ジャングル。所謂『密林』、即ち熱帯雨林と此処等一帯を日本人は混同しがちであるが、それはれっきとしたモンスーン地帯…雨季と乾季を持つ落葉樹の森の事を指す。一年の半分は容赦無き緯度十度代の太陽に照らされ、赤いラテライトの土壌は日干し煉瓦の様にひび割れる。後の半分は…今のように、ひたすら降り続く、雨。ここより遥かに標高の低いイラワジ・デルタ、或いはカンボジア領内であれば、最小期の何倍にも膨れ上がったトンレサップ湖の増水や、水没する平原にお目にかかれる事だろう。その間、殆どの車両の機動は制限される…それは、やがてアラカン山脈を望むこの森でも、同じ事か…彼等にとっては絶好の機会に違いない筈だ。
「大丈夫ですか…中尉(ルテナン)。防水シートをお貸ししましょう。」
ジープ…驚いた事に三菱のJ57だった…の助手席から私の方を振り返ったマウン氏が、ギアの脇に置いた黄土色のバッグ(見覚えが在る…恐らく使用済みのTNT爆薬運搬嚢に違いないだろう)の紐を解いて、中から青いポリ袋を手渡してくれる。受け取ったそれを、膝の上のノートパソコンに被せて、幌の隙間からひっきりなしに滴る雨粒から守る事にした。
「お気遣い無く。最低限のものは、用意してきましたので。」
流暢な…標準語と言う意味では私より正しい発音だろう…日本語を操るマウン氏は私を「中尉」と呼ぶ。欧米などでは退役軍人を現役時の最終階級で呼ぶのは珍しい事では無いが、やはり違和感は拭えない。『自衛官』は『軍人』では無い…いや、有り得ないと現役の頃から認識していたし、一貫してその自覚もありはしなかった。私は、食い詰めている一介の報道ゴロに過ぎないし、只の『元・2等陸尉』、犯罪でも犯した時に、三面記事にそう書き立てられるだけの存在でしかない。違うのだ。彼とは…此処ら一帯の山道には通じている、とヤンゴンの事務局が太鼓判を押してくれたドライバーは、、濃緑色の木々の間に泥沼と化した路が吸い込まれる手前で、車を止めた。どうやら此処からは歩きと言うことらしい。ゴアテックスの雨合羽、小枝に引っかけただけで破けてしまう忌々しい代物だが、これが無ければとても耐えられる湿度ではない。ボストンバッグから取り出してみると…さらに忌々しい事に、ダニ共がたかっている。何時の間にバッグの中にまで侵入したのか。さび付いた取っ手を捻ると幌のドアを開け、軽く手でひっぱたいて連中を放り出す…少なくとも、あの痒みは四分の一くらいにはなるだろう。ヤマヒルに食われるよりはましだ。サファリ・ジャケットの上から着込むと、やはり首筋に不愉快な痒みが走った。デイパックを背負うと、既に車外に出て待っているマウン氏に合流した。早速重い雨を吸いこんで動きの悪くなった体を引きずり、暗い木々の間、山道を登り始める。足下は…ズルズルと滑る泥沼だ。
「くどい様で申し訳ないのですが…ルテナン。取材の歳には…」
浅黒い顔に白い歯を覗かせて、『首相派』…『ビルマ民主戦線』のスポークスマンは薄暗い闇の中、申し訳無さそうに笑う。実に『日本的』反応だ。留学以来一貫して松本に住み、大層な口をきく割には財布の紐は硬い、日本の『進歩的』な支援者連中との折衝に勤めてきた、その苦労をつい、しのんでしまいそうになる…
「御心配は無用です。僕は政治的意図のある取材をしに来た訳では無いんで…只の若者向けゴシップ雑誌の特集記事なんです、あくまで。」
共同通信やロイターにプレスカードを発行してもらえるような身分ではない、私は…単に、編集者をしている学生時代の友人から持ち込まれた仕事に、家賃を払う為に二つ返事で飛び付いたに過ぎないのだから。彼等にしてみれば、何にせよ『世界から忘れられない』と言う事が唯一の希望なのだろうが。
十分ほど登ったろうか。体温が上昇し、吐く息が…白い。通気性以外なんの取り柄も無いこの雨合羽を着てさえ、まるでサウナスーツを着て歩いているような気分になる。暗い広葉樹の影に、トタン屋根やOD色のシートを木の幹に張っただけの屋根が見え隠れし始めた…ここが目的地…『首相派』の難民キャンプだ。
資材不足でバラックの数が足りない(この点は強調して欲しい、とマウン氏に頼まれた)状況を補う為に張られた天幕、トラックの防水シートを洗濯紐で張り渡しただけの物だったが、その下…ぶら下る洗濯物、十年前の戦隊ヒーローものの小さなTシャツなどが混じっている事から、所謂先進諸国から送られてきた古着なのだと思われるが…をかき分けた先、ほの明るいガス・ランタンの弱々しい光の下、彼は…いた。
7.62ミリ弾の空き箱の上に座り、周りに座って待って居る、5歳から8歳くらいの子供達の傷…間違いなく、迫撃砲弾の破片にやられたのだ…に暗褐色の消毒液を塗り、ガーゼを当て、包帯を巻いている…手当てを終えた幼い少女の、恐らく何箇月も洗っていないであろう頭を微笑んでそっと撫でている、あまりに華奢で、女性的とすら言える容貌をもった、日本人の青年…安手のジーンズにキャラバン・シューズを履き、オリーブ・ドラブのTシャツを着た…本当に、彼なのか?
「碇…信二君?」
唐突に…初対面で悪印象を与えてしまったかもしれないが…掛けた声に、彼は振り向いた。
確信した…この男が、そうだ…二十歳過ぎの男には見えない…まるで、少女のようだ…あたかも日本人形の様な、整った顔立ち。細い顎…しかし。あの、眼…
その、小さく収縮した瞳孔。脊椎を走る、悪寒?いや、違う、これは…戦慄。
喩えるなら、それは…迷い込んだ密林の中で出くわした、犬科の大型肉食獣。間違いなく…餓えている。当りに満ちる、亜熱帯の腐食した泥濘の匂いが、急激に強くなったような気がした。
それが、傭兵 碇信二との邂逅だった…
「カレン族の連中ですよ。この子達の傷…日本製でしたね。」
一瞬混乱した後、彼の言葉の意味を理解した。俄かに信用する気には成らなかったが。回しているS-DATのテープ残量を、確認する。しかし…彼の発言に何らかの政治的意図が在る様には思えない。碇 信二は三歳くらいの男の子、赤褐色の泥が乾燥してこびり付いた、青いビニールシートの上に座って待っている子供達の最後の一人の手当てを終える。元々は白かったのであろう薄灰色の木綿のシャツ、袖から出ている、変えたばかりの白い包帯が巻かれた肘の先は…存在しない。
「迫撃砲だね、その傷は…武器供与に噛んでるって言うの?日本企業が。」
笑ったのだろうか…あれは。手当てを終えた、ビルマ族なのであろう男の子が青年を見上げる。祖先は中国南部に住む少数民族に極めて近い彼等は、我々と同じモンゴロイド…しかし、この湿気と泥濘に満ちた半島の人々はやはり、ゆるやかな「南方」と言う印象を我々に与える…長年に渡り、「文明化」と称する侵略の根拠とされて来た…私の中にもやはり傲慢で下衆な「一等国」意識が眠っているという事なのか。子供特有の、小さな顔の造りに対して大きな瞳…褐色の肌には良く映える。楽しそうに、笑う…生涯、その腕が再び生える事はない。それを理解しているのだろうか?子供の笑顔と言うものは、何処に行っても同じに見える。少なくとも、私には…読み取れなかったのは、この、日本人青年の表情。
見上げる幼子に微笑み返す、その一瞬浮かんだ別の、哄い…嘲笑か?恐らくは、私への。視線は子供達に向けたまま、彼は続ける。
「見せましょうか、安定翼の破片。馴染みの大手自動車メーカーの刻印が在りますよ。ロットナンバー付きで…タイ国軍経由で流してるんですよ。砲弾、車両、それと…化学兵器。」
微かに笑うような、静かで中性的な声…聴き様によっては、はにかんででもいるかの様にさえ聞こえる。いや…楽しんでいるのか?その現実を…
「化学肥料だ、って聞いてるんだけどね。濃縮すれば、G・ガスを作るのは簡単だけど…それと、意図して輸出してる訳じゃない。」
恐らく2012年度分のODAで建設された、マンダレーのケミカルプラントを指しているのだろう。有機燐酸系の肥料を作る為の…組成としては、極めてG剤…神経ガスに近い。しかし、文化包丁一つとった所でジャンキーや変質者が握れば凶器になる。「銃が人を殺すのではなく、人が人を殺す」のだ。その事に関する責任を企業側が問われるのは、筋違いと言うものだろう。まして…彼は日本人なのだ。そんな私の「過剰な防衛反応」が可笑しかったのか、彼は、今度は確実に…破顔する。
「ナショナリストなんですね。以外と…流石は「帝国軍人」って所ですか。別に責めてるわけじゃないんですけど。」
インタビューを始めてから初めて、鳶色の瞳孔が私の方へ向き直る。微かに目を細めるようにして…見透かしているのだろうか、見え透いた、下らない言い訳をせずには居られない…此処を訪れてからずっと私が付きまとわれている「居心地の悪さ」、或いは「後ろめたさ」…あの泥の臭いを?
