ魔女どれみドッカーン!に出演中の。「か」、瀬川おんぷタンに。「し」、ハァハァ。おんどれ推奨、いやむしろどれおんも可! つまり、デラから魔法の媚薬を手に入れたどれみさん(ふたなり、そして巨根)が、MAHO堂にやってきたおんぷタンを背後から」

「頼んだぞ副長。通信終了。」
艦長は胸の通信機を叩き、強制終了させた。


「ということで、上陸班を編成する。ユイカ、シロウ、ツバサは、僕に着いてきてくれ。」

「いやよ。こんなやつについていくなんて。」
エバンゲリオンの機関室。ところどころパーツが欠けていたり、取れかけていたりはするものの、おおむね元に戻っているらしいラ=フォージ。彼の言った言葉に、女性士官がガラガラ声で返答した。
その女性士官は地球人らしい。かなり小柄で、茶色の髪が結構長く伸びている。

「いや、あの…ツバサちゃん?」

「さっきまでうちゅうくうかんをさまよっていたような、ようかいのいうことをしんけんにきいていたら、こっちのみがもたないわ。」

「はん」と息をつきながら、ツバサはそっぽを向いた。

「いやあの…ポーター中尉、個人的な好き嫌いはともかく、仕事だから、ね? ほら、君が来てくれないと修理も進まないし…」

「あら。さっきからうじむしのざつおんが、ぶーんぶーんうるさいわね。だれかさっちゅうざいもってない? いっかいきかんしつを、かんぺきにさっきんしとかないと。」

「な、あ…あの…僕、上司…」

「まだなにかざつおんがきこえるわね。できそこないのほむんくるすが、えらっそーににんげんさまにさしずしているざつおんがきこえるわ。はっ。」

「あ、あの…少佐。今日はこいつ、お気に入りのココアパウンドケーキが売切れだったとかで、虫の居所が悪いんだよ。悪いが、他の奴を上陸班にあててくれないか?」
ポーターの背後に、長身ですらっとした、長い黒髪の女性士官が立っている。額の斑点から見るに、スバリル人のようだ。

「あ、ああ…そうみたいだね。じゃあ…ユミ、一緒に来てくれ。マホちゃんは、ツバサちゃんの面倒見ておいてくれるかな。」

「了解。」
スバリル人士官はポーターの肩に手を置きながら、苦笑気味にラ=フォージに頷く。

「ちょっと、あによ。ひとをこどもあつかいしやがって。むきいいいっ。むかつくわね! ふがああああああああっ! あんたなんか、ねこのうんこくってしね!」

がーん。
「って、何で僕を指差して言うんだっ!」

「ツバサ、あんた、キャラ間違ってるぞ。というか、台詞も違うし…」

「むしろ、ねこをくってしね。ねこのうんこを、みみのあなやはなのあなからどくどくとながしこまれて、いからちょうからぜんしんぱんぱんにそれでうめつくされてしねっ! ぺっとだいきらいばんによこくすれっどをたてて、「はいぼくしゃ」ってまじっくでかいたしーでぃーあーるをじぶんのなまくびからぶらさげながらしねえっ!!」

「無茶言うなっ! じゃ、じゃあそういう事で、アイガー少尉、後は頼んだよ。」

「りょ、了解…。」
乾いた笑いを交わしながら、ラ=フォージとアイガーは頷きあう。

「はん。こんなちゃばんげきにはつきあってられないわ。…ぶえっふ、っくしゅちきしょーめっ!」

「う…」
ツバサがくしゃみをして、大量の鼻水を噴射。それが自分の腕にかかるのを見て、マホの額に縦線が入る。

じゅるじゅる。
「…はあ。なんだかかんきょうせいぎょそうちがいかれてるみたいね。まほりん、しゅうりにいこう。このままじゃかぜひいちゃう。」

「…はぅ…」
機関室の向こうへ歩いていくツバサ。マホは目幅の涙を流しながら、その後を付いていく。


「見給え。これが地球人が初めてワープ飛行を成し遂げた宇宙船、ウオッスだよ。」
地下にある湖、というかプール、の岸で、フユツキとレイタが立っている。プールには、一隻のスワンボートがぷかぷかと浮かんでいる。

「皮肉ね。大量殺戮の為に使われるはずだった自爆兵器が、人類の宇宙への第一歩を踏み出すきっかけとなるなんて。」
その船の外壁のFRPは、もとは白かったらしいものの、すすけていて汚れが目立っている。内部の床には小さな水たまりがあり、たばこの吸殻が落ちている。壁面やハンドル周りにいくつか何かの機械が取り付けられているようだが、それを除けばどこからどう見ても壊れかけの足漕ぎ式スワンボートだ。

「ああ。見ての通り、このミサイルは本来、最終兵器として使われるはずだったものを、ユキノ・コクレーン博士が引き取り、宇宙船として改造。そして、地球人とその外の種族とのファースト・コンタクト…いや、ファースト・インパク知の、きっかけとなった。」

「確かにこれなら、インパクトは強かったでしょうね…艦長?」
レイタはふと、ピカードの顔に目を向ける。

「ん?」

「先程から笑っているようだけど…何か、楽しいの?」

「ん、いやあ。」
首をひゅるりひゅるり言わせながら、ピカは微笑んだ。
「憧れだったのだよ。子供の頃からの。この船は…今までにも、見た事は何度もある。富永一郎漫画館に陳列されているからな、ワシントンの。しかし、ここまで近づいて、こうやって手に触れる事まで出来たのは、初めてだ。」

「…」

「うお、うおうお、うおーんっ!」
フユツキは艦隊制服越しに自分の股間を船の外壁に当て、雄たけびを上げている。

「…」

「うおうおうお、うお、うおおおおんぬっ。うお、うお、うおん、かみん、かみんっ、うお、うお、うおうおうおうおうおうおうおうおおおおおおおおおおおおんっ!!」
びく、びくびくっ。

「…」

「…ふぅ…」
腰をプラスチックにつけたまま、フユツキは虚脱った表情で荒い息をついている。

「質問しても良いかしら。…船に接触して、一体何をしているの?」

「うむ、レイタ。人間は、目で見たり耳で聞いたりするだけでなく、こうやって、肌で触れる事でも、対象をより深く理解する事が出来るのだよ。」

「…そう。」
小首を傾げつつ、答えるレイタ。

「…」
レイタはピカードの横に並び、船の外壁に、同じように自分の股間を制服越しに押し付ける。

「…」
難しげな表情で、そのままのポーズを取り続けるレイタ。

「…うお、うおうおーん。」
レイタは棒読みで言ってみる。

「何か、感じ取れたかね?」

「外壁の主成分は強化ワラバンシ、モズク合金、木下さん、ヤツハシールと弱化ヤマトノリ。…触れる前と、認識に変化は見られないわ。」

「ふむ。」

「強化ワラバンシに、3.6%の分子崩壊が見られるわ。修復が必要よ。」
まだパンツをスワンボートになすりつけたまま、シリアス至極な表情でレイタが言う。

「そうだな。明日の午後までにはワープ飛行出来るようになっていないと、地球人の未来は、大変暗いものになってしまう…」

「あーのう。お楽しみんとこ申し訳ないっすけどお。」

「「…」」
階上から聞こえてくる声に、二人は顔を上げた。



「…そうか。まだコクレーン博士は見つからないか。」
ピカード、レイタ、トロイは、基地内の通路を歩いている。ピカードの言葉にトロイは肩を上げた。

「少なくとも、ミサイル基地内にはいないみたいっすね。」

「彼女がいなければ打ち上げは不可能だ。範囲を拡大して、捜索を続行してくれ給え。…ああ、ライカー。船の修理の方はどうなっている。」

別の方向からやってきたリョウジは、フユツキに軽く頷いてみせた。
「大丈夫です。いざとなればマコト君をくくりつける準備は出来ています。」

「そうか。ピカードよりエバンゲリオン。」
艦長は通信機を叩いた。

ぴろりろりん。
「こちらエバンゲリオン。」

「ホーク中尉、船の状況はどうだね?」

「あ、はいぃ。特に大きな問題はありませんん。あぁ、ただ、機関室で、環境制御にちょっと異常があったみたいですぅ。」

「環境制御?」

「はいぃ。なんでもちょっと、温度が下がったらしくてぇ。」

「温度が…」
ピカードはふと立ち止まり、何かに考え込んだ。

「どうしました?」
ピカに顔を近づけるライカー。

「…」

びしゃっ。
「おわっ!」
フユツキのハゲ頭のしみのひとつから、急に穴が開き、そこから何かの汁がリョウジの目に発射された。

「目が、目が、目がっ!」

「レイタと私は、今から船に戻る。君たちは引き続き、こちらで作業を続けてくれたまえ。」

「はあ…了解…」
全裸士官はよく分かっていない表情で、艦長に軽く手を上げる。

「目が、目が見えないっ、…ああっ、何か変な淫夢がっ! うわっうわわわあっ!」


「まったくやってんらんないわ。どおしてあたしが、こんなくそぼろいふねのしゅうりなんかしないといけないわけ。」
高さ1メートル程度の狭いジェフリーチューブの中を、ポーターが四つんばいになって進んでいる。