「気になるんですね…大丈夫ですよ。三日もすれば、きっと…懐かしく感じる様になりますから…」
笑う、傭兵…初めて私の方へ向けた、優しげとさえいえる微笑み。脳裏を過ぎる、疑問…ここへ来た本来の目的を思い出させてくれる…
「失礼、碇君。今回の取材は『週刊ハスラー』の記事なんだ。政治的な話題は少し…ね。」
どうせ書いた所で読者の80パーセント…グラビアのモデルを「夜食」にするのが目的の連中には、エノク語より意味不明な代物であるに決まっている。
「ええっと…碇 信二君。箱根商科大三回生。探検部所属…『WAR FREAK』として、メキシコ、エルサルバドル、中央アフリカ、フィリピンを転戦。ここまでだったよね?」
「ええ…それぞれ所属は、新サパティスタ民族解放戦線、ファランド・ムルチ、セレンゲティ解放同盟、新国民軍です。」
ウォー・フリーク。傭兵…フレデリック・フォーサイスの「戦争の犬達」や、ゲーリー・クーパー主演だったような気がするが、「ワイルド・ギース」の如き華麗な「殺しのエキスパート」のイメージが浮かびががちな世界ではある。少なくとも、我々、「水と平和はタダ」と信じて疑わない日本人にとっては。しかし…その世界も又、揺るぎ無く泥臭い「現実」の一部である以上、結局は我々の「日常」の延長上に存在するものでしか有り得ない事も又事実である。彼等『傭兵』の実体…1970年代以来、アメリカには『オメガ・グループ』と呼ばれる『傭兵募集機関』が存在する。言うまでもなく中央情報局、荒唐無稽なカストロ暗殺計画、『ビッグズ湾事件』を起こして以来、世間のコワモテ振りに反比例してプロの間では白痴扱いされているCIAがパブリシティの為に作った会社…日本で言えば20世紀以来連綿と続く「自衛隊父兄会」(授業参観ではない、念の為)の様なものである。此れは実体としてはNRA(全米ライフル協会、アメリカ最大の圧力団体)の双子の様な物で、「いかにして反共的、愛国的な保守層を育成するか」と言う命題の元に作られた広告代理店であり、大真面目で「戦争のプロ」を募集するなどと言う阿呆な事をしている訳ではない。1980年代、レーガノミックスの時代には、「ランポー」「コマンドー」の如き愛国的イメージを振り撒いて一斉を風靡したものだか…この機関の会誌として、『Soldier of fortune』と言う雑誌が在る訳だが、(初代編集長はロバート・ブラウンと言う悪い冗談の様な名前だった)此れが言わば「戦争マニア」の為のニューズウィーク(別にイズベスチヤでも朝日新聞でも構わない)とでも言うべきものになっており、サバイバル・スクールの広告だの、ガンショップのクリスマス。セールだのと言った記事を載せてマッチョイズムを昂揚するのに一役買っているという訳である。世間に流布する彼等のイメージは、こういった世界が作り上げたアドバルーンの様なものだ。実際1984年には、今となってはロシアのロングセラー軍用ヘリとなっているMi−24ハインドを西側に持ち帰ったものに一千万ドルの賞金を出す(当時はアフガニスタン紛争の真っ最中だった)等と言う懸賞?までやっている。現実には…傭兵と、ファンタスティック・ソルジャー(戦争マニア)の間には、何の差異も存在しはしない。しいて言えば、持っている実用技術や正規軍での兵役経験が問われる位か。(一応述べておけば、フランス外人部隊はれっきとした正規軍である)
石器人の殴り合いならぱともかく、凡そ組織と呼ばれるものが発生して以来、個人の技術風情でどうにかなるものでは無い。戦争と言う奴は…クラウゼヴィッツの言葉通り。「戦争とは血を流す政治」なのだから。実際、太公望が易姓革命の時に記したと言われる「三略・六套」さえ、現代戦の為にウエスト・ポイントやキエフの陸軍大学で講じられる戦術と、殆ど変わりが無いと言うありさまなのだ。(私の同期の友人がその話を聞いて「嫌になるよね、まったく…」と言ったのを思い出す。)
その上で尚、彼等マーセナリー(傭兵)の間には格差が存在する。中世ヨーロッパのスイス傭兵団(実質的には新戦術を売りにした農民一揆集団)以来、人員、装備を調達する「くちいれ屋」(池袋や西成でオッサン連中を集めているその筋のオジサマと同じと思えば良い)レベル(有名処としては、第二次大戦のSS中佐、ヨーロッパで最も危険な男・オットー・スコルツェニー…何でニュルンべルグ裁判で吊るされない!?)に始まり、人気の高い「戦闘インストラクター」、最低レベルの「銃が撃てれば良い」使い捨ての日雇い、所謂「WAR FREAK」まで…ウォー・フリークは「商売」にはならない。与えられる賃金のレベルを考えれば先進諸国の都会でファースト・フードのバイトでもやった方か当然実入りは良い…彼等は本国で稼いだ金を使って装備を揃え、何の生活の足しにもならない報酬(第三世界の生活水準を考えてみれば良い)を受け取りながら、ひたすら血と汗を流し、人を殺す。確実に、受入先の組織とアクセスする為に使った経費の方が高く付く…趣味、なのだ。丁度冬山登山や沖釣りや終末に峠を攻めるのと同じ様な…
彼…ビルマ民主戦線の日本人兵士である碇 信二も又、そんなウォー・フリークの一人だった。
「自分に嘘を付くのが嫌になってたんですね。多分、それと…」
何故、餓えも疫病も、生命の危険も無い日本を離れ、戦場に身を置くのか?この問いに碇はこう答える。
「此処に来れば、何かがあると思った。」
身に覚えの在る回答。私も…昔はそんな事を考えていたのかも知れない。若さに身を任せて子供じみた「冒険」を求め…現実を、思い知らされる。虚飾に満ちた社会が嫌になって居場所を求めた筈の「軍隊」は、世間以上に下らない虚栄に満ちた「ハリボテの要塞」。実社会から隔離された、飼い慣らされた家畜の群れ。見てくれと、官僚主義だけが至上の世界…改めて、その鳶色の瞳を見詰め、問い直す。つい、愚かしい「期待」を込める…
「それで…求めていたものは、見つかった?」
「まさか。此処に在るのは、泥と、雑菌と、貧困…それと、死体だけですよ。」
成る程…「阿呆」な質問に対する、至極真っ当な回答。他に…何が在ると言うのか。良い歳をして、私も好い加減恥知らずなものだ…
膝の上に、ビルマ族の少女を載せたまま、碇は続ける。
「同じですよ。何処へ行ったって…チアパスも、サンサルバドルも、ミンダナオも…勿論、此処も。いや、ここは随分と良い方かな。少なくとも、一日二食は『人の手が付いてない飯』が食えますから。」
随分と食糧事情が悪化している様だ。特に中米は…メキシコ・シティから出る残飯の回収業者も、そこそこ儲かっていると言う話をこの間聞いた所だが。日本円にして、一食5円から十円。量としても少なくはない。見た感じでは雑炊かシチューもどきと言う所か。半年前に訪れた時の「試食」では、味も悪くはなかった…入っている手羽先の切れ端に、誰かの歯形が付いていた事を覗けば。
「チアパスは、もっと酷いんですよ…ラカンドンの農民の一般的な食事は、薄いトルティーヨ、一切おかず無しが普通ですけど、もう、それも口に入らないんです。ガルフストリームの流れが変わって以来、旱魃続きですから…」
メキシコ、チアパス州と言えば屈強なボクサーを輩出する事で有名なラカンドン族の住む土地であるが、同時に中米で最も貧しい地域でもある。尤も、20世紀後半以降、中米一帯で新生児の餓死者が出ないのはコスタリカとキューバくらいのものだが…果敢な戦士の部族として知られる彼等は、原生林の間を切り開いてトウモロコシ…一般に食用とされるスイート・コーンではなく、通常はスターチや配合飼料の原料となる品種を栽培し、それらを挽いて捏ね、薄く焼いたトルティーヨと呼ばれるパンを主食とする。我々の眼から見れば、極めて収穫率の悪い原生種のようなタイプ…環境適応力だけは強いそれらの作物さえ、もう、採れないのか。
「何故、世界の半分が餓えるのか、か…それも、理由?碇君の戦歴、どちらかと言えば共産系ゲリラが多い様に見えるけど。民青や新左翼系の団体での活動経験とか…」
一瞬、眼を丸く…こんな、子供じみた表情を作る事もあるのか…したあと、くすくすと笑い出す。膝の上、不思議そうに見上げる、少女…
「今時無いでしょう、それは…全く、関わりが無い訳じゃ、無いですが。受け入れ団体との接触の過程で、新左翼や右翼団体のつてを利用する事はありますけど。ノンポリですよ、僕は。単に好きでやってるだけです。ただ…」
幼い娘の頭を撫でる、青年。静かに、しかし、実に楽しげな、その笑み。
「好きなんですかね。此処の…インドシナや、中米や、アフリカの人達、生活が。戦役が終わって、一度開発が押し寄せれば、皆、あっという間に堕落してしまうとしても…」
「君は…」
優しげなひかりを双眸に湛えたまま、顔を上げる、肉食獣。その針の穴の如き瞳孔…哄う。
「中尉の、思ってらっしゃる通りですよ。僕は…屍肉漁り、ハイエナと同じ様なものですよ。」
薄暗い天幕の中まで満ちてくる、青臭い泥の腐臭…急激に、嘔吐感に襲われたような気がした。
昔、アフリカの戦場で、ハゲタカに食われる瀕死の少女を撮り、ピューリッツァー賞を受けたカメラマンが居た。当時小学生だった私にも、グラフ誌に掲載された確実に死に行く少女の瞳は、トラウマに近い印象を与えたものだ…それは、決して所謂ヒューマニズムから来るものではなかったが。「近代マスコミは須く皆、ネクロフィリアの様なものである」と筒井康隆は言った。いまや、その片棒を担いでいる以上は、私もその謗りを免れ得ないと言う事なのだろう…死と暴力程甘美な麻薬は、無い。直接それに触れる事が無くとも、殆どの人間がその恩恵に預かる…世界を隈なく駆け巡る情報の網を通じて、今やそれは各家庭に宅配されているのだ。時には「義憤」にアドレナリンを分泌し、時には「同情の涙」を流すと言う、快楽。この世界では、道徳、或いは神さえもが商品として消費される…しかし。
それでも現実は我々の眼の前に横たわる。
少なくとも、私が今、足首を掴んで、足場の悪い上に真っ暗で、殆ど何も見えない森の中を運んでいる男は、確実に、死んでいる。「対岸の火事」でもメディアの中の虚構でも、有り得ない。こびり付いた黒い血の塊や、薄緑色のまだ柔らかそうな化膿した傷から見て、腹部の裂傷が元で、壊死が体中にまわったと言う所か。抗生物質が、不足しているのだ。たっぷりと体液を含んで、形容し難い色に変色した包帯が身体に完全にこびり付いている…高温多湿なこの森では、早めに処理を行わなければ、雑菌の温床となってしまう。幸い、五分ほどで嗅覚は完全に麻痺してくれたが。最後に食事をとってから、八時間以上経過していたのは幸運だった…死体と言う奴は、地中や水中にある時よりも、空気に晒された状態が最も腐敗が速い。菌類やバクテリアにとっては正に楽園…雨季の東南アジアの広葉樹林など、正に「醗酵」を促す「室」の様な物だ。まず腐り始めるのは眼球、それと…生殖器。膝までしかない野良着の股間が、奇妙な形に拉げているのは、気のせいではあるまい。碇の言葉に依れば、彼はあの、腕を失った少年の父親だと言う。元々、近隣の農村に住んでいた彼等一家は、農作業の最中、撃ちこまれた81ミリ砲弾の破片をまともに浴びる事になった…流れ弾だったのか、あるいは多数派の異民族、仏教徒に対する無差別テロか、それは、解らない。何にせよ、ここ数ヶ月の「首相派」とKPLFの戦闘が激化するに伴い、攻勢を強めたカレン族に追い立てられて、周辺一帯の農村が壊滅した事だけは事実だが。
「驚きましたよ、マーチン・マリエッタの装甲車がいきなり森から出てきた時には。」
彼等カレン族は、西側諸国においては大変に受けが良い。カトリックであり、独立当時は社会主義政権であった「ビルマ」政府に対する「果敢」な抵抗は、時折ヒロイックに資本主義諸国のダイニング・ルームに伝えられたものだ。武器も殆どは西側諸国から流れ込んだもの…あの「善意に満ちた」アメ公共が、自腹を切って買い与える。お気に入りの演歌歌手に御捻りを投げる中高年の御婦人方と、良く似ている。自由の戦士、と言う奴だ…彼等が、仏教徒の子供を攫い、洗脳を施して、鉄砲弾に仕立て上げている事など、誰も報道しない…仕方があるまい、商品価値が低いのだから。マスコミは慈善事業では無いのだ…いや、「慈善事業」もエンターテイメントの一種であるからには…
あの少年の無邪気な笑みが、更に現実感を喪失させる。解っていないのだろうか…「持っているもの」の殆どを、失ってしまった事。何の不幸も知らない、とでも言いたげに、笑っていた…それとも…この「匂い」の様なものか?とうに鼻は麻痺しているはずなのに…何故、消えない?この、奇妙な吐き気は、何だ?