「手伝おうか。」

「ああ、いいよ。まほりんは、そっちのさぎょうをつづけてて。」
背後のやや離れた場所から聞こえてくる声に、ツバサは振り返りながら答えた。


「そうか。…まあ、仕事は誰かがやらないといけない事だからな。」
ジェフリーチューブの入り口がある作業用スペースで、マホは壁面のパネルを見ながら言う。

「あんただって、この船が嫌いな訳じゃないんだろ? あんたの好きそうなお菓子屋のテナントとか、一杯あるもんな。モロゾフに、千疋屋にマキシムに、くわまん本舗…」

「さいごのはいらないけどね。」
チューブから、アメ横辺りで人気の出そうなダミ声の返事が聞こえてくる。


「…まあたしかに。へんなふねよね。きゃばくらとか、ぱちんことか、かんこくえすてとか、そういうのもいっぱいあるのに、すぐうえのふろあーには、こぎれいなかふぇと、うらはらけいのぶてぃっくがならんでたりするんだから。これでも、でぃーがたきにくらべてごらくしせつがへってるってのが、しんじられないはなしだわ。」
修理用の機材の入ったケースをずるずると引きずりながら、チューブの中を這っているポーター。

「…っ」
ツバサはふと、息を飲んだ。


「ね、ねえ、まほりん。こっちって、…だれか、さぎょうにきてるやつっていたっけ?」

パネルから目を離し、アイガーはチューブの穴に目を向ける。
「向こうの通路か? …いや、作業予定表にはそんな事は書いていなかったぞ。」

「そ、そう…なんだか、かげがうごいたようなきがしたんだけど…きのせいかな。」


「お化けでもいたんじゃないのか。」

「…なによ、がきあつかいして。」
聞こえてくるマホの声に不愉快そうに眉を上げながら、ツバサは再びチューブ内を進みだした。

「…ん、しょっと。」
ジェフリーチューブの反対側の口までやってきたポーターは、そこから出て、作業用の通路らしい場所で立ち上がる。


「…まあ、連邦には色々な種族がいるからな。それぞれの文化や、嗜好に合わせる必要が出てくるから、こういった」

「んぎやあああああああああああああああああああああああっ!」「ぶっ」
チューブの向こう側から聞こえてくる(ケダモノの)叫び声に、マホは毛を逆立てた。

「ポ、ポ、ポーター? お、おい、大丈夫か?」

「んぎやあああ、ぎやっ、ふごっ、がああっ、ふがっ、んがっ! おまえなんかあ、こうしてやるっ! うがああああっ、があああっ、ああっ、このっ、このっ!」

「お、おい、ポーター? ポーター!」

「あいたたた、んがっ、ふご、ふごおおおっ、うがあああっ、くああああっ! がぷ、がぷ、がぷっ! ふがっ! おら、ころしてやるっ! おまえなんか、おまえなんか、InSexにもTorture Galaxyにものっていないような、氏賀Y太もかいていないようなすさまじいぷれいでめちゃくちゃにしてやるっ! はりがねでありとあらゆるところをぬいつけて、そこからかんでんぷれいでしぼうをもやしつくしてやるっ! ふが、ふがっ、うがああああああああああああああああああ」

「…」

「…」

「…お、おい、ポーター?」
恐る恐る、アイガーは顔をチューブの入り口に近づける。

「…」
チューブの向こう側からは、何も聞こえてこない。見える景色も、向こう側にある通路の壁だけだ。

「おい、ポーター…大丈夫か?」
唾を飲みながら、マホはゆっくりと身をかがめ、ジェフリーチューブの中へ入っていく。

チューブの中を這っていくアイガー。
「ポーター、ポーター? からかってるん、だよな? 分かったから、機嫌を直してくれないか?」

「…」
向こうの出口からは、何も聞こえてこない。マホの額に、嫌な汗が滲みだす。

「…ああ、そうか、さっき子供扱いしたから怒ってるんだな。悪かった、謝るよ。…ああ、そうだ、この作業が終わったら、軽くお茶でも飲みに行かないか。だから、なあ。修理だけでもすませておかないと、な。」

「…」

「…」
チューブを這いながら、また唾を飲むアイガー。


「ふんっ…」
チューブの終わりまで来たアイガーは、窮屈そうにそこから抜け出し、作業用通路に現われる。

「ふう…」
息をつきながら、自分の膝の埃を軽く払うアイガー。

「…」
そしてやや堅い表情のまま、マホは自分の周囲を見回した。

「…ひいいいっ!」

「くあ。」


「これでよし、と。後はここでの記憶を消す手術だけね。」
リツコは寝台に寝たソウイチロウを前に、ニヤソと微笑む。

「…でも、ずっと彼の意識が無いまま手術してたんですから、このまま地上に戻せば良いんじゃないんですか?」

「何言ってるのよアリサ。そんな事をしたら彼の脳をいぢる機会が無くなるでしょう。」

「は、はあ…」
ナースはドクターの言葉に、やや口端を引きつらせながら答える。

キーキー、キーキー。

「それにしてもここは寒いわね。環境制御がちょっとおかしいんじゃないかしら。このままだと死人が出るわよ…私のせいで。」
天井の隅にぶらさがるコウモリ(らしき動物)を見ながら、ドクターは毒づく。

ハルナは色白の顔をいつものように冷や汗で濡らしつつ、ドクターに言う。
「ま、また冗談を…。それよりドクター、21世紀の人の脳は、勝手にいぢったら歴史が変わってしまうかも」
ガン、ガタンッ、ガタンッ!

「ひいいいっすっすっすいませんっ」

「…私じゃないわよ。」
額に軽く四つ角を作りながらドクターが首を振る。

「え…?」
物音のする方に顔を向けるナース。

ガタン…ガンッ、ガンッ、ガタンッ!

「え…」
医療室の自動ドアは閉まっている。そこに何かが向こうの通路から打ち付けられ、徐々にドアが変形してきている。どうやら向こう側の何者かが、無理にドアをこじ開けようとしているようだ。

「「…」」
ドクターとナースはお互い、目を見合わせた。


ターボリフトのドアが開き、フユツキとレイタがブリッジに歩いて来る。
「現状報告。」

艦長の言葉に、近くに立っていたゲォーフが向き直る。
「副長が漬けていた辛子大根のうち、ある大根の根が、途中から二股に分かれ、見ようによっては女体っぽく見えなくもないという事が判明した。」

「…いや、船の現状だ、ゲォーフ。」

「ああ、船か!」
今思い出したらしい様子でゲオは頷いた。

「この大根に見惚れていて思わず完全に忘れ去ってしまっていたが…そう言えば、機関室と連絡が取れなくなっているようだ。」

「連絡?」

「ああ。通信が途絶え、ビーバーがせきとめられ、リフトも停止しなくなっている。」

「…」
少し考え込んでから、ピカはゲオを見る。

「…ゲォーフ、最後に機関室と通信出来た時の、機関室の環境がどうだったかは分かるか。」

「…」
ピッピッ。
ゲォーフはパネルを操作する。

「…気温が平均より摂氏10度低下。ところどころで吹雪が起き、どこからともなく現われた背黒メザシの大群がそこら中をピチピチとのたうちまわっていたらしい。…という事で、まあ、それほど異常な状態には思えないが…」

フユツキは深刻な表情で首を振る。
「いいや、ゲォーフ。…その状態は正に、ペングシップ内部の環境にそっくりだ。」

がーん。
「そ、そうだったのか! そんな事は、考え付きもしなかった!」

禿げ頭のいくつかの部分についた小さなフタらしき物をカパカパ言わせながら、ピカードは息をつく。
「恐らくペングシットを破壊する直前に、ペング達はエバンゲリオン内に自分達を転送してきたのだな。そしてこの船を乗っ取り、地球を征服する気だったのだ。」

「でも艦長。彼等の歴史改変の後でも、先程見たあの奇妙な地球の状態は、ペングに同化された惑星の典型的な姿とは、やや異なるものになっていたわ。」
レイタが言う。

「確かに、通常のペングの侵略とは何かが違うのも確かだが、いずれにしてもあれがまともな未来とは思えん。これを傍観している訳にはいかないだろう。レイタ、機関室のコントロールは?」

ピピ、ピピ。
「…既に、ペングが掌握済みよ。こちらが奪い返すのは困難だわ。」

「それでは、メインコンピューターの制御権だけでも、奪われないようにロックしてくれ給え。」

「了解。」
ガチャッ、ドガッ、ビリビリビリッ、ガスッ、ガチャンッ、ドガガン、ガンッ、ビリビリ、ギヤヤヤヤヤア、ビシャッ、ピク、ピクピク…ビバババッ。ボカンッ。

「…完了したわ。」

「よし。それではさっそく、反撃を開始する。ペンギン達に、この船は渡さん。ゲォーフ、保安チームを至急、貨物室」

「うむ…やはりこの大根は、どう見てもきむいくチックだ…」
うっとり。

「…ゲォーフ、そんなアイドル未満声優以下の人間なんかどうでも良い。早い所仕事をしてくれないかね。」

はむっ
「思わず食べてしまいたくな」
がすっ
「良いから来たまえ!」


貨物室にクルーが集まり、フユツキの前に立っている。フユツキは最新式のフェイザーライフルを手に、クルー達を見回した。
「良いか、ペング達を攻撃するには、彼等の頭部にあるスイミー供給装置を狙うんだ。ここはイソノケフィールドも弱い。それに攻撃しても、船の蟻動力装置への影響が起きないですむからな。」

「スイミー供給装置を破壊しても、それではペングの有機体の部分しか破壊出来ないのではないか?」
頬から大根を飛び出させたゲォーフが尋ねる。やや喋りづらそうだ。

「それで充分よ。機械と有機体が融合したタイプの生命体は、有機体の部分さえ破壊すれば活動を停止するわ。」

「レイタの言う通りだ。」
頷くピカード。

「そうか。」
ゲォーフは目の前のスタンドに並んでいるフェイザーライフルを一つ手にとり、茶色のカートリッジをそれに装着してみせた。

「カウンセラーの調合したミサトカレーで、一般のフェイザーライフルよりは遥かに対ペングの攻撃力は強化されているが、それでも恐らく、5発程度でこちらの攻撃は無力化される事が予想される。」
クルー達に言うゲォーフ。

「それに、ペングが既にビアゾイド人を同化していたとすると、もうスブタロンへの抗体が存在している可能性もゼロではないわ。」

「後、もう一つ。」
フユツキは自分のフェイザーライフルを手にとり、口を開く。

「エバンゲリオンのクルーがペングに同化された場合、躊躇無くカレーをお見舞いしたまえ。それが、彼等の為にもなる。」

「どの時点から、同化されたと判断するのだ?」

「ペンギンの着ぐるみを着た瞬間からよ。それ以降の救出は…無意味だわ。」

「…前から知りたかったのだが、その、ペンギンの着ぐるみというのは、一体どこの空間から出てくるのだ?」
凛とした表情のレイタに、ゲォーフが聞く。

「それでは行くぞ。全員私の後に付いて来るんだ。」

「「「了解!」」」「いや、あの…」


夜のシンカワサキ(モンタナ州)。森の中にぽつりぽつりとある人明かりは、普段通りの平穏なものにも見える。
明かりを発している建物の一つにやってきたリョウジは、窓ガラス越しに艦隊制服姿のミサトの姿を認め、建物の入り口にやってきた。
「おい、トロイ。」

「…」
居酒屋らしき場所の中で佇んでいるトロイは、副長の言葉に無反応であらぬ方向を向いている。

「トロイ? カウンセラー?」
眉を上げながら建物内に入り、近づく副長。

「あー、続きましてわぁ、椎名林檎さんで「歌舞伎町の女王」−っ!」
「なっ」
急に響く大音響。ライカーは思わず頭の縦笛を数本地面に落とした。

「いえーい!」

♪ちゃらら、ららら、ちゃーら、ららら…


「危ない海外」板を 久しぶりに覗いたら
I'veファン 「アニソンは糞」と 大論争中の歓楽街

ママは街の発明家 「万引き 隠しまシート」
発明し、小林製薬に 持ち込んで警備呼ばれた

15になったあたしが 飛ぶ夢 見な…


すぽん。
リョウジはカラオケセットのコンセントを引き抜いた。

「ああっ!」

女性の声がする。リョウジが顔を向けるとそこには
「がぶっ!」
「があああああっ!」

「うわっ、マズっ。何この頭、大分毒素がたまってるわ。こんな汚染されたブツじゃ腹の足しにもなりゃあしない。ぺっぺっ。」

「ト…トロ…イ…」
顔が、困っている人を助けた後のアンパンマン状態の副長が、何とか声をかける。

「こいつ誰? 何、ミサトさんの知り合い?」

「ええ。」
女性に、トロイが頷く。

「ライカー、こちらが、ユキノ・コクレーン博士。博士、こちらが、故・リョウジ・ライカー。」

「や、やあ、初めまして。」
地面に吐き出された顔面の一部を自分の頭部に付け直しながら、ライカーが手を差し出す。

「ん。」
ユキノは頷くと、自分の右足をバレエダンサーよろしく高く上げ、リョウジの手の上に握手のように乗せてみせた。

ぷっぽー。
「…」
副長の笛が鳴る。

「…博士、パンツ見えてるわよ。」

「あらやだ、私とした事が、はしたない。」
ミサトの言葉に、ユキノはふと我に返り、足を下げた。

「あなたも、ちゃんとひざまずいてくれないと困るな。」
ライカーに向き直り、コクレーンはいさめるように言う。

「…は、博士。ええと、ところでですね、」
頬をピクつかせつつ、穏便に口を開くリョウジ。

「それで。これとミサトさんは、付き合ってたりするんですか、もしかして?」

「え? ううん。別に、特にそう言う事は、ないけど…」
副長をちらちら見つつ、答えるトロイ。

「…今は。でも昔は多少、そういう事もあったとか…」

「そ、そんな事無いって。い、嫌だなあ、変な事言わないでよ博士。」
やや顔を赤らめながら、トロイが苦笑する。コクレーンは肩を上げた。

「まあ、今そうじゃないなら良いけど。やっぱり首輪をつけて引きずりまわすのはミサトさんじゃないと、絵にならないもんねー。」

「はは、ははは…」
乾いた笑いを返すミサト。ユキノはカラオケセットの裏手の、コンセントを繋ぎ直した。
「うん、これでオッケー、と。ええっと、5833-01。」

リョウジはユキノに声をかける。
「…あの、博士。実はちょっと、お話があるんですが…」

♪ちゃらら、ららら、ちゃーら、ららら…

「きゃっほーっ!」

「あの…」

マイクを握ったコクレーンは、ライカーを全く無視して再びカラオケを歌い始める。


「…」
ため息をつくライカー。彼はトロイに近づいた。

「トロイ、早い所彼女に、話を聞いてもらわないと。」

「ええそうね。その為にはまず、彼女の心の壁を乗り越える必要があるわ。」
真面目な顔で、艦隊制服姿のトロイは頷く。

「あ…ああ。」

「博士は無意識のうちに、他人と心の壁を作る傾向があるの。それもタチが悪いことに、一見しただけでは、彼女の人当たりはむしろ良い。だけど内心に彼女は常に自分への高い自己愛を持ち、それ故自分への疑問を抱え、結果、彼女の奥底にある本心への他人の接近を無意識に避けようとするの。もちろん、誰にだって他人に見せたくない本心というのはあるものだけど、彼女の場合それを隠す技巧が上手すぎるが故に自分自身でも」

「…あの、カウンセラー。」

「何、副長?」

「カウンセラー……どうしたんだ? まるでカウンセリングが出来るみたいな喋りっぷりじゃないか。」

「…彼女に近づくのは、大変だったのよ。」
眉を上げるミサト。リョウジは、彼女の隣の席に座る。ミサトは自分の前のカウンターにあるグラスを持ち上げてみせた。

「これを飲むまでは、話し掛けても返事一つしてくれなかったんだから。」

「何だ、それは?」

「ヴィックスベポラップ・ティーと言うそうよ。地球の飲み物なんだけど、知らない?」
グラスの中の、白くとろみがかった液体を見ながらライカーが首を傾ける。
「いや…でも、お茶なんだろう? それなら飲む位問題無いじゃないか。」

ひくっ
「地球人にはね。でもビアゾイドは、アルコール分の無い液体を飲むと大変なのよね。」
ミサトは言いながら、しゃっくりをした。

「もしかして…酔っ払ってるのか?」

グラスを置くミサト。
「失礼ね! 私のどこが酔っ払ってるって言うの? ほら、背筋だってしゃんとしてるし、滑舌だっていつもと違って明瞭でしょう? シュレディンガー波動方程式はHψの(r,t)イコールEψの(r,t)。HがハミルトニアンでEはエネルギー。ほら、言ってる事だって理路整然。」

「は、はあ…」

「大体ライカーは、船の副長としての自覚が足らないのよ。」
ミサトは指をリョウジの前に突きつける。

「分かってるでしょう、艦長やゲォーフに比べるとキャラが立ってないから、何かもっと押しが必要だって事位は。唯一の個性がクスリだけじゃ弱すぎる。そもそもそれ、人からのパクリでしょうが。もっと何か、特徴的な個性をつけないと…そうね、例えば「子供好き」なんて属性はどう? 幼稚園の保父さんとかを進んでやるような。ああ、あるいは「花が好き」とか? 趣味で花屋のバイトをするのよ。サルビアの花言葉は「知恵と尊敬」、とかすらすらっと出てくる感じでね。って、ちょっと聞いてるの?」

「ん、あ、ああ、もちろんだ。…トロイ、俺の事は良いから、まずは博士と話を…」

「船のカウンセラーとして意見を言わせてもらうとね。」
ぐい、とヴィックスベポラップ・ティーを飲み干し、ミサトが言う。

「彼女はプラスネジの頭って、まさにしいたけちゃんよね。」

「…は?」

「実は私達が気付いていないだけで、既に街中、しいたけちゃんだらけだったのよ。でもここで注意するべき事は、テツアンドトモに普通のタレントとしてのリアクションは期待してはいけないという点だわ。もちろんそれを言えばジブラの城南ハスラーっぷりは常々見るに耐えない訳なんだけど、あれね、今はまずはリップスライムがラップで口数が多いにも関わらず言ってる事が見事に内容が無い事について考えるべきだわ。つまり、ハーゲンダッツと彩の根源的な差と言うのはその容器の小ささに…って、聞いてる?」

「あ、ああ…」


15になったあたしが 飛ぶ夢 見なくなったのは
欠陥住宅Gメンが 床下に消えてから〜


「いぇーい、いぇーい!!」
居酒屋の奥の方のステージでノリノリで歌っているコクレーン。マイクの音に、ライカーはまた笛を落としかける。

「…そもそも、どのコンビニにしても小割けそばの分け方って全然小さくないじゃない! あれだと一回分がちょっと…」
どすっ。

真剣な表情で何かを語っていたミサトは、ふいに気を失い、そのままカウンターに頭を打ちつけた。

「…」
ぷぽー。
リョウジはため息がわりに、頭の笛を鳴らした。


ぷしゅうう。
「さあ、起きて。」
ドクターが寝台のスローンにハイポスプレーを注射した。

「え? うわ、わ、わわわわあっ!」
目を開いたスローンは、自分の目の前のコウモリに声を上げる。

「ん? …ああ。気にする事は無いわ。ただのマスコットよ。」
自分の前髪からぶら下がっていたコウモリに(今)気付き、リツコはそのコウモリをもぎとる。

さっ、ひゅうううううん、ぐしゃっ。

そのまま中々の強肩ぶりを見せるドクター。ソウイチロウは壁に出来た赤黒い染みを見ながら口を開ける。
「え…マスコット、だったんじゃ?」

「落ち着いて聞いて。今から私達はここを逃げるの。まあ数匹なら私の魔法で何とかなると思うんだけど、なるべくリスクは冒したくないから。…アリサ、そこのジェフリーチューブに、皆を誘導するのよ。」