「日常、だからでしょう。それがあたりまえなんです。演じなくても誰も責めたりしませんから。そんな余裕、無いんですよ。此処では。」
口にしてみた疑問に、碇はそう言った。
「演じる?…自然な感情じゃないのかい。家族が死んだ、住む家も、生活の保証も無くなった。悲しむ余裕が無いって割には、随分気楽そうに見えたがね…」
「気楽ですよ。彼等は…見えてきましたね、あそこです。」
死体の頭を抱えて歩いていた碇が、顔で指し示す…厚い雨雲に覆われた空は、微かな光も漏らす事はない。夜ともなれば、この湿気に包まれた森の中は、ほぼ完全な闇…微光式の暗視眼鏡を掛けている彼と違い、私には只の黒い空間しか見えない…しかし、この一見温和で物静かな青年の持つ「勘」の鋭さには驚かされる。ノクトビジョンと言う奴は視野が狭い上に、使用者から完全に遠近感、立体感を奪ってしまうものなのだ。モノクロ写真の様に平板な世界…いっそ完全に見えなければ、聴覚や皮膚は敏感に「気配」を捕らえて感覚を補ってくれる所だが…この、滑る山の斜面を、死体を抱えたまま何の苦も無く歩いていく…馴れているのだ。身体が…
死体の頭側を抱えていた彼が立ち止まる。農夫だったものを地面に降ろす…?滑る、感触。足首の皮膚が、ずれたのか…暗緑色の軍手をはめた、右手を見てみる…貼り付いている、糸を引いた粘液質の薄い、膜のようなもの。反射的に生理の命ずるまま、脱ぎ捨てた手袋を森の中に放り込んだ…思ったよりずっと、腐敗速度は早かったのだ…死者に対し、些か失礼な行為である事は、解ってはいるが…微かな気配。笑っているのだろうか。
「良いですよ。有難う御座いました…後は、僕達がやりますから。」
「いや…お役に立たず、申し訳ない。」
ジャケットの胸に固定しておいた、赤いセロファンを被せて遮光したL型懐中電灯のスイッチを切る。暫くして…瞳孔が開いてくる。眼が、暗闇に馴れる。山の斜面、森の中…微かにちらちらと動く、赤く薄暗い、複数の光。どうやら、あの辺一帯が目的地の様だ。
「マウンさんから、聞いてらっしゃると思うんですが…APの件はオフレコって言う事で御願いします。」
肯く…引っかかるものが無い訳ではないが、約束は約束だ…結局、世界は弱者に対し、余りに容赦ない。牙を封じられた彼等に、黙って殺されろ、と言うよりはマシと言うものではないか?無責任な「人道主義」とやらに躍らされるよりは、その方が気が楽だろう。碇は、低い声で彼等を呼ぶ…ビルマ語だ。私には、解らない。首にタオルを掛け、野良着を着た男が森の中から近づき…碇と二言三言、会話を交した後、無造作に農夫を、引きずって行く。死体の存在がなければ、どう見ても「ゲリラ」と言う感じではない。ただのビルマ族の農家のオッサンだ…彼等民兵の中に、正規の兵役経験を持つ者は、多くはなく、結果、現軍事政権、KPLF双方に対し、訓練練度上かなりの苦戦を強いられていると言う話を思い出す。しかし…正規軍にせよ、そうレベルの差があるとは思えないが…彼等がこの土地の農民である以上、必要な能力は全て備えている筈である…
「障害構成については…大体は御存知ですね?」
「ああ…施設科、『工兵』だったんだよ、僕は…」
碇の案内で、森の中に入る…前線の状態を取材させて欲しい、と言う私の申し入れを、幾つかの条件は付けたものの快く引き受けてくれたマウン氏は、彼を通訳、ガイド兼ボディーガードとして付き添わせてくれている…恐らくは、「監視」の意味もあるのだろうが。
「足下…気を付けて下さい。ビニールテープの左には、足を出さない様に…」
足下、木の枝を削った簡単な小杭が5メートル程の感覚で斜面の泥に打ちこまれ、白いビニール・テープ、陸自では「スズラン・テープ」と俗称される奴が張られている…運動会の時、小学校のグラウンドに張る奴と言えば、解り易いだろうか。フラッシュ・ライトを向ける…赤く照らし出された泥の上、白テープから左、約1メートル。突き立てられた小枝から伸びる、足首の高さ、ワイヤー…罠線。対人地雷。1997年以来、世界的にその使用を制限・禁止された…
「近づいて、見たいな…基本的な扱い方は理解してるんだけど。」
「そうですね…御案内します。作業用通路を通りますから…後を、ついて来て下さい。」
木々の間を縫う様にして張られた、白テープに沿っていくと、屈曲点、地雷原全体を意図的に不規則にするため設ける訳だが…一点の杭から、三叉路の様に別のテープが地雷原の奥に伸びる…振り返る、碇。
「ここから先は、発火準備済みです。ワイヤーは圧力解放式の、切れ易いものを使ってますから…」
躊躇する…此処に埋まっている筈のものは、全て実弾だ…プラスティックの玩具を使った自衛隊の訓練とは、訳が違うのだ。一歩間違えれば、少なくとも片足は確実に吹っ飛ぶ。昔、不発だった爆薬に、TNTで再点火させられた、碌でもない記憶が蘇る…退避壕から爆点までの、ほんの二百メートルの距離が、一キロ以上に感じられた…もし、あの時一生分の運を使い果たしていたとしたら…次々と忌々しい妄想が、脳裏を過ぎる。散歩でもしている様な足取りで歩き出す、青年…極力、歩幅を小さくしながら後に従った。30メートル程で、立ち止まる。ライト、照らし出す、足下…あった。屈みこんで確認する。
「へえ…シンプルなもんだな。在りあわせの材料でね…」
肩まで埋まっているのは…スープ、タイ製の、トム・ヤンクンの缶詰。その空缶だった。缶切りで切り取られた口の中、白い小麦粉の様なものが詰め込まれ、其処に、板バネ、洗濯挟み、釘、ショットガンの装薬(弾丸)を利用した、手作りの発火装置が埋め込まれている。左右、V字型に伸びて地を這うワイヤー…長さは3メートルくらいか。
「地上1メートル位まで跳ねますよ。ちゃんと…C-4の中には、釘と鉄片が混ぜてあります。」
伸ばし掛けた手を、つい、止める…跳躍破片式…罠線が切られた時点で一度、爆薬を本体から空中に打ち上げ、数メートルの高さで爆発、半径5〜10メートルの範囲に鉄の雨を降らせる…手作りで作るとは…構造そのものは実に単純だが。
「信管は?散弾位で、着火する?」
C系混合爆薬…ヘキソーゲンを主成分とする、所謂プラスティック爆薬は極めて安定性が高く、ライフル弾の直撃程度では発火しないのだが…増してや、散弾の圧力で着火するとは思えない。
「シェル(散弾)は一次起爆用です。炸薬の起爆には、8号の工業雷管を使ってるんです。」
白いメリケン粉の生地から、頭だけ出している銅製の小さな筒を指し示す…鉱山などで使われる、DDNP使用の起爆用部品。此れなら、確実か…地雷そのものの製造を禁じた所で、産業用爆薬や雷管までは規制する事は出来ない。増してや、手榴弾や銃弾を使えば、信管くらいなら子供にだって作れる。核を管理するのとは、訳が違うのだ。弱者の牙…航空機、車両、大型火砲といった戦力がかぎられるゲリラ・パルチザンにとって、地雷ほど有効な武器は存在しないだろう…安く、簡単で、ゲリラ戦には最も有効…「人道主義」の見地から進められた運動は、同時に最も立場の弱いものから力を奪う…此れを失えば、後はひたすら政府軍の戦車に焼かれるのを待つのみ。そんな連中は世界に腐るほど居るのだ。少なくとも、私は彼等を非難したいとは思わない。彼等を責める前に、先進諸国の銃器や車両、軍用機を禁止して、槍と刀で戦わせるようにでもすれば話は別だが。
暴力において優位に立つものが、弱者の言葉に耳を傾ける…そんな絵空事を最初に思い付いた痴れ者は、一体誰だ?無法な見識、そう、思われるかもしれない。しかし、忘れてはならない。我々の社会、「法と秩序」を維持しているもの…結局は、誰もが暴力に依存している事を。「ポリス」或いは「ポリティクス」…国家、政治、警察…全て「暴力装置」に基づく同一基盤上の概念だと言う事を…対話さえもが、多くの場合において「暴力」の裏付けを必要とするのだから。
「経始・記録簿はちゃんと付けてますけど。念のために…」
全面禁止以前にも、地雷原構成の際には、必ず測量を行い、記録原点と経始図、使用個数等除去に必要なデータを国際規約に定める様式に従って残す事が定められていた…各基準点の杭は抜かずに地中に打ちこんで残し、側に信管の安全ピンを埋めて各区域に使用されている地雷のタイプ・個数が解るようにしておく。このルールさえ守られれば、戦後、住民に被害が出る事など有り得なかったのだが…妙な話だが、大元を無視しつつも律義につけられた大学ノートを見せてくれる。流れるような書体で書かれた英語の書き込み。記録者、S・IKARI…
「君が付けてるのか…出来るの?測量…」
後ろ手に頭を掻きつつ、笑う青年。
「一応、測量士補の資格は持ってますから…以前バイトで。トータル・ステーションなんかは此処じゃ使えませんけど、平板測量位ならけっこう役に立つんですよ…そう言えば、御専門でしたね。」
後ろ、森の奥の方で作業中の男が、呼ぶ…振り向いて答える碇。少し申し訳無さそうに、向き直る。
「すみません。そろそろ作業の方に戻りますので…地雷原の外側だったら、御自由に取材なさって下さい。じゃ…」