「分かりました。」
医療室のスタッフと患者達は、全員急いでジェフリーチューブの穴の中へ入っていっている。幸い動けないような患者はいないようだ。

「こ、ここはどこだ! あなた達は一体何者なんです!」

「あの、説明は多分、後でドクターが(イヤと言うほど)すると思いますから、まずはこちらへ。」
叫ぶスローンに、ハルナがなだめるように言う。

「ああ、それからこの子達も避難させないと。」

ひゅうううん、ばさばさっ。ひゅううううん、にちょっ。ひゅううううううん、うきーっ。
「うわ、わ、わあああっ」
自分の近くに投げ込まれる、コウモリやらナメクジ類やらテナガザルやらにソウイチロウは声を上げる。

「わ、わ、わ、わ、わ、」

「こちらへ。」
スローンはハルナに手を引かれ、ジェフリーチューブに引きずりこまれていく。

がたん、がきんっ、ばきん…。

まだ医療室内に立っているドクターは、かなり変形の激しくなったドアを見つつ口を開いた。
「コンピューター。緊急医療ホログラム始動。」


ぴぴ。
ぶろろろろろおおおん。
「心地良い、震動だね…」

コンピューターの反応音と共に、医療室内に突如、アメ車のオープンカーと、それのボンネット上に乗っかった色黒の半裸の男が現れた。

「…」
眉の上がったまま、動きの止まるドクター・クラッシャー。

「「…」」
ジェフリーチューブに入り込もうとしていたナース達も、思わずこちらを見たまま固まっている。

「さあ。君の行きたい場所を教えてくれ。世界の果てまで、連れて行ってあげよう。」

「…生憎だけど、あなたは医療用ホログラムで、この医療室から出る事は出来ないのよ。」

「それは、物質的にはそうかもしれないがね。…はっ」
無駄に足を開脚させつつ、ホログラムはアクロバチックに車のシートに移動する。

「でも、精神的にはどうかな? 世界の果ては本当は、君の心の中にあるものなのかもしれない。あるいは、腹痛の果ての脱糞の中にあるのかもしれない。むしろそれこそが、正に「風」を感じるという」
「興味深い話だけれどまたにして。良い、あなたに頼まれたい事があるのよ。」

両手を白衣ポケットに突っ込んだドクターはコブラの運転席に近づき、医療室のドアの方をアゴで示す。
「ペングが来ているわ。私達は今からここを伝って逃げるから、ペングが追ってこないよう、出来るだけ時間稼ぎをしてほしいの。」

「うーん…これは、困った事を言うお嬢さんだ…俺はドライバーであって、水族館員じゃない。」

「…ドライバーじゃなくてドクターでしょう。」

「それはあくまで副業に過ぎない。俺のサイドビジネスは、ドライバーなのさ。これは俺にとって、一生の腰掛けと言っていい。それに比べればドクター業などは、ただのレゾン・デートルに過ぎない。俺の存在理由はあくまでドライバーだ。」

大分困惑した様子のドクターは、それでも高圧的な態度を崩さず肩を上げた。
「…。そう。とにかく、今は議論している暇は無いの。あなたがペングの足を止める。良いわね? 絵文字を教えるなりレズプレイを教えるなり、好きになさい。任せたわよ。」

「…」
彫りの異様に深いドライバーは、ドクターの言葉に無言で肩を上げてみせる。

ドクターはジェフリーチューブの中に足からもぐりこみ、近くの床に置いてあったチューブ入り口のフタを手にする。
「…それじゃあ、頼んだわよ。」

ドライバーに言って、リツコは自分でフタをはめこみながら、チューブの中へと消えていった。


「ふむ…」

がたん、がたんっ、がんっ!! …ぎい、ぎいいいいっ…。

「…やあ。君達も、風を感じたくはないかい?」
ドライバーは、いつもと全く変わらないアルカイックな微笑みで、侵入者達を見下ろす。
「ふんっ!」

ぎーこ、ぎーこ…
「ふふ…心地良いスイングだね…」
派手にバク転もどきのアクションを見せつつ、ドライバーはどこからともなく出てきた遊具にまたがってみせた。デパートの屋上遊園地にありそうな、100円入れる式の一人乗りの電動遊具だ。
ただし形状は、巨大なちくわぶをかたどっていた。

「ペングの君達は、熱い汁に浮かぶおでん種に気高いヒロイシズムを感じるそうだね。どうだい、これに乗って、俺と世界の果てを見てみないか?」

機械音をうならせながら近づく侵入者達に、ドライバーは微笑んでみせた。


暗くなったエバンゲリオンの通路を、フェイザーライフルを構えたピカード達が列を揃えて歩いていた。

先頭を歩いているレイタは、目をぐるぐる模様にしながら普段より2オクターブ高めの声を出している。
「あやや、こ、これが恐怖という感情なのですねかんちょお。れ、れいたちゃんもうちびりそうなのですう。あう、あうあう。正直言うと、本当はもうちびってしまいましたのです。うう、ズボンが生あったかくてびちゃびちゃするのですよお…」

「レイタ…また例のよろしくないモードになっているぞ。」
隣を歩いているピカードが小声で言う。

「あうあう、そんなことおいわれましても。あたしももう足がぶるぶるで。あう。これって、えばしょーせつ作家が2ちゃんで自作を晒された時の気分と同じようのものなんでしょおか。しかもたいけんえばと並列で語られるような扱いで…ひ、ひどいですよお。しかも「体験のように人をひきつけるような話題性すら無い、真の最低FF」とか言われちゃうんですよおきっと。くすん。それは確かにえむえすワードでhtml作ったのは悪かったけど、そんな言い方って無いのです。けいじばんでちゅうな一言も吐いて公開停止してやりますよお。」

「レ、レイタさーん…」

「れいたちゃんそんなの悲しいのなのです。くすんくすん。艦長さん昔から言いますよね、「生きてるだけで丸く」、って。」

「「「(…え、何が?)」」」
クルー達の心の声が揃う。

「…あー、レイタ、今だけは、感情チップはオフにしておいた方が良いとは思わないか。」

「あうあう…そ、そうかもしれませんなのです。それはグッド王様のアイデーアですかんちょお。ぺこぺこ。それではさっそく今から、感謝の踊りを」
「良いから、今すぐオフにしたまえ。」

「あう、ごめりんこです。分かりましたのです。」
頷くレイタ。レイタは軽く、自分の首を振った。

ぴぴ。

「…感情チップの動作を一時停止。艦長、先へ急ぎましょう。」
本編準拠な(無)表情のレイタがピカードに言う。

「…レイタ、時々君の芸の幅が羨ましくなる。」
しみじみと呟きながら、フユツキは歩みを進める。二人の後ろを付いていくクルー達。


がたっ
「ひいいっ!」
レイタ達とは別の班で作戦行動をしていたゲォーフは、通路の壁から鳴った物音に悲鳴をあげた。

「こ、だ、ど、ど、だ、だだだだだ誰だっ!」
壁に向かい、フェイザーライフルを構えながらゲォーフは後ずさった。

がん、がんっ。

通路のジェフリーチューブのフタが音を立てる。やがてそれは外れ、チューブの中から人が姿を現した。

「う、わ、わわわ」
ぴぎゅん、ぴぎゅん。

「きゃ、きゃあっ! すいません、降参です、降参しますっ!」

ぴぎゅぴぎゅんっ。
「きゃああっ」「ごわああああああああっお゜お゜お゜お゜お゜お゜お゜っ」
どさっ。

フェイザーライフル音と共に、アリサの目の前でゲォーフが倒れこむ。
「あ、あの…」
両手を上げた状態のナースは、目の前の状況が良く飲み込めていない表情で通路のクルー達を見回した。

「「「…」」」
ゲォーフ班のクルー達は、困った様子でお互いの顔を見ている。

「…アリサ、止まらないで。こんな所で凍死したくないわ。」

「あ、す、すいません。」
背後からの声に振り返るアリサ。彼女はチューブからぬけ出し、通路に身を現した。
ナースの後に続き、医療室のスタッフと患者達が数人、チューブから出てくる。

最後にジェフリーチューブから顔を出したドクターは、目の前で倒れこんでいる物体に、軽く眉を上げた。
「今の悲鳴はこれだったのね。おおかた一人でパニクってフェイザーを撃ったら、フェイザーの前後を逆に持ってたから思いっきり自分に撃った、というところでしょう。」