「あ、うん。此方こそ、申し訳なかったね。有難う、碇君。」
その後ろ姿が闇に消えるのを見送りながら、思う…ざらつくような、違和感。何なのだ?一体…ゆっくりと戻ってきた嗅覚が、鼻腔に生暖かく湿った、苔の匂いを感じ取る…
泥の匂いは、そのまま消えない。
シュラフの中、久しく忘れていた、あの不愉快な痒みに目が覚める…全身の皮膚の上、恐らくあの、赤い発疹が出来ているに違いない。此処のダニ共は凶悪だ。獲物…人間の皮膚を食い破り、その皮膚の下に這いずりこんで巣を作る…つまり、無数の出来物一個一個の中に、連中が生きたまま棲んでいると言う事なのだが。馴れてしまえば耐性も付いてくる。残念ながら虫除けは不発に終わったようだ。枕元、天幕のメッシュの窓から漏れる白い光を便りに、眠る前…と言っても明け方の5時30分頃だったが…外しておいたタイメックスを捜す…頭上間近に置いた、四角い缶の蓋、持ち込んだ蚊取り線香の灰が、白く積もっている。意外にも、なかなか有効なのだ…世界に誇るべきメイド・イン・ジャパン、と言った所か。在った…貧相な、安物のオリーブ・ドラブの腕時計。針はもう、十一時四十二分を指し示している…六時間は眠れた訳か。リュウズを巻く…起きた時に巻いておかなければ、つい忘れてしまう。デジタル、アナログを問わず直ぐに時計を壊してしまう癖も、この手巻きの安物軍用時計に対しては例外らしい。特に、野外や第三世界に居る時は、こいつに限る。
鼻腔を擽る…唾液腺と胃袋を直接刺激する香り。天幕の入り口、やたらと硬いジッパーを、力任せに半分まで上げる。差し込む、白い光り…太陽?珍しい…ヤンゴンの空港へ下りた時以来、一度も御目にかかっていなかったのだが。昨夜は結局、明け方まで彼等の地雷埋設作業を見学する事になった…一人で帰れば、キャンプまで辿り着ける確率は一割にも満たない筈だ。この森の奥に迷い込むような事にでもなれば…命の保証など、ある訳が無い。夜を徹し、夜陰に乗じて黙々と作業を続ける男達をただぼうっと眺めた侭、たっぷりと水分を吸った、異様に太い木の根に腰掛け、彼等の仕事が終わるのを待っていただけだったが…農夫上がりの民兵達は、じとじとと降り続く夜の雨の下、ひたすらショベルを振い、杭を打ち、糸巻きに巻き取られた細い針金を張る。万が一、敵の斥侯の侵入を許した場合に備えて、片膝を地面に付いた低い姿勢のまま…勿論、あそこからは見えない森の中、何人もの警戒員が樹の陰、薮の中に潜み、カレン族の制圧地域を向いて、監視を続けているのだろう。少なくとも私の見る限り、彼等は実に優秀だ。
べっとりと赤褐色の泥がこびり付いたトレッキング・シューズを、面倒なのでそのまま履くと、上半身はシャツの侭、天幕の外に出た。いきなり網膜を焼く、白い光。こんなにも眩しかったか?太陽と言うものは…やがて、雲間に覗く、ターコイズ・ブルーの空が視認出来るまでに眼が馴れると、更に空の胃袋を刺激するものが視界に入る。バラックの前、木製の長机の上に置かれた、湯気の立つ大鍋。どうやらこの香りの原因は、あれの様だ。各々の食器を手に、列を作る人々…農夫や学生風(ヤンゴンの反政府活動家グループが、ここに逃げ込んでいると聞いたが…)の男達に混じって、老人、子連れの女性、妊婦まで居るのか…杖を突き、失った足の代わりにしている人もちらほらと見受けられる。肌に生温い空気をかき分けて、自然とそちらに足が向く…ふと、思い当たる。一応、マグカップを持っていくか。天幕の中に上半身を突っ込み、ボストンバッグからノースフェースのマグを取り出すと、列の最後尾に向かう事にする。鍋の前では、若い当番兵が、玉杓子で、一人一人にビルマ語で何か言いながら、食器にスープを注いでいる。この香りは…だしはナンプラーと見たが。嗅覚に敏感な反応を見せ、更に活性化した胃袋が自己主張を始める。戦場での唯一の楽しみと言ったら、やはりこれに尽きるだろう。残飯が原料だろうが、舌よりも胃で味わう分には極楽と言えるのだ。それに…確かに悪くない。ここの食料事情は…十人位は並んでいる列の最後尾に居た私も、手際良い炊事兵の御陰で、何時の間にか先頭から二番目に来ている。
まともな会話は出来ない為、とりあえず愛想笑いを作ってカップを差し出す…
「おはよう御座います。良く、眠れました?」
掛けられた言葉は、日本語だった。前に居た、背の高い農夫風の兵士の向こうに現れたのは、黒髪に鳶色の眼をした、一見少女の様な微笑を浮かべた若者だった…
「主要な任務、ですか?此処での…」
一通り、難民達への配給を終え、給仕を若い学生活動家風の青年と交代したらしい碇信二は、私の泊まっている天幕のシートに腰を下ろし、食事がてら、インタビューを兼ねた世間話の誘いに快く応じてくれた。
「大体、陣地防御戦に置ける測量指導、衛生兵、炊事兵、後、斥候ですかね…今回は、地雷の設計もやりましたけど。特別な事と言ったら、それ位ですよ。要は人夫、肉体労働者ですから。」
軽く言ってのける割には、大したものだ…一介の「日雇い」民兵としては異例の、専門技術の数々…今聞いただけでも、測量士補、赤十字認定の救護員、調理師、発破技士…一通りの資格を持った上でやっていると言う。実際の所、現実の戦場で「ものになる」技術とはこれらの実用的資格に代表される、ごく普通の職業的技能なのだ。日本でなら、学生でも少し勉強して、アルバイトで実務経験でも積めば身に付くこれらの資格ほど、「貧しき国々」で重宝されるものは無い。
「サバイバル・スクールとかの経験は、殆どありませんね。強いて言えば富良野のアウトドア専門学校へ一ヶ月居た事と、ロスの射撃学校に二週間行った事位ですか。それよりも、役にたってるのは…」
知人の田舎、高齢化の進んだ山村農家でやった、林業手伝いのアルバイトだと言う。
「実用的な野外技術なら、殆どあそこで身に付けたんです。ああ言う、地方の職人みたいな人達の持ってる技術って、凄いですから。それに、お金稼ぐために仕事してる訳だし…一週間位、アメリカのサバイバル・スクールにいった所で、身に付く技術なんて殆どないんじゃないかな…」
ナタ類、結び綱の様な基本的ツールの使用法に始まり、ガソリンポンプ、ボイラ、ウインチ、トラクタ、チェーンソーの様な実用、産業用機械の操作・保守に至るまで、野外労働、生活に関する職業的技術を学ぶ事が出来た、と言う事らしい。他にも、測量、建築現場等、アルバイトで身に付けたものが、やはり主体を閉めている様だ。サバイバル・スクールと一口に言っても、種類としてはアウトドア・プリミティブ系のものから、パラミリタリー、カウンターテロ等の軍事色の強い、所謂「傭兵学校」に至るまで様々な種類が存在するが…実際に、役に立つものは殆ど無い、と言って良いだろう。彼の見解は、根本的に正しいと言える。
二十世紀末、落合信彦と言う物書きがそう言った「傭兵学校」について取り上げた事があったらしい。当時アメリカ政府の汚れ仕事を引き受けていた、中南米にかなりのコネをもった傭兵、フランク・キャンパーがやっていたサイド・ビジネスである…実体としては、彼等自身にした所で、その活動内容は、「少しこわ持てのする産業スパイか企業舎弟」位のものなのだが…しかしながら、当時の若い読者には、かなりのインパクトがあった様だ。趣旨としては、「素人の客に、擬似的に戦場を体験させる」と言うテーマパークの様なものに、簡単な護身術(電車の中の痴漢位なら撃退できる程度の)やアウトドア・ライフ(週末のオート・キャンプに役立つ位の)の講習会をくっつけたものだったのだが、何時の間にか「SOF並みのレベルを持つ、プロの養成機関」である、と言うとんでもない誤解を受ける事になった…無理も無いかもしれない。玩具のエアガンや空缶の鳴子を使ったコースの内容は、落合氏の紹介文では実弾と、本物のブービー・トラップを使った洒落にならないものと化していたのだから。それ以降、サバイバル・スクール全般が多大な誤解を受け続ける事になる(敢えて誤解を招いて商売にしていた処もあるが。)プリミティブ(石器人の生活を体験して、文明に対する認識を新たにする、と言う様な趣旨)や純然たるアウトドア教室までも、随分と怪しいイメージをもってみられる事になったのだ…それらは、フェミニズムの隆盛に対抗して「父権」を取り戻そうと唱える「男性運動」と混合され、更に怪しいものと化していった…そして、今だその誤解は解かれているとは言い難い。又、「嘘から出た誠」とでも言うべきものではあるが、それらが「クー・クラックス・クラン」や「ミリシア」の様な国粋主義団体の武装化にヒントを与えた事も又、事実である。
「初めて銃を持ったのも、其処なんですよ…猪を撃ちに行く時に、連れていってもらったんですけど。一発だけ、水平二連の狩猟用ショットガンを撃たせてもらって…あれが、切っ掛けだったのかもしれませんね…」
当時、内向的だった大人しい少年が死と暴力に満ちた世界に身を沈めるのには、余りにのどかな発端ではないか。次に彼が銃を手にしたNRAの射撃学校は、名射手ジェフリー・クーパーが創設した、ロス市警御用達のインストラクター等を多数輩出した、名門中の名門である。此処では、ライフル、ショットガン、拳銃の取り扱いから、かなり応用的な射撃術に至るまでを学ぶ事が出来る…驚くに値することではない。アメリカでは、射撃は国民的スポーツであり、護身術としても、随分と身近なものなのだから。別に警官や兵士だけの物ではないのだ。もともと相当に高い集中力を持つ彼は、一通りのトレーニングを終える頃にはインストラクターのお墨付きを貰えるまでに上達していたらしい。
所謂「妖刀」に魅せられた者がその刃に血を吸わせてみたいと言う衝動につかれ、辻斬りに走る…天才的名匠、伊勢朝臣村正の手がけた傑作達に纏わる伝説にせよ、戦乱を離れ、徳川官僚体制に飼い慣らされた武士…「国家は一日の為に百年兵を養う」とは言うが、平和な時代の「軍人」ほど惨めで間抜けな生き物は居るまい…「葉隠」等のカルトで奇形化した精神主義に頼る事でしか、自らのアイデンティティを保てなかった「戦士の亡霊」達の重度の欲求不満が生み出した、陳腐な「都市伝説」の一つに過ぎない。エリザベス一世時代の抑圧的空気がかのジャック・ザ・リパーを生み出したように。(娼婦ばかりを狙い、その肢体を切り刻んではリビドーの充足を図った彼にせよ、全ての猟奇犯罪はすべからくセックス・マーダーである)19世紀以前の、テクノロジーの恩恵から遠い時代ばかりの話ではない。日本にした所で、ほんの20年程前には、14歳の少年による幼児に対する猟奇殺人を皮切りに、少年による刃傷沙汰、殺人が相次いだ時代もあったのだから。けっして、異世界の怪談話では、有り得ない。
所謂「武士道」と「武道」(メンタルな意味での)は、近世以降意図的に混同されてきた節があるが、冷静に考えてみればこれらは本質的に相反するものである…組織に対し、滅私奉公を誓い、「死」に対するフェテッシュな執着を原動力(と言うより、人柱・生け贄の思想か…「江戸時代以降、日本人は本質的に『戦えない』民族になった」と言う言説も、あながち的外れではあるまい。戦闘と、それにかこつけた自殺は、似て非なるものだから)とする一種の全体主義・「武士道」と、中世以前のサバイバリズムに溢れるアナーキーな「兵法者」の哲学(究極的には、小乗仏教にも似た組織・社会の否定へと繋がる)即ち極限としての個人主義が、同時に存在できるとは思えない。兵法者は、その本質から一種アーティスティックに昇華された反社会哲学の実践者でもあるのだ…それは、この21世紀の「末裔」にも受け継がれているのかもしれない。
「最初は…チアパスでした。探検部の悪友に誘われたのが、切っ掛けだったんですが…」
高度に洗練された「暴力」を身に付けた人間が、本能のレベルで血に目覚め、餓える…常に満たされる事無きリビドーを抱える「狂戦士」。冗談では済まない話では在るが…結果、彼もまた必然的に「血」を求めたと言う事なのかもしれない。
「驚きましたよ、最初は…失望、拍子抜けかな。自分が勝手にイメージしてた世界とは、似ても似つかなかったんですから…あそこまで貧乏臭いとは、思いませんでしたね。」
スープの入ったアルマイトの食器を傾け、笑う青年。ハリウッド映画や冒険小説の伝えるイメージとは、程遠い世界…原生林の中、トタン屋根のバラックが彼等の拠点だったらしい。毎日、鎌を手に地道に建物の偽装作業…政府軍のセスナが数日に一回偵察に飛ぶのだそうだ…実質的には殆ど草刈りと屋根葺き作業である。森のはずれにタコツボを掘り、一晩中、主要交通路(只の畦道だったそうだが)の敵情監視。国外の支援者から送られた金で残飯を買い、何とか食えるように味付けした、貧民救済の炊き出し…十二歳の子供まで混じった、「軍事教練」。森の中、休耕中(地力が極端に低下しているのだ。むろん肥料を買う金など無い)の畑に集まっての事らしい。
「まともな武器が、殆ど無いんです。1990年代には、未だキューバ辺りからAKMやG-3が調達出来たらしいんですけど…或る銃と言えば、良い所レバーアクションの猟銃か、中折れのショットガン…全自動で撃てる奴なんて、300人以上いて、たったの2丁。後は…槍ですよ。」
中米にせよ、紛争地域では、「人の数より銃の数が多い」と良く言われる。しかし…例外的な地域もある。それまで一定レベルの治安を保っていた地域が、急激な内紛を起こした場合などだ。最初にサパティスタが先住民族の権利獲得と生活向上を求めて(つまり、ついに食えなくなって)蜂起するまで、メキシコ国内はそう大きな火種を抱えていた訳ではなかった。ステーツの御膝元たるメキシコ政府の、数度に渡る和平交渉に託けた「武装解除」も功を奏したらしい。イデオロギー対立を唱えれば、超大国が無尽蔵に武器を与えてくれた冷戦時代は遠い…2010年代現在、貧しいチアパスには、まともな銃器・火砲は(幸いにして、なのかもしれない)殆ど無い。
「木の枝を削って、針金でフォールディング・ナイフを固定した奴や、塩ビのパイプを斜めに切って竹槍みたいにしたのとか…良い所、鋤、鉄杭…それと、火炎瓶ですね。」
その「装備」で、時折治安警察軍と、市街戦をやらかしたらしい。かつてのガザ地区での「インティファーダ」を彷彿とさせる…向こうは勿論、装甲車と自動小銃、ショットガンを持ち、ヘルメットとプロテクターで身を固めている訳だが。
「百姓一揆ですよ、あれは…投げるものが無くなれば、あとは石とか煉瓦。意外と、至近距離では有効なんです。下手をすればライフルより…レバノンに行ってた事の或る『先輩』の人から聞いたんですけど。初めて『殺った』のも、それでしたね…」
19歳の、夏の事だったらしい…
「なかなかいけるね、これ…味付けは。ナンプラー?」
一息ついて、皿の上、ぱさつく長粒米を右手で口に運ぶ碇…スプーン、箸等は、此処等では使わない。緑色の小さい球形の茄子と、川魚であろうツミレの入ったスープは、独特の匂いはあるが程よく酸味と辛みがきいていて、なかなかのものだった。
「近いですね。…どちらかといえば、ニョクナム、かな?イラワジ川の魚を、瓶に漬け込んで作ってるんです。」
少し、照れた笑いをみせる、青年…忘れていた筈の幻臭が、蘇る…
口に放り込んだ、粘り気のまるでない飯を、一気に飲み下した…
丈の高い茂み…密林の狭間に広がる草原、小雨に濡れた葉が、頬を擦る。
午後1時を過ぎた頃から再び降り始めた雨の下、約100メートル前方の林の端に張り付き、谷の反対側斜面を伺っていた碇が、片手を挙げて合図する。敵兵…KPLFのGOP(全般前哨陣地)には、カレン兵の姿は見られない様だ。前進…5名のビルマ族民兵達が、暗緑色に塗られたU字杭の束を抱えたまま、匍匐で、森の間、開けた空間を移動し始める。二人一組で鉄杭の束を運び、残る一名が絡車に巻き取られた有刺鉄線を引きずっている。同行する以上は、と分担を申し出た私に、苦笑を浮かべつつ碇はこう言った。
「ジャーナリズムは中立が原則なんじゃ無いんですか?…大丈夫ですよ。僕達は…馴れてますから。」
余計なちょっかいを出されて、万が一敵に行動が露見したら…と言うことだろう。私にした所で、命が惜しい事に変わりはない。此処は素人らしく、素直に彼等の意見に従うことにした。デジタルカメラ以外の荷物は持って来ていない為、身軽さを幸いと、林の中を迂回する。流石に、敵前の草原を横断する度胸は無い。彼等とて、出来れば此方を通りたかったのだろうが…密度の高いこの薮の植生は、手ぶらの人間一人が通行するのが精一杯、器材を持ったままの移動など、先ずは不可能である。薄暗い木々の間、ゴアテックスの合羽がピリピリと音を立てて裂ける…忌々しい事この上ない。木陰から、曇天の下、谷の向こうの緑の斜面を伺う。成る程…少し見ただけでは解らないが、恐らくあの、若干赤土が露出している辺りが監視壕、或いは機銃座か…ぞっとしない話だ。掃射されれば一たまりも無い…なるべく暗い木陰を選んで、足早に向こう側の森へ辿り着く。暫く森の中、獣道を進む…無言である。微かに、杭同士が擦れる金属音、民兵達が背負ったAKMと野良着が起こす衣擦れの音だけが、耳に届く。やがて…敵勢力支配地域からは反斜面になり見えない草原の谷間が眼前に広がる。
迅速に作業拠点を定め、器材と6ポンドハンマー等の工具を木の根本に広げると、彼等は速やかに散開し、各分担に沿って作業を開始する。取りあえず、木の根に腰を下ろして、水筒のキャップを外した…浄水剤の匂いがする水を、激しい発汗のため乾ききった喉に流し込む。先ずは、お手並み拝見と行こうか。向こうの草むら、数箇所で微かに人の頭が動くのが見えた…
草むらの中央付近、碇がハンマーで12本目の鉄杭を打ち込んでいる。一線目、二線目の杭の列には、既に有刺鉄線が張られ始めている…U字杭の頭にはタオルが巻きつけられ、消音措置が施されている…激しく打ちこんでも、打入音が周囲に響く事はない。屋根型鉄条網…表向き、地雷が禁止されて以来、陣地戦に置ける敵機動力の阻害手段は、車両なら対戦車壕、歩兵相手なら鉄条網が主流となっている。特に、密林・草原に、それと解らない様に仕掛けた鉄条網の威力は実に侮り難いものの様だ。しかし…