「あ…ああ、多分その通りだな。」
短髪で黒髪の、ボーイッシュな雰囲気の女性士官がドクターに頷いた。やや苦笑している。

「医療室から逃げてきたわ。見れば分かるでしょうけど。…ただ、途中で落し物をしたのよ。21世紀の時代の患者が一人、途中ではぐれたらしいの。地球人男性。」

「分かった。探しておくよ。」
女性士官が頷く。

「お願い。」

「それじゃあ私達は、そろそろおいとまするという事で…」
ドクターの後ろから、もみ手のハルナが愛想笑いをする。

「ああ、そうだな。あんた達はブリッジにいた方が良い。一人護衛を付けるから、彼の先導に従ってくれ。」

「助かるわ。」

「という事は、あなた方はペング退治にいかれるんですか?」

「そういう事。」
他のクルー同様フェイザーライフルを構えている女性士官が、ナースに肩を上げる。

「ゲォーフ少佐は…手当て、必要、ですよね…やっぱり。」
露骨に嫌そうな様子で言うハルナ。

「あ? ああ。気にすんな。こっちで何とかするよ。」
ショートカットの女性士官は軽く手を振った。

「は、はあ。」

保安部クルー達は、手慣れた動作でゲォーフの両足に縄をくくりつける。
「じゃあ皆、行こうぜ。そっちも無事で。」

「は、はい…」

がさがさ…。
カレーを食らい気を失ったままのゲォーフは、色々な色の何かを床に残しながら保安部クルー達に引きずられていく。

「アリサ、私達も急ぐわよ。私達がいなければ、船の医療は滞ってしまう事になる。」

「あ、はい。そうですね。私達の助けが必要な人達が、いるかもしれませんからね!」
頷くナース。医療室クルー達は通路を逆方向に歩き出した。


通路の角まで来たピカード達は、その先に見えてきた光景に足を止めた。どうやらゲォーフ達の班も、ピカードと合流しているようだ。
「…皆、武器を下げるように。こちらが武器を向けない限り、向こうから攻撃はしてこないはずだ。」
言うフユツキ。クルー達はライフルを下に向ける。

通路の先では、ペング達が自分達の再生装置を壁際に設置し、まるでペングシップ内のような雰囲気でそれらの装置に接続されていた。
ペング達が繋がれた機械は、通路沿いにずっと設置されている。既にここにいるペング達は数十匹か、もしかしたら百匹以上いるのかもしれない。

ペング達にゆっくり近づくピカード達。彼らは、ペングの「居住区」に入っていく。
ピカが言った通り、ペング達は彼等に特に興味は無いらしく、まるで全く目に入らないかのように、ピカ達の横をぴょこぴょこと素通りしていく。

「…」
目の前を何度も通り過ぎていくペング達に、フユツキ達はやや緊張した面持ちを見せつつ、通路をゆっくりと歩いていく。

だらだらだらだら。
「あわ、あわわわ…」
自分のかく大量の汗で、ゲォーフが徐々に通路を滑っていく。

「ゲォーフ、こっちだ。」

「す、すまない艦長。」

「…」
通路の角まで来た一行。曲がる事は出来るが、直進方向はドアが閉まっていて進めない。レイタは立ち止まり、ペングを横目で見ながら艦長に報告した。

「…艦長。機関部への道が遮断されているわ。」

「それではこじあけてくれないか。」

「了解。」
レイタはドア脇のコンソールをひきはがし、中の端末装置を早送り状態の指使いで操作する。

ぴぴ。

ドアの電子音が鳴る。

びいいいいいいいん…

と同時に、何か別の低い電子音も周囲に響いた。

「…何だ、今の音は?」

「クエッ。」「クエッ。」「クエエエエッ。」
音と共に、壁際のペング達が一斉に反応し、ピカード達の方に顔を向けた。視線を交わすピカ達。

かん、かん、かんかんっ。

ペング達を壁際に固定していた装置が外れ、ペング達は一斉にピカード達の立っているところにぴょこぴょこと近づきだした。
ピカ達はライフルを構えつつ、一箇所に固まる。

「クエエッ。」「クエッ!」「クエッ、クエッ。」

レイタは構わずドアをこじ開ける。ペング達はそのドアの向こう側からもやってきた。

「ふんっ!」
びしゅううん。

「クエエエエエッ!」

フユツキがミサトカレーを発射する。一番先頭を来ていたペングはびゅくびゅくと震えながら、その場に倒れる。

びしゅううん、びしゅうううん。

「クエエエエッ!」「クエ、クエエエエエッ!」
ばたばたっ。

ピカードに習いクルー達も攻撃を開始する。続々と倒れていくペング達。レイタはドアの先へ何とか進んでいこうとするが、次から次へとやってくるペング達にてこずっているようだ。

びしゅううん、びしゅうううん。

びびっ!
「クエッ、クエッ、クエッ。」

クルーの撃ったミサトカレーが、後ろからやって来たペングの目の前で、バリアのような物に遮られる。ペングは平気な顔でそのまま直進してきた。

「艦長、攻撃がもう無効化されたぞ!」

ゲォーフの言葉に、ピカードも焦った様子で眉を上げた。
「はあああっ、ふんっ!」
ぽろぽろっ。

「「…」」

「ああっ、ここでロケットパンチで決めるつもりだったのにいっ!」
自分のすぐ足元に落ちた両腕を(器用に)拾いながら、ピカが涙する。

「ああ、あああああああもう終わりだああああああああっ!」
じょーじょーじょー、ぶりぶりぶり…。

「クエッ。」「クエ!?」「クエ、クエッ…」

泣き叫ぶゲォーフ。その光景の余りの汚さ加減に、ペング達がややたじろいだ雰囲気で歩みを止める。

「でかしたぞゲォーフ、そのまま特攻だ!」

「か、艦長!?」

「行けいっ!」
ゲオの背中を足で押すピカ。

つる…
「おわあああああああああっ」

つるっ、びちゃああん。
「…ああああああふんごっ。」

自分の糞尿に足を滑らせ、そのままゲォーフは床に倒れこんだ。


「くえっ。」「くええええええっ!」
がちゃ、がちゃん。

「ふん…ふんっ。」
一方レイタは、ドアの向こうからやってくるペング達を何匹も腕力任せに破壊しているが、それでも、際限無く続く彼らにやや焦りの表情が出始めているようだ。

「ふんっ! …艦長、ここは残念だけど、」

「ああそうだな。皆、一旦退却だ! ゲォーフを先頭にして近くのジェフリーチューブに向かえ!」

「え゛っ! って事は、少佐の後を歩かないといけないんですか?」
メガネをかけたイブジョー人の女性士官がピカを見る。

「その通りだシトー中尉。彼の後ろが一番安全だからな。まあ、衛生面は後でドクターの処方を受ければ良い訳だし。」

「え゛ー。」
カスミの額に縦線が入る。

「ゲォーフ。」
まだ倒れているゲォーフに近づくフユツキ。フユツキはそこで、息を大きく吸ってから大声を上げる。

「おい、ゲォーフ、後ろからペングがやってきているぞ!」

「何ぃっ!」
ピカの言葉に瞬時に反応し、ゲオは飛び上がるように起き上がった。

「も、もう嫌だあああああっ! 僕お家に帰るうううううっ!」
両手両足をバラバラに動かしながらゲォーフが走り出す。

ピカ達は頷き合い、彼の後に小走りに続いていく。


「…あっ」
まだ走り出さず、列の最後尾で周囲を警戒していたレイタは、ふいにバランスを崩した。

がすんっ。

床の震動に気付き、ピカードが振り返る。
「レイタ!」

「くっ…艦長。」
見ると、レイタが床に倒れている。どうやら足に針金のような物をひっかけられたようだ。

「レイタッ!」

そのまま足を何者かに引きずられるレイタ。ペングがコントールを取り戻したのだろう、機関室へのドアが閉まっていく。

「艦長。」

「レイタァッ!」

ドアへ走っていくピカード。しかし彼が近づくより早くドアが閉まっていく。その向こうへレイタは引きずられていく。

「艦長!」

「レイタ!」

「艦長!」

「追い炊き・コムのエロ同人ウプしてくれる神キボンヌ!」

「艦長!(怒)」
ずるずるずる…。

「あ、思わず心の声が!」
頭を抱えるピカ。


レイタは引きずられ、ドアの向こうへと消えていった。


「くえっ。」「くええええっ。」「くえっ、くえっ。」

「う…」
周囲のペング達を見回すフユツキ。

「…くっ」
フユツキはドアから離れ、ゲォーフ達を追って走り出した。


「うわあああああああああああっ!!」
泣き叫ぶゲォーフを先頭に、クルー達は通路を走っていく。

「くえっ。」

ぶすっ
「ぐあっ!」

「くえええっ。」

ぶすっ
「きゃあああっ!」

しかし、走るクルー達にもペング達が容赦無く襲い掛かる。何人かのクルーは既にペングに捕まり、そこでそのまま何かの管を首筋に注入されている。

「少佐、そこだ!」
ショートカットの士官の指摘に頷き、ジェフリーチューブの入り口に駆け込むゲォーフ。クルー達も続々と後に続き、チューブの中へと入っていく。

「ふう…」

「くえ、くえっ」

はっ
「があああっ!」


「はあ、はあ…」
大分、列から遅れたピカは、走りながら自分の首元のボルトを締め直していた。

「うむ…良くないな。最近首の締りが悪い。すぐ春めいた陽気を振りまいてしまう。」
呟くピカ。

「…」
ピカは前方に、フタの開いたジェフリーチューブの入り口を見つけた。安堵の息を漏らすピカ。

「か、艦長…」

「…」
穴の中へ入り込もうとするフユツキを、誰かの声が止めた。声の方を向くフユツキ。

「た、たす…け…クエッ。」
黒髪の女性士官は、ペンギンの着ぐるみを着た状態で床に倒れていた。表情だけは悲壮だが、全体的にはぴょこぴょこしていて非常に可愛らしい。

「…」
びしゅん。

「うっ!」

無言でフェイザーを撃つピカード。士官は顔にカレーを喰らい、そのまま絶命した。


「ふんっ、ふんっ…」
チューブの中をフユツキは四つんばいで歩いていく。

チューブは途中でT字路に入り、そこから天井が高くなる。チューブは、やや狭いものの、立って歩く事も出来る通路のような空間になった。そこまでやってきて、フユツキは軽く息をつく。