こうしてみると、実際土木工事か農作業そのものだ。近代戦と言う奴は…
20世紀の直木賞作家、村上龍が「百姓は男・戦士として失格だ」と言った事がある…此れこそ正に「平和ぼけ」した、「戦場から隔離され、スポイルされた戦士失格者」のたわ言であるとしか、私には…いや、全ての兵役経験者がそう思う事だろう。「百の技術を持つ」、百姓・農民ほど、優れた兵士は居ないのだから…特に、近代地上戦においては。古代中国において、太公望は既に「兵農一体」を唱え、防御戦術の天才として知られる墨子は又、原始共産主義的な農本主義を唱えた思想家でもあった。近代において考えても、いざ近接戦闘となれば、腑抜けと化した先進諸国の歩兵と、クメール・ルージュの兵士のどちらが強靭であるかは、一目瞭然と言うものだ。村上龍がベトコンの優秀さを忘れていたとも思えないのだが…現実の戦場では、ショベルやハンマーの方が銃よりも遥かに活躍の機会が多いのだ。そしてそれは、より大きく戦闘の勝敗に関わる事項でもある…実戦とは、段取り八分。派手に火力を使う段階では、実は既に勝敗は決しているのだ。
近代軍隊発生以前…中世の戦闘は、貴族階級によるスポーツ的色彩の強い、騎馬戦闘による一騎打ちを至上とした。生産性や効率よりも、「変化無き秩序」を重んじた時代…日本においては、源平から鎌倉・南北朝辺りに相当するかもしれない。この時代に発生した「騎士」「武者」に対する幻想(実質的には公達連中のゲームと言っても過言ではないのだが…)が、現代においてさえ「戦士」の本質を見誤らせるのか…近代以降の戦場は「貴族の若様の遊び場」では無い。ナルシスティックな粋がりなど、自分の墓穴を掘りたい奴にでもやらせておけば良い…実戦に必要な人材とは、忍耐強く、泥に塗れて地味な作業を続けられる「優れた土方・農民」なのだから…その意味で、碇信二はまさに優れた戦士なのだろう。
ひたすら、黙々と障害構成…恐らくは1週間以内と予想されるKPLFの攻勢に対し、戦力減殺を図るための入念な下準備を続ける彼等の姿は、実際農作業に従事しているのと何の差異も在りはしない…
そう考えるに至り…奇妙な感覚に囚われる。ならば、彼は此処に何を求めているというのだ…現実の戦闘は決して華々しいものではない。泥に塗れ、ダニにたかられ、残飯を漁る…続く、ひたすら地味で、肉体を酷使する労働の連続。結果、勝利を得たとしても、それは他人のもの。「思想無き戦士」である彼には何の関わりも無い…実際、明らかに劣勢、殆ど勝敗の見えている勢力に好んで身を投じているとしか思えない…確かに、彼の本質は「快楽殺人者」なのかも知れない。しかし、それなら何故、優勢な陣営に加わらない?事実、「通常」の日本や欧米のウォーフリークならば、確実にそれを選択する…あの、吐き気を催す青臭い泥の匂いが、急激に強まり始める…いや…違う。これは…
…ならば、私は此所へ、何を求めて来たのだ!?…
現実の戦場は、まるでアーケード・ゲームとは違う…何のカタルシスも、刺激ももたらす事はない。在ってせいぜいがパニック…全てが、把握できない、訳の分からない内に過ぎて行く。在るのは絶え間無く続く、単調な疲労、肉体的苦痛と、時折急激に襲う、恐怖心…まるで、投げ返す事を禁じられたドッヂボールの試合。知っている筈だ…嫌と言うほど。思い知るだけの筈だ。惨めで無力な、浅ましい自分の姿を…
…サバクハ、セイケツダ…
英国帝国主義の御先棒を担いでオスマン帝国を滅ぼし、自動車事故で死んだ、砂漠の民を愛したイギリス人はそう言った…
あの、腐敗した泥の匂いが、激しく痙攣しながら胃袋を裏返そうとする…硫化水素の刺激臭を孕んだ、ドブの匂い…!?違う。実に、とんでもない思い違いだ…全く、違う…
「密林の、腐葉土の匂いなんかじゃない…これは…あの街の、匂いなんだ…」
奇妙な胸騒ぎとともに…理解する。碁盤の目の様に、走る、六車線道路…針山の様に林立する、巨大な石造りの、高層建築群…芦ノ湖畔に広がる、あの眠らない「街」の、吐き気を催す腐った風の匂い。
ほんの、断片に過ぎなかった一つ一つのピースが、微かに輪郭を描き始めていた…
「酷いもんだな…」
余りにありきたりの、陳腐な感想だ…実際、物書きとしては失格なのかもしれない。私は…
昨夜泊まった天幕の僅か約2メートル横には、無残に抉られた、剥き出しのラテライトの地層をさらすクレーターが出来ていた。背後から、私の肩を叩く、手…振り向く、自らは既に防護マスクを装着した碇が、私にも同じタイプのそれを手渡す。暗緑色のゴムで出来た仮面越しに、くぐもった声が響く。
「一応、装着しておいて下さい。天幕の裏や木の陰なんかは、所々残ってる筈ですから…」
言われるままに、活性炭の詰まった吸収管を口の部分のネジ穴にねじ込んで、キャップを外す。頭から一気に被る…熱帯の湿った空気の中では、一層の息苦しさを感じる…息で、眼のガラス窓の内側が白く曇るのを、マスクの中に手を突っ込んで指で拭った。見回す…キャンプの中に落ちた化学砲弾は、ほんの2、3発だけの様だ…碇は早速、空気入れの如き手押しポンプの付いた化学除染具に、ポリタンクから中和剤入りの水を注いでいる。キャップを締め、ホースとノズルを取り付けると、ポンプを手で押して空気を送りこみ始めた。
KPLFが山の向こうから散発的に放った数発の81ミリ迫撃砲弾は、私達が障害構成作業に出ている午後3時20分ごろ、この難民キャンプを襲ったらしい。撒き散らされた神経剤と思しき透明な揮発性の液体は、瞬く間に死を運ぶ風となって、この辺り一帯の森に充満したのだろう…皮膚に触れれば、瞬く間に運動中枢を犯して肺や心臓の機能を止めるそれは、本来はそうたいした持続時間を持っている訳ではない。完全な蒸発を妨げる、熱帯の湿った森の中で無ければ…この湿度からすれば、恐らく、樹木の葉の裏、或いは天幕の裏側には、未だ猛毒の液体が水滴となって残留している事だろう。ゴム製の、不格好な着ぐるみの如きツナギを着た碇は、空気を満タンにしたばかりのボンベを背中に背負うと、其処から伸びている二本のノズルを手に、最も汚染が激しかったであろう区域へ向かい、歩き出す。ガスマスクと手袋以外の防護措置を持たない私も、十メートル程の距離を取りつつ、彼の後を付いて現場に同行する事にした。
「攻勢の前哨行動じゃないの?数時間後には侵攻が始まる可能性は…」
最悪の場合を思い浮かべ、かなり心配になってきた…振り向かないまま、碇は答える。
「威力偵察でしょう、恐らく…数日中の行動開始は無理って事ですから。連中の何時ものやり口ですよ…今まで命中しなかったのが、幸運だったんです。」
適当に攻撃を仕掛けて炙り出し、観察出来る相手の出方から、その勢力・行動を割り出す…一般的な手段ではある。民間人の居る区域に対し、化学兵器を使うかどうかは別として…バラックの並び、角を曲がる…現れた目的の建物は、そのトタン屋根に直撃を受け、見事なまでに潰れていた…人影は、疎らだ。皆、とりあえずは汚染の届いていない区域まで、非難しているのだろう。拉げたトタン板や千切れた角材の山に歩み寄ると、碇は両手の細いノズルから、中和剤を当りに撒き始めた。丁寧に、吹き付けに漏れが無い様、舐めるように水を撒きながら、粗大ゴミの山と化した残骸に登るのを、立ったまま眺める…彼の足元、気付く…紺色のトタンの下から出ているのは、小さな人間の、いや、人間だったものの、手…作業の手を休める事無く、彼は言う。
「この建物…診療所だったんですよ。ほら、昨日包帯を替えてた子達…彼等も、この下にいる筈ですよ。」
何の感慨も無く、「ちょっと忘れ物をとりに帰ってきます」とでも言うような口調で、彼は語る。恐らくは、いつも通りの穏やかな微笑を浮かべて…
恐らくは…あの少年も、昨夜運んだ父親と同じ運命を辿ったのだ。のんびりと、花壇に水を撒くかのように…中和剤を巻く小さな音だけが、響く。静かだ…余りに穏やかで、日常的な風景に見えるのは、何故だ?…ぱらぱらと、小雨を広葉樹の葉、森の木々が風に揺れながら払う音。ジャングル。私達日本人は、それを、常緑の「緑の地獄」と混同しがちだ…だが、違う。此処はモンスーン…季節風の吹く、いま、トタンの下から突き出ているような、私達と同じ色合いの肌を持つ人々の暮らす場所。「常夏の、季節の無い幻想の世界」では、有り得ない。なにか一つ間違えば、自分がここで生まれ、育ち、死んでいったとしても、何の不思議も無い…泥と、貧困と、死に満ちた、穏やかな「戦場」。
私の住む、あの街とは違う…しかし、ここは恐らく「異世界」などではない。あるのは何の変哲も無い、只の「日常」。余りに、肌に自然な…
…直ぐに、懐かしく感じる様になりますよ…
自分の身体にも、あの匂いが残っているのかもしれない…
「駄目ですね…壊死が、もう直ぐ横隔膜に達するそうです。」
薄暗い白熱電球の下、灯油缶に座ったまま、オイルライターでマルボロに火を付けた。出来れば、ハイライトが欲しかったのだが…残念ながら、ストックは切れている。