フユツキが立ち上がり、通路を歩こうとした時に、背後から声がかかった。
「動くな!」

「わっ!」
驚くフユツキ。

ぽろ。
「うわ、わ、わあああああああっ!」
それと共にフユツキの首が(また)落ちる。声をかけたソウイチロウ・スローンは極度のパニック状態に陥った。


レイタは寝台に寝かされていた。
彼女の両手両足は拘束され、器具で固定されている。寝台の周りには、何匹かのペング達がトテトテと行き来している。
彼女がいるのは、機関室のようだ。そこは既にペングの機械が並び、本来の様子からかなり異なった雰囲気になっている。
「あなた達は、何を望むの?」

ペンギン達を横目で見ながら、レイタは言う。
「メインコンピューターの解除コードが知りたいなら、無駄よ。私はエバンゲリオンクルーの中で唯一、普通に仕事をするという役目を担っているのだから。」

「いつもの君らしくないよ、レイタ。君はそんな風に、いい訳めいた無駄口エクストラヴァガンスを叩くようなガールじゃなかったはずじゃないか。」

「…」
どこからか、男性の声が聞こえてくる。その内容の微妙な意味不明さに、レイタは若干眉を上げながら答えた。

「それは、いつもよく喋るとは、限らないわ。」

「ふふ…本当に…本当に、、、、久しぶりの再会じゃないか、レイタ。」

「私はあなたの事を知らないわ。」
眉をひそめるレイタ。

「そんな事は無いよ。今はただ、艦長電球どもに忘れさせられているに過ぎない。でもすぐに、マイ・ラブ俺の事スイーツ・メモリーズ思い出すリメンバーはずさ。」

「…」

「まあ、まずは君の事を、もっとよく知らないとね、、、、、、、、、、、。」

「これと言って、教えるほどの事は無いわ。」

「謙遜はしないでよ。俺達の仲ラブ・ミー・ドゥーじゃないか、レイタ。」

冷たい表情で、レイタはペング達を見回す。
「繰り返すけど、解除コードが知りたいなら無駄よ。私は一般の有機生命体とは異なるので、どんな拷問にも耐える事が出来るわ。だから聞き出す方法が無い。」

「うん、確かに君が独特ユニクロで、普通の生命体より優れたバスガス爆発所がある点は知っているよキャタピラー。」
聞こえてくる声は、あくまで余裕があり、優しい響きだ。

「…」

「でも、俺達がペング生命体クエッ、クエッ、ガーガーガーである事に変わりはないディス・イズ・ア・ペンからね。」

「…あっ」

「くえっ。」
ペングが一匹レイタの耳元に近づき、機械をセットする。

きゅいいいいいいん…。
「…」
ドリルがセットされる。ドリルは回転を始め、動けないレイタの頭に、穴を開けて入り込みだした。



「ま、待ってくださいよ。博士! お願いしますって!」

「きゃあっ、近づかないでよ! キショい! キショい! あーもう視界から今すぐ消え去れっ!」
夜のシンカワサキ。木々の中を歩いていたユキノに、マコトが追いすがる。

「何で? 何でそんな状態で、普通に会話とか出来る訳?」

「え、あ、まあこれはもう、慣れで…」
左半分位の胴体が、バブル状に半透明になったり、飛んでいったりしつつ、マコトは平然とした様子で頭をかく。

「慣れるなよ…」
呟くユキノ。

「博士、俺からも頼みますよ。」

「だーっから、あんたもおかしいでしょ! 何でリコーダーが頭から突き出てんの! もう、あんた達皆変よ!」

ラ=フォージの後ろにやってきた副長は、自分の笛に手をのせる。
「これは…前は花とかの時期もありましたけど、ナマモノだと手入れが結構大変だ、って事で…」

「ちーがーうー! 絶対そういう問題じゃないー!」
コクレーンは頭を抱え、首を振る。

「博士ぇ、いい加減あたし達の言う事を聞いてくんないとぉ、」

「だーっ! ミサトさん何で裸なのっ! 服着て、服っ!」

「え、だって…もう酔いも抜けたし。ねえ?」
不思議そうな顔でトロイはライカーに目を向ける。肩を上げるライカー。

「なーんで酔いが抜けると裸なのよっ!」

マコトは首を振る。
「博士、とにかく今は、ふざけてる暇は無いんですよ。」

「ふざけてんのはあんたらだっ! 全部っ!」

「「「えっ!」」」
お互いを見合う三人。

「だから、何でそれで驚くのよっ! おかしいよ! あんた達根本的に間違ってるって!」
叫ぶユキノ。

ライカーは笑顔を作りながら、コクレーンに近づいた。
「あ…とにかく、話は分かってもらえましたよね? それはまあ色々博士の目から見れば、おかしい部分もあるかもしれませんけど、何しろ24世紀から来た人間なので…」

コクレーンは「はあ」と息をつく。
「24世紀、ねえ。それで? あなた達は、エヴァーとか言うデリヘルを利用しつつ、トレンディードラマよろしくハイソな恋愛模様を織り成してるんでしょ? んじゃあ、略してエヴァトレ、ってとこだね。」


「はあ、まあ…」
肩をすくめるライカー。

「ねえ…あなた達みたいな格好で、そんな意味不明な事言われて、普通の神経の人間が信じられると思う?」

「…普通の神経?」
思わず聞き返すミサト。

「マコト君。」

「はい。」
ライカーに頷くラ=フォージ。

「僕達が乗ってきた宇宙船が、今ちょうど見えるんですよ。」

「…」
空を見上げるコクレーン。

「博士の望遠鏡を、さっき調整しました。」

「え…?」
眉を潜めながら、ユキノは近くにある望遠鏡に近づく。その鉄骨製の望遠鏡は4、5メートル程度あり、ちょっとした天文台レベルのサイズだ。

「これに、映ってるの? あなた達の宇宙船が?」

「はい。」

「…」
疑わしげな表情のまま、コクレーンは望遠鏡のスコープに右目をあてる。


丸い鏡面に、青黒い空が映っている。そしてその中央に、強化段ボール製の宇宙船がへろへろと浮かんでいた。


「え、え?」
慌てて目を離し、望遠鏡の筒に目を向けるユキノ。

「え、どういう事? 一体どうやったの?」
ユキノは望遠鏡の各部分を見るが、細工がされたような跡は見当たらない。

「ですから、あれが僕達の乗ってきた船なんです。」

「え、嘘!?」
もう一度望遠鏡を覗くコクレーン。

望遠鏡には、空に浮かぶUSSエバンゲリオンが小さく光っている様が映し出されている。

「え…え? だって…何か旗、立ってるよ?」

「そういう船なんです。」
誇らしげに答えるリョウジ。

「何だかものすんごくボロっちいよ?」

「そういう…船なんです。」
リョウジの顔に、やや斜がかかる。

「え…じゃ、ほ、ホントにホントなの?」
ユキノの言葉に、3人は微笑んだ。


「信じてもらえましたか?」

マコトの言葉を否定したいかのように首を振りながら、ユキノは口を開く。
「で、でも…そんな、未来の宇宙飛行士さん達が、一体私に何の用?」

「ですから、さっきも言った通り、博士の助けが必要なんです。明日ここで、予定通りミサイルの打ち上げ、ワープ飛行のテストをやって下さい。そうすると、船のツナ缶反応に気付いた宇宙人が、こちらにやってきます。」

「宇宙人? それって、悪い奴?」

首を振る全裸。
「良い奴よ。ちょっとナッパ臭いけど。彼等は、地球には何の関心も持ってないの。地球は野蛮すぎるから。でも明日偶然、地球の近くを通過する時にツナ缶反応を確認して、それで彼等は、予定を変更して地球に立ち寄る事になる。」

「…」

「博士、これはとても大事な事なんです。明日、その宇宙人達があなたと出会って、そして、他の宇宙人達も地球人の存在を認めるようになる。また地球人達も、外の世界の事を知るようになる。そしてそれが、地球の新たな、明るい未来を切り開いく第一歩となっていくんですよ。」

ラ=フォージの言葉に、シリアスな顔のコクレーンは腕を組んだ。
「つまり…明日のワープ飛行が成功しさえすれば、私は地球人の歴史の中でもものごっつ有名な、ものごっつ英雄になってる、って事なの?」

「え…え、ええ、確かに、その通りですよ。ユキノ・コクレーン博士と言えば、連邦で知らない人はいません。」
笛にやや汗をかきつつ頷くライカー。

「そう…ふふ…ふふ…ふふ…うふふふふっ…」

「「「…」」」

ユキノはがば、と顔を上げた。
「やるわっ! やらいでか! やります・やる時・薬剤師! アル・ヤンコビック矢野顕子っ! ついに、ついに私のこの頭脳が正当に評価される時が来たのねええいっ! 世の愚民ども、さぁ今すぐ私の前にひれふすのよっ! ふはは、ふふふっ、ふはははははははあああああっ!」

「「「…」」」
コクレーンに圧倒された様子で、3人は口を開けたまま固まっている。

「…あ、ねえねえ、私ってもしかして、お札の顔になったとりとかするの? うわ、ねえ、欲しい! あれ? もしかしたら、むしろ通貨単位になってるのかな? 「1ユキノン」とか…うわー、何か照れるなーっ、それは。あ、っていうかそもそも、国の名前がユキノチャン帝国とかなってたりするの?」

「「「あ、はは、はは、は…」」」
急に元気になったコクレーンを前に、3人は一様に引きつった笑顔を返した。


ピカの首が取れている間に、ピカから携帯フェイザーを奪ったらしいスローンは、叫び声に近い声を出しながらそれを構えた。
「動かないで! 少しでも動いたら撃ちますよ!」

「わ、分かった。この通りだ。これ以上東京コミックショーごっこを続けるつもりはないから、まずは落ち着いて、こっちの話を聞いてくれないか。」
既に体の組み直っているフユツキが両手を上げる。