「やっぱり、破片?良く今まで保ったもんだね…」
残酷な様だが、偽らざる感想だった。少年は、腹部に化学砲弾の破片を受けた筈だ…裂傷より先に、ガスでやられているだろう、普通は…剥き出しの鉄パイプで作られたベッド脇、流暢な英語…些か訛ってはいるが…を話す40過ぎの医者の横で、灰色の雑毛布に包まって横たわる少年を見下ろしながら、碇は答える。
「安定翼の破片…化学剤の触れていない部品にやられたんですよ。下腹部から入って、脊椎の手前で止まってたらしいんですけど…誰かがアトロピンを投与したんですね。」
混乱の中、必死で発揮した誰かの慈悲心だったのだろう。責める事は出来ない…それが、安楽に満ちた速やかな死を、少年から奪ってしまったとしても。神は残酷だ。だが、人間はそれに輪をかけで残酷なのだ。酷薄な卑劣漢であれ、心優しいサマリア人であれ…熱にうなされていた幼い褐色の顔苦しみに泣きつづけていたつぶらな瞳は、やがて朦朧とした、焦点の定まらない鈍い光を湛え始めた。医師が、首を振る…ビルマ語で短く、尋ねる碇。肯く。駄目なのだろう…どう考えた所で、そうだ。結局、あの死んだ農夫の幼い息子は、バラックの下にはいなかった。あの後直ぐに、生存者に担がれて、一キロ下方の森の中へ避難していたそうである…突き出していた手は、あの、碇の膝の上で笑っていた少女のものだったのだ…皮肉な話だ。神経ガスの中和剤のストックはあっても、抗生物質は底を突いているとは。今、皮肉で軽薄な笑いを浮かべているのかもしれない、私は…アメリカ煙草の煙を深く吸いこんで…吸いこみ掛けて、止まる。
「おい、碇君!?」
少年の「寝顔」を覗き込んでいた碇が、Tシャツの上から羽織っていたフィールド・ジャケットのポケットに、手を突っ込み…黒光りした、ちっぽけな鉄の塊を取り出し、無造作にスライドを引いた。
「おやすみ…色々、ありがとう。」
「ちょっと待っ…!!」
膨らました紙袋を叩き潰したような、乾いた破裂音。
幼子のこめかみに自動拳銃を押し当てたまま、灯油缶から立ち上がり掛けた瞬間に、碇はトリガーを、引いた。弾かれるように、微かに少年の頭が、動いた…藁布団に、ゆっくり吸い込まれていく、赤い染み。医師が、不機嫌そうに碇に抗議している…布団を汚すな、そういっているのだ…申し訳なさそうな表情で、謝っている碇。手に、今少年を射殺したばかりのトカレフ自動拳銃を下げたまま。ベッドを除いてみた…子供特有の柔らかな髪が汗ではりついたこめかみに、半ば肉圧で塞がれかかった、5ミリ程の小さな穴が、黒く空いていた…つぶらな、黒い瞳は宙を向いたまま、鈍く白熱電球を反射している。
「碇君。」
そんな事を口にする資格など、私には無い…解っている。ただ単に、ここに居合わせた「罪」を問われるのが恐ろしい。それだけの話なのだ。しかし、誰に?…どうしようもない偽善者だ。腐りきっている…それでも、機械的に口は開く。
「何も、殺す事は無かった…どのみち、1時間もしない内に彼は楽になれたんだろう!?銃で撃つことは無いじゃないか…」
…何を馬鹿なことを言っているのだ、私は…振り向かないまま、碇はポケットを探る…探り当てた、金属片を取り出し、振り向いた…針の穴の様な瞳、穏やかな微笑。耐えられない、ドブの様な、自分の体臭に…込み上げる、恐らくは黄色い、胃液…腹から喉の奥、込み上げる、痙攣。私の手に、それを渡す青年…
…NISSAN .Co.LTD AEROSPEACE INDUSTRY…
「同じですよ。黙って見送るのも、殺すのも。あなたも、同じなんですね…」
解っている、そんな事は…放っておいても、どの路彼等は、傷つき、飢え、死んでいく。結局誰にも、止めることは出来ない。手を下すのも、黙ってみているのも、結局は同じだ。人殺しではない奴など、この世界には一人だっていやしない!
暴力を、自分達の「平和」で「秩序」に満ちた世界から「外」へ括り出し、「そんな物などこの世界には存在しない」と言う顔であの街で暮す奴等…自分も、同じだ。「現実はゲームじゃない」と言う言葉を口にしながら、現実をゲーム程度にしか見なさない奴等…人に手を汚させ、奪わせるだけ奪わせておいて、なんの不安も感じずに平安を貪る家畜共!!あの「敵だらけの外界から逃げ込んでいる、臆病者の街」で!!暴力も、死も、どうしようもなく現実だ。此処に来て、自ら手を汚さない限り、誰も「殺人者」の上に「偽善者」の罪を重ねることからは免れ得ない。「近代西欧的二項対立の原理は、家父長制の根本原理であり、その上に立つ全ての男はすべからく強姦者、抑圧者であり、女性・子供・少数民族を虐殺し続ける」!?ふざけるな!!自分の手一つ汚さず、「水と安全はタダ」と信じて疑わず、あのスポイルされきった高度消費社会で「あたしは弱くて可哀相なのよっ!?」と金切り声を挙げながら、何の努力もせずに「自分の安全は保障されて当たり前」と信じて疑わない雌豚共!!生き残るために力を尽くさないものに、生きる資格は無い!犯されたくなければ、自ら手を汚すが良い!去勢されきった男共を飼い慣らし搾取の上に築いたあの砂上の楼閣で、いつまで被害者面を続けて、自らの罪を隠蔽するつもりなのか!?あの「消費」と「偽善」の、硫化水素の腐った風の臭いに満ちた街で…
…私も、同じだ…
「失礼…余計な口出し、しちまったみたいだね…」
此処を去る前の、最後の夜だ。再度のインタビューのアポイントを撮り、バラックを出た。
熱帯の雨は、未だ止まなかった…
1997年、神戸郊外のベッドタウンで、或るシリアル・マーダー…連続猟奇殺人が行われたことがある。その殺人者は…14歳の少年だった。性倒錯、邪神崇拝にも似た疑似宗教行為…確かに、只の変質者だったのだろう。別段珍しくも無い、「社会の敵」に過ぎない。しかし…その時、「社会」は実に無様で滑稽なその「実体」を垣間見せてくれた様だ…当時の一連の記事を調べるに付き、思う。実は、歪んでいたのは、彼の眼に写った「社会」ではなく、多くの人々が「普通」と規定した方の「社会」ではなかったか?破壊衝動を、それをもたらした原因に向けるのではなく、何の関わりもない、幼児にむける…実は「まともな」多くの連中も全く同じ事をやっている、唾棄すべき屑共の行為だ。この点では、少年は実に「一般的日本人」の感覚の持ち主と言える。問題は、其処ではない。
多くの「識者」或いは「市民の声」が、夢中でこの「異常な」行為を「社会に歪められた人間の悲劇」だの「理解できない、常識を逸脱した行為」「こんな事が起こるなんて、信じられない」だのと、自分の住む世界とは違う、「異世界」の住人の行為であると…必死で、マスメディアが創り出す「普通の」家庭・社会生活が「現実」の、「当たり前」の社会像であると叫んでみせた事。この異常者は、図らずして、我々の信じる、いや、信じるふりをして「演じている」社会の「虚構性」を垣間見せてくれた。実に、印象深い事件である。「暴力」など遠い異世界の話…そう「信じ」ている、我々の社会…
冗談ではない、「暴力」は、日常そのものだ。たとえそれが、「見えない」ものであったとしても。誰一人、その恩恵を離れて生きていくことは出来ない。
変わりはしないのだ。此処も、あの街も…「演じている」のか、そうでないかの違いに過ぎない…しかし、なら…何故、私は此所へ来たのか…
夜半になっても、今だ小雨の侭、それは降り続く。破れたゴアテックスの雨合羽へ、引っ切り無しに侵入する雨水…目の前、掘られた大きな穴。キャンプから500メートル程離れた森の中に掘られたそれは、「墓」と呼べるものではない。無造作に放り込まれた、半日前まで暖かく、呼吸していた筈の…肢体。凡そ30体…捲れあがった、あの幼い少女の下腹部が、雨に濡れている…暗い、赤いライトで照らし出された其処に、既に蠢き始めた、屍肉を漁る蟲達…恥裂の中にまで侵入し、貪っているのであろう蛆虫共…最初に腐り始めるのは、生殖器、そして、眼球。
「子供をね…9歳か、10歳くらいの、女の子を抱いたことがあるんだ…」
暗い、熱帯の森。闇…彼の表情は、見えない。
「タイ…バンコクのハッポンだったかな。付き合い、人の進め…そんなのは、言い訳になる事じゃない。そのつもりも、無いけどね…驚いたよ。出来るんだなあ、実際…実に安易なんだ。何の問題もなく、欲情して、射精するんだ…郊外の、農村の女の子だった。眼のくりっとした、可愛い娘でね。遣り手婆さんに母親同伴ってのは、流石に参ったがね…」
こんな、下らない「カミング・アウト」を聞きにきた訳ではないだろう…彼も。もしかしたら…フードから、滴がしたたり、頬にベタリと張り付く…雨。
「『おわった』後、食事に誘ったんだ、その親子を…普通、順序が逆なんだろうが…彼女が、おなかがすいてる、って言うもんだからね。母親は、喜んだね。そこそこの中華料理店に案内したら…端からみたら、商社マンと現地妻、娘ってとこに見えたんだろうな。楽しかったよ。いつのまにか、独身が当たり前、そう思うようになって、長かったんだがね…自分が『幼女陵辱犯』だなんて、最後まで、まるで実感がわかなかった…」