「…」

「でも、東京ミュウミュウごっこは続けても構わないかね? なんなら東京プリンごっこだけでも」

「動くな!」
フェイザーを突きつけるスローン。豆カラを取り出しかけたピカードは、それを頭の穴の中にしまい直す。

「とにかく、落ち着いてくれ給え。」

「あんたは一体、どこの人間なんだ! ロリエ・フィットガード派か? ウィスパーネオ・やわらかフィット派か? それともゴミ箱で拾った古新聞派かっ!」

両手を上げたフユツキは首を振る。
「いや、そのどの派閥の人間でもない。私は君達の味方だ。君達の力になりたくて、ここに来たのだよ。」

「味方? そんな言葉信じられない。少なくとも、あなたみたいにそうやってずっとマンガのインド人みたいな首の振り方をしている人の言う事はね!」

「…そうか、君達の時代ではこのジェスチャーは違う意味があったのかもしれないな。」
フユツキは慌てて、自分のアクションを中断した。

「時代?」

「ん? ああ。私は、24世紀から時を駆けて、ここまでやってきたのだよ。もちろんマシンガンを構えれば、取りあえず「カ・イ・カ・ン」とは言うぞ。そしてモルモン教徒だ。」

「誰がそんな話、信じるんですか。とにかく、僕を今すぐ、ここから出してくれ!」

「出て…どこに行くのかね?」

「どこ、って…帰るんですよ。家に。」

「シンカワサキか?」
ピカードは微笑み、肩を上げた。

「ちょうど良い場所にいる。ここに出入り口があるから、出たいと言うなら開けてあげよう。…良いかね?」

彼ら二人は、通路の行き止まりの場所にいる。フユツキは手を上げつつゆっくりと移動し、そこの壁面のパネルに手を触れた。

ウイイイイイイイイイン…。


「な…な…」
フォースフィールド越しに見えてきたものに、ソウイチロウは目をまばたかせ、そのまま絶句した。

眼下には、宇宙空間から見下ろした地球の景色が広がっている。比較的高度は低いらしく、地球全体が見渡せる訳ではないが、それでも普通の飛行機で見れるような「縮尺」ではない。

「こ、これは…」

「この辺りが、ナカウラワ国だな。この辺りがワラビ国。ヒガシウラワ国に、ムサシウラワ国。それからあそこはキタウラワ国で、そっちがウラワミソノ島。」
地球のあちこちを指差してピカードが言う。

「そん、な…」
呆然とするスローン。

「見ての通り、私達は今、宇宙船の中にいる。帰るのは構わないが、ここからチョクに行くのは、素人にはお勧めできない、だな。諸刃の剣だよ。まあ、何が諸刃の剣かは、ここでは一切教えられないがね。一々テンプレ作るのも、面倒極まりないし。」

「…あ…あ…」

フユツキはにこやかに、スカートの両端を上げる風の仕草をしてみせた。
「ビューティー・フユツキ・コウゾウ・ピカードだ。長いから、愛河里花子と呼んでくれて構わないよ。君の名前は?」

「…そ、ソウイチロウ・スローン、です…。」

「銃を、降ろしてはもらえないか?」

「…、…」
逡巡するソウイチロウ。ソウイチロウは、フユツキと、眼下の地球とを交互に見る。

「…っ、……」
ソウイチロウは、息を漏らしつつフェイザーをフユツキに手渡した。

「ありがとう。」

ピカードはフェイザーを手にとり、コントロール部の表示を見る。ピカードは笑いながら、軽く肩を上げた。
「目盛りが最大にセットしてある。…このビームを受けたら、一生、島谷ひとみレベルのうさんくさオーラを発し続ける体質にされてしまう所だったよ。」

「…未来の武器を使うのは、初めてだったんで…」
ソウイチロウは申し訳無さげに答えた。


ぷしゅう。
ドアが開く。

「うう、うう…ぐずっ。」
目を真っ赤にはらしたゲォーフが、鼻水をすすりつつブリッジに入ってきた。

前方に座っているホークに、ゲォーフは近づいた。ホークは首からナプキンをかけ、ステーキを食べていた所のようだ。
「状況は?」

「え? あ、はいぃ。ええと…、あ、ペング達が、船のメインパワーを切断しましたぁ。…はむ、はむはむはむ。」

「ぐす…メインパワー…一体何の為に?」
首を傾げるゲォーフ。

「さあ、どうしてでしょう?」

「…レイタ少佐なら、何か分かるか…レイタ少佐は何処だ?」

「ええとぅ…反応は無いみたいですけどぉ…むは、むはむはむ…」

「むう…それでは、艦長は?」

「さぁ? それより少佐、このお肉は本当に美味しいんですよぉ。パリのアルベージュっていう所の総料理長がぁ、産地直輸入の紙粘土をステーキっぽく味付けして」

「うわ、うわ、うわああああああああああああん! 艦長もレイタ少佐もいないではないかああああああああああっ! 」
ゲォーフは顎鬚を瞬時に真っ白にさせながら泣き叫んだ。

「わ、ステーキが!」
ゲォーフの泣き声で、ホークの食べていた紙粘土がぼろぼろに崩れていく。

「艦長が、艦長が行方不明だなんてっ! まだ手編みのセーターも、自作のポエム集も渡せていなかったのにっ! 嘘だ、嘘だああああああああっぼうげぼげぼおっ。」
びしゃびしゃびしゃっ。

紙粘土に、ゲォーフの泣きゲロがトッピングの如く降りかかっていく。


「聞きたいんだけど…私の腕に人工皮膚を移植する事に、一体どういう意味があるの。」
機械付きの寝台の上で、両手両足を固定されたままのレイタ。レイタの右腕は、一部皮がはがされ、そこに新しい、肌色の皮膚が移植されている。

「それに…目の前に、食用ガエルが入ったクリアケースがぶら下げられているのも理解に苦しむわ。ペングの主食はメザシのはずよ。」

「君は本当に、質問ばかりするんだね。」
また、例の声が響いてきた。

「…良いよ、そこまで言うなら付き合ってあげよう。」
声と共に、機関室の天井から何かの機械音が響いてきた。

天井から、コードにぶら下がって人の胴体が降りてくる。その胴体は上半身だけだが、どうやら生きているようだ。機械製の脊髄が胴体から垂れ下がり、うねうねと動く。降りてきた胴体は、床に立っていた同じく機械混じりの下半身と合体。体からコードが外れ、そこでそのヒューマノイドは、普通に歩きだし、ポーズをとってみせた。

「久しぶりだね、レイタ。元気そうで安心したよ。」
にこっ。

黒マント、黒装束、黒い革手袋に黒いバンダナの男が、そう言って微笑む。

レイタは無表情ながらに目を見開く。
やがてレイタは、目の前の青年に、やや上ずった声で問い掛けた。
「…あなたは…クラッシャー君?」

はっ

銀髪の青年の表情は瞬時に一変した。
「俺をクラッシャーと呼ぶなああっ!」

「…」
驚き半分、侮蔑半分の顔付きで、レイタは青年を見る。

「…あ、ごめんレイタ。君にきつく言うつもりは無かったんだ。ただ、」

「少なくともさっきの言い方では、自分がシンジ・クラッシャーであるという事を認める事になるわ、クラッシャー君。」

「だからクラッシャー君と呼ぶなっ!」

「じゃあ、クラッシャーどん?」

「違うっ!」

「…クラシッャー君とかは、言いにくいと思うわ。」

「言いにくい以前に言えないよっ!」

「山田隆夫。」

「何で! っていうか全然関係無いじゃないかっ!」

「クラッシャー板前。」

「ダジャレかよっ! しかも超絶レベル低過ぎっ!」

「志茂田景樹。」

「中途半端に古いよっ!」

「消しカス刑事。」

「そこはかとなく不愉快だっ!」

「安西ひろこのような、あながちそうとも言い切れないような何らか。」

「何なんだよ! っていうかもうそれ人名じゃないだろっ!」

「実は隆夫。」

「戻るのかよっ!」

「と思わせておいてぼんちゃん。」

「シベ超なのかよっ!!」

レイタに叫び疲れ、青年は肩を上下させている。
「ぜー、はー、ぜー、はー…」

「「なのかよ!」って、今時恥ずかしい突っ込み方よ、クラッシャー君。」
目を三日月にさせてこちらを見るレイタ。

「いや、そういう問題じゃなくって…とにかく、いくらレイタでも、俺をクラッシャーとは呼ばないでくれ。もう俺は、あんなマッド両親に付けられた名前なんて遥か昔に捨てたのさ。」
ようやく自分の調子を取り戻したらしい青年は、誇らしげな表情で、自分の胸に手を当てた。

「今の俺、我が名は、キョウ・威狩・ブラッククロウ・神人光・ケミカルまほろばダークダックスだ。レイタは特別だから、「キョウ様」って呼んでくれて構わないよ。でも他の愚かな人間達には、称号であるところの「ペングキング」以外の呼び方は認めない。もしそれ以外の呼び方をしたら、そいつの子宮を即刻フェイザーで」

「クラッシャー君、いくつか聞きたい事があるのだけど良いかしら。」

「だからキョウって呼べって言ったっしょ! なんまらムカつくべっ!」
息込むキョウ。

「…それでは、キョウ(自称)君、」

「そんな犯罪者みたいな言い方すなっ!」

「…キョウ(自称かつ他称でもあると本人は頑迷に主張)君、」

「長過ぎるよっ! だからキョウで良いだろ、キョウでっ!」

「…」

「…」
レイタとキョウは、お互いを睨み合いながら、じりじりと沈黙を続ける。

レイタは無表情に、軽く息を漏らした。
「…良いわ、それではキョウ、君。…あなたは何故、ここにいるの? あなたは宇宙暦47754.8に、トードー・トラベラーと一緒に宇宙の未知の力を学びに出かけていったはず。」

キョウは笑った。
「うん、そうだね。でもそれを君が言うのはおかしいよ、レイタ。君がその事を覚えているはずはないんだから。」

レイタは軽く眉を上げる。
「…キョウ君は知っているはずだわ。意図的にデータを削除しない限り、私は一度過去に経験した事は、忘れる事はないのよ。」

「普通の事象はね。でもレイタ、君の理解を超えた事象だって、世の中には存在するんだ。トラベラーと一緒に旅立った時、皆は俺が死んだ、と思ったはずだよ。」

「あなたは生きているわ。」

「事実はね。でも死んだと思い込んだ。実際地球人等から見れば、それに近い状態だったしね。…でもその後、俺はトラベラーの元で何年も…それどころか、何百年も、修行を重ね、自分のこの、未知なる能力を伸ばし、ついには、ここにこうやって、「生きて」戻ってくる事が出来るようになったんだよ。皆の中の、俺の記憶も復元させて。」

「…」

「今の俺の能力を見たら、驚くだろうな。俺の作った剣、エターナノレ・スウォードは、世の中の森羅万象を切断してしまう。しかも俺はその剣の先から真紅の火炎ドラゴンズ・ブレスを噴出させる事も出来るし、水道水カルキ消毒済み軟水サラダ油豊年べに花油500グラムだって飛ばせられるんだ。」

レイタはキョウを見て、まばたきをした。
「だとすれば、皮肉ね。そこまで頑張って能力を伸ばしたにも関わらず今のあなたは、ペングに同化させられてしまったのだから。」

「え?」
キョウは一瞬ぽかん、とレイタを見る。次の瞬間、キョウは自分の手を頭にやった。

「あはは、それは違うよレイタ、面白いな、君はコメディアンの才能があるんじゃないのかい? …くくく、くくく、あはは、あーっはっはっはっはあっ! はっは…かはっ、けほっ、げほげほっ、くしゅっ!っかーちくしょーめえ。」

「…あなたも相当面白いと思うわ…」
呟くレイタ。

「くくく…レイタ、違うんだよ。逆さまだ。ペングが俺を同化したんじゃない。俺が、ペングを同化させたんだ。俺がペングに従うんじゃない、ペングが、俺にかしづいているんだよ。」

「…」

「…」
キョウとレイタは、お互いを見詰め合う。

レイタは、悲しげに目をそらした。
「…キョウ君、悪い事は言わないわ、一度ドクターの…」

「違う!」

「…所で改造を」

「治療って言え! じゃ、なくて違う! 良いかレイタ、自分の周りを見ろ! 全員ペングだろ! 俺だってさっき、ペングのテクノロージが無ければ絶対に無理な状態から登場してるじゃないかっ!」

「…つまり、あなたはペングに同化されているという事だわ。」

「そうじゃない! …いや、確かに俺も、今はペングだ。それは確かにそうだが、俺は、他のペングとは立場が全く違う。暑っ苦しいペンギンの着ぐるみを着て、大きな機械の一つの歯車になっている彼らとは違う存在なんだ。」

「サーモグラフィーの分析によると、あなたの服の方が遥かに暑っ苦し」

「うるさい! とにかく、俺は立場が違う。俺は今、他の全てのペングをコントロールする立場にいる。「我々」がペングなんじゃない、「俺」が、ペングなんだ。つまり今の俺は、「ペングキング」なんだよ。」

「…」
無言でキョウを見上げるレイタ。

「…だから「うわ、かわいそー」って目でこっちを見るなっ!」
半キレのキョウは湯気を立てた。


「うわあ…」
エバンゲリオンの通路を歩きながら、感心した様子でスローンは声を漏らす。

「一体どうしたのかね?」
隣を歩いているピカードが振り向いた。

「いえ…本当に広い宇宙船だと思って…」
「直腸」という習字が何枚も貼られている壁を見回しながら、ソウイチロウは答える。

「全長685メートル。ただし気分により、20%から600%の範囲で増減。おおむね24デッキで、8億4000万枚の強化段ボールが使われている。」

「8億! 僕達なんか、2枚の段ボールをコンビニの裏手からくすねるのにどれだけ苦労したか…」
軽く首をふるスローン。

「あの、艦長。この船って作るのに、いくらかかってるんですか?」

ピカードは一瞬フタをパカパカさせてから、スローンに答えた。
「実を言うと、タダなのだよ。」

「タダ!?」

「未来の経済は、21世紀のものとはやや異なっていてね。人々はお金の為に働くというよりは、丹下桜やら小西寛子やらが今後どこへ行ってしまうのかを思い悩む為に働いているんだ。」

「…何だか、随分ヤな未来なんですね…」
呟きながら、通路を通っていくソウイチロウ。


角を曲がりながら、ソウイチロウは話を続ける。
「それで、結局僕達は、一体誰に襲われたんですか?」

「ペングという奴等だ。」

「ペング? 何だか随分可愛らしい名前なんですね…」

ピカードは頭をカランコランと鳴らす。多少、ボルトが緩んでいるようだ。
「名前はそうかもしれんがな。中身は凶暴だ。半分機械で、半分は私達のような有機生命体なんだが、元の生命体は、ヒューマノイドというよりは地球で言うペンギンに近い。」

「へえ…じゃあ、ペングって名前もそこから来ているんですか?」

フユツキはドシリアスの目でソウイチロウを見る。
「何度か、その質問をペングに投げかけた者がいる。…彼らは漏れなく全員、カレーの王子様とハヤシライスを見分ける強制労働をさせられ、最後には…」

「…」

「…」
フユツキが、話の途中でふと立ち止まる。ソウイチロウは彼に倣って前方を向いた。

「え? …っ! きゃ、きゃわいいっ!」


くえっ、くえくえっ。
向こうの通路に、ペング達が彼らのモジュールを並べ、とことこと行き来していた。

「…きゃわいいか?」

「あ、あれって、もしかしてペングなんですか? うわっ、めちゃくちゃ可愛いじゃないですか!」
スローンは目をハート型にさせながら、1人はしゃいでいる。

「…いや、可愛いかどうかは分からんが、中身は凶暴なんだ。一度同化させられたら二度とは戻れん。残念ながらここの通路しか通れる道が無いようだが、充分注意してくれ給え。」

「かーわーいーいー。」
「くえ、くえくえっ。」

「聞けやっ!」
近くのペングを撫でているソウイチロウに叫ぶフユツキ。

「…本当に凶悪なんですか?」

「良いから、今すぐ離れ給え! まあ、彼等は、こちらを脅威とみなさない限りは、個体に対して攻撃してはこない。だから、おとなしくここを通るだけなら何とかなるのだよ。彼らを刺激しないように、素早くここを」

「ねえ、君はこれから暇なのかな?」
「くえくえ。」

「ペンギンナンパしてどうするのだっ!」
ぷしゅーっ。

ピカが(赤いものを噴出しつつ)叫ぶ。

「…あ、思わず。余りに可愛いから…」
ふと我に帰るソウイチロウ。

「か、艦長。この事は、コクレーン博士には黙っておいてもらえませんか。」

「ん? …どの事かね?」

「ちょっと浮気したと思うと彼女すぐに、格好の責めネタに使うんですよ。だからこんな事知られたら、もう僕の体も持たなくて…」
ぽっ。

スローンは両頬を染める。

「喜んでるようにしか見えんが…良いからとにかく行くぞ。ここの長居は良くない。」
ピカードはスローンの手を無理矢理引いていく。

「いやんっ。」
甲高い声を上げながらついていくスローン。


通路を行き来するペング達をよけながら、二人はペング居住区の角に差し掛かった。
ペング達を見回し、ふとピカードは、何かに頷く。

「…よし。」

「どうしたんですか?」

「…」
ぴぎゅんっ!

「えっ?」

フユツキはフェイザーを構え、近場の壁に立っていたペングに、ミサトカレーを発射した。
「ちょ、ちょっと、何やってるんですかっ!」

火花を散らし、ペンギンは倒れる。それを合図に、一斉に通路のペンギン達がこちらを向く。

「…」
ぴぎゅん、ぴぎゅんっ。

「艦長!」

「よし、これ位で良いか。」
フェイザーを仕舞うピカ。

ぽっ
「…もしかして艦長って、可愛いものを見るといじめたくなる性癖の」
「違う。もちろん、君のケツマムーコにも興味は無いから安心し給え。」

「そんな下品な話じゃありません! 僕はあくまでプラトニックな」

「良いから来給えっ!」

ぐいっ
「ああっ、そんな強引にっ!」(ぽぽっ

ペング達がこちらにぞろぞろと近づいてくる中、二人は通路を走っていく。


「はあ、はあ…」

部屋のドアの前まで来て、スローンは息を切らしながら立ち止まる。

「何でここで止まるんですか? ペングはすぐに来ますよ。」

「分かっている。今それに対応する物を探しているのだよ。」
フユツキは壁面にあるタッチパネルモニタを操作しながら答える。

「春日部の魔法少女物は…いや、あれは象さん魔法が上手くないといけないしな…それにあれは微妙ブス揃いだからビューティーな私には出来る役が無いし…となると、」

ぴぴ、ぴ、ぴ。
「…よし、これか。」
頷く艦長。

Holonovel 'Mayoon'

「…一体何ですか?」
パネルの表示に、ソウイチロウは眉をひそめる。

「どちらがどちらか…まあ、やはりビューティーが、私のキャッチセールスポイントだからな。」
フユツキは楽しそうに笑った