…搾取、陵辱、殺人…頭の中を、最後に彼に聞きたかった事が、駆け巡る。上手く言葉に出来ない辺りが、私のインタビュアーとしての限界か…苦笑する。そもそも、何故こんな話をしているのか…聞いてもらいたかったとでも言うのか?彼に…
「脈絡の無い話で、申し訳ない。だがね…思い出したんだよ。君の言葉。『懐かしくなる』っていうのをね…」
確かに、手を汚した方が「楽」なのだ。人に罪を犯させ、偽善の殻に隠れつづけるよりは。傭兵は、動かない。
「最後に、聞いて良いかな…君は何を求めて戦場(ここ)に来たの?求めていたものは、見つかった?」
雨合羽の下、ベルトに挟んでおいた拳銃、コルト・M1911A1を、引きずり出す。初弾は、ここへ来る…碇を呼び出す前に、薬室に送り込んでおいた。ヤンゴンで調達してから手入れ、分解掃除をする暇が無かった為、作動までは確認できなかったが…親指で、安全装置を外す、握把を強く握りこみ、グリップ・セフティを解除する…照準。
「・…………」
聞き取れなかった。只、碇信二がトカレフを私に向けて照準し、トリガーを引くその瞬間…その微笑みは、この上無く、穏やかだった。
「わざわざ此所まで、追って来るとは…余程怨まれてるみたいだな、シンジ…」
雨…トップ屋の死体を見下ろしながら、マウンは溜め息を吐く。信二との会話は、殆ど英語を用いる事が多い。赤い泥に片膝を付き、屈みこんで男の射殺体…見事に、眉間が撃ち抜かれている。54式・トカレフT−1933コピーを抜撃ちして此れをやった等と言っても、悪友共は信じはするまい…ゴアテックス、通気性は高いがやたらと値のはる雨衣の下を探っていた信二は、何時もの笑みを浮かべ、そっと、この日本人の瞼を閉じさせた。
「深いもんですね。親の情けって…この人を雇ってまで、息子の敵を討ちたいなんて。案外、変わらないのかもしれないな。此処も、あそこも…」
殆ど人事の様な信二の口調に、流石に馴れているとはいえ、マウンもこめかみを押さえ…少し、渋い表情になる。
「栄光出版には、厳重に抗議しておかんとな…特派員が殺し屋を兼ねる、なんてのがざらになってみろ。此れが、カレンの奴等の特攻隊だったら…」
有り得る話だな…光栄出版は政府与党寄りの新聞社を母体とする、民族的・右寄りの論調で知られる雑誌社である。今までにも、KPLF寄りの記事、出版物をしばしば出しており、彼等と関係の深い右翼団体とも繋がっている…その手の噂が絶えることはないのを、信二は思い出した。
「とりあえず、この人は無関係ですよ…荷物の中に、アドレス帳が残ってたのは幸いでしたね。」
以前サンサルバドルで、政府軍側の捕虜を射殺した事がある…その中には、3人の日本人傭兵が混じっていたのだが…所謂、「WAR FREAK」…彼、碇信二の「同類」である。どうやって調べたのかは解らないが…気持ちは、分からないでもない、そう思った。
「息子を殺されても、日本の法律じゃ、僕は裁けない…口惜しかったんでしょうね…」
こんな時、この日本人青年の眼が、奇妙な慈悲の光を湛える事を、何時もながら奇異に感じるマウン…
「案外、あの街も、捨てたもんでもないのかもしれないな…」
今回の「雇用契約」も、後二週間で切れる。最も、それまでには確実にKPLFが乾坤一擲の大攻勢を掛けてくるだろうが…生きていれば、少しだけ、帰るのが楽しみになるかもしれない。
アラカン山脈を濡らす、この熱帯の雨が降り止むのは、あと数ヶ月先の話である…
後書き
砂漠谷(以下、鯖)はぁぁ〜っ(深い溜め息、この時点ですでにローゼス2本ラッパ飲みアンド作業BGM?攻殻機動隊サウンドトラックX時間連続運転で既にトリップ状態)
アスカ(以下、ア)何くつろいでんのよ、アンタ…大体、これの何処が「エヴァ小説」なのよ?「Persona」のオマージュどころか、完全に異次元にぶっ飛んでるじゃないのよっっ!
鯖 …この様な事態に対し、深く遺憾の意を…
レイ 早速、人様のスタイルを盗用しているのね…わたしを「悪の大蔵官僚」と「多淫症ナルシス年増アンドロリコン趣味ブルジョア精神科医」の手から救い出すと言う話は、どうなっているの?
鯖 言いましたっけ、そんな事?単に折角レイちゃんが「オルレアンの乙女」なんやから、こっちで「青髭」ネタでもやりたいなー、とかは言いましたけど。なんか、SOUさんまで、電波系に走りつつあるみたいやし(笑)此れからは「猟奇」と「性倒錯」がトレンドかなぁ?てね。
ア 性倒錯…(汗)そーいやファースト、あんた最近「売り」まで手を出し始めたんですって?怖いわねー、ヒゲメガネのコギャル映画から毒電波でもでてんのかしらね。おまけにジャンキーで多重人格でショートホープをがに股でふかしてるって言うじゃない。アンタ、遂に反抗期がきたのね。この援助交際暦14年、生まれた時からオヤジを手玉にとって来た女は…
レイ SM…碇君と…(ぽっ)…こっくさっかー・ぶるーすをやるのね…
鯖 レイちゃん(汗)…あれがどーゆー話か、しってます?でも、たしかにSMも良いかな、とは思いますけどね。某有名ページの「束O」シリーズなんてもー、最高やなぁ(笑)シンちゃん、鬼畜かつ純愛やもんね。
レイ わたしは、「絆」シリーズの方が、好き(ぽぽっ)まさOこさん、早く、更新して…
ア 何怪しい会話してんのよ、アンタ達わっ!?伏せ字の意味、わかってんの?そういや、上のあれ、鯖…アンタまさか…
鯖 別人です(きっぱり)小生、「砂漠谷 麗馬」と作中の「私」は。MEGURUさんと「俺」が別人なんと同じくらい(笑)共通点と言えば、経歴の一部くらいやねー。
レイ その「経歴の一部」が「幼女買春」なのね…
鯖 ちがーう!!あれは或る「知人」の体験談、あ…(汗)フィクションです(大汗)
ア 今更遅いわよっ。ま、良いんじゃない?アンタがいろいろヤバイ世界に首突っ込んでるなーんて、いまに始まった事じゃないんだし。実名報道するわけじゃなし。
鯖 幾らなんでもまずいやろ、それやったら(汗)
レイ あくまで関与を否定したいのね…なら、あなたの部屋にある「るりるり」のポスターは、何?
鯖 わーっ!?出来心やっ、俺はロリコンやなーい!!だって、ほら…どことなく似てません?ルリルリとレイちゃんって(汗)雰囲気とか…
レイ にていないわ。
鯖 うっ…(大汗)とにかくっ、あたしゃ「倫理成人」未満の異性乃至同性と性交渉をもった覚えはございませんっ!ほんまやっ!(号泣)その証拠に、あっちのネタで次に好きなのってリョーコちゃんとホウメイさんやもん…
ア あんたも「年増あんどロリコン腐れ電波自衛官崩れ」じゃないのよ…まあいいわ。で、アンタ、あれ、ひょっとしてシンジのつもりなの?
鯖 うーん…百パーセントではないけど、やっぱり7割はシンちゃん、かな…いやね、いろいろ変遷や影響があったんよ。特にバイオレンスをやるキャラクターについて少し…原因の一つは「レイのO婚」の主人公「碇マOル」なんやけど。
ア あー、あれ!何故かシンジとロリショタ女がくっついて、あたしとファーストがあぶれるって奴ねっ!?
鯖 そんな身も蓋もない(汗)LiOeさんすいません!悪気は決して御座いませんので(平身低頭)けっしてマヤちょんに他意など(汗)いや…シンちゃんの生き別れの兄で、凄腕の工作員兼剣客なんやけど…まぁ、そこそこレイちゃん一途なのは結構なんやが…なにか、ねえ…
ア 良いじゃない、あんたの好きな「ピカレスク」でタフガイってタイプでしょ?
鯖 うーん…気になるのがやっぱり、「ハードボイルド」におけるダンディズムの定義なんよなぁ。例えば…実は俺、「リィ・ナ・クOイネ」に出てくる傭兵のトード、無茶苦茶好きなんやけど…マモル君は、なんか、こう…少し…(汗)同じ系統なら、やっぱり「SIN」みたいなタイプが好き。
ア あんたの友達のタカ氏んとこの、「シンジであってシンジでない」男ね。要は「すかした」タイプが駄目ってことじゃない?トードにせよ、SINにせよ、気取らない無骨者で、殺伐とした世界に生きてても「すれない」もんね。
鯖 それそれ!なんかこう、常に真っ直ぐに生きとるっつーか…「汚い世界」を知りつつなお且つ理想主義者。それがいいんよなぁ…マーロウに見る「ハードボイルド」やなぁ。ところで…マモル君とSIN、レイちゃんを巡って戦わせたら、どっちが勝つかな(わくわく)
ア この男は…トリッキーで非情な点ではマモルのリード、単純に「底無しに強い」んならSINってとこじゃないの?一人で私設軍隊ひとつ潰したんでしょ?
鯖 そーよな、やっぱり!うん、「ティンダロス・ハウンド」の名付け親として鼻が高い!!
ア あんたが威張ってどーすんのよ!?「碇信二」の話じゃなかったの?
鯖 はぇ?誰、それ。
ア こんの腐れ鯖ぁぁぁぁぁ!!(あの作中の「秘OそOこ」批判はなによっ!?)
鯖 どわぁぁぁぁ(ああっ、まだ、ブレイン・バレーと百匹目のサルとシェルドレイク理論とジャンヌ・ダルクの関係のはなしがぁぁ)
レイ 鯖、殲滅。
ルリ ほーんと、馬鹿ばっか…