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| ザザーンシンジ君 |
その2.飛翔編
レイはまたディスプレイの方を向く。
「ではザザーンシンジ君の容姿について続けたいと思います。まず頭髪についてです」
レイが操作すると、ディスプレイにはかつらの様にいろいろな頭髪のサンプルが出た。
「まずその前に、ザザーンシンジ君において容姿というものは一定の物ではありません。後述する様な特殊な能力を使う時は、それに合わせて容姿が変貌するという傾向が見られます」
「変身って訳ね」
「よしてよアスカ」
「いいじゃん。普段は目立たぬ中学生が、乙女の叫びを耳にすると無敵のザザーンシンジ君に早変わり。ザザーンチェンジとか」
「……」
シンジが黙ってしまったのでアスカは肩をすくめた。
「では頭髪に戻ります。まず、碇君と同じく黒髪の短髪。やはりこれが多い様です。次に黒髪の長髪です。これには(黒真珠のような)(闇の様に)などの形容詞がつく事が多いです。次に多いのが白髪の短髪です。これは私と同じと思ってください。ただこの場合白髪というより(青みがかった透き通った白)(銀髪)などと表現されます」
レイは無意識にか自分の髪を撫で付ける。
「他にも金髪の場合もありますし、頭髪が完全に無いものもあります。今まで述べた頭髪の特徴はあくまでも外見だけの違いに留まっています。色などの違いによる物理的な効果、たとえば光線の吸収率などは全く考慮されていません」
レイはシンジに目を向ける。
「碇君、協力をお願いします」
「えっあっはい」
何だかんだと言ってもシンジはそれなりに優しい性格ではある。立ち上がりレイの元へ行く。スクリーンの前に立たされる。
「ホログラフで重ね合わせてみます」
レイが端末を操作するとシンジの頭にいろいろな頭髪が重ね合わされた。
「こうやってみると凄いわね」
ミサトがしみじみとシンジを見る。シンジと言うよりシンジの頭髪のホログラフィーだが。
「ファースト、ちょっとホログラフィー切って」
アスカが言うとレイがその通りにした。アスカはシンジの顔をまじまじ見る。
「何だよアスカ」
喧嘩腰と言うより逃げ腰だ。また何か言われるかされると思っているらしい。
「それなりにシンジってバランス取れた顔立ちしてるのよね。今の見て判ったわ」
「私は美的感覚について教育を受けていないので判りませんが、アスカの意見は正しいと感じます」
レイの言葉に肩をすくめつつ、アスカは前に出てきた。
「アンタそのうじうじしたところ治せば結構もてるわよ。このアスカ様の下僕から、ボーイフレンドの末席に加えてあげるぐらいはいいわよ」
ぽんぽんとシンジの肩を叩く。シンジは溜息を付いた。
「ファースト、発表の助手やるわ」
アスカはディスプレイの横に椅子を持っていき端末を手に取る。座る。
「碇君ありがとう。戻ってください」
「うん」
シンジも席に着いた。
「容姿及び服装についてはまた後でまとめてモデルになって貰います。では続けます。次は瞳です。これも千差万別です。黒檀の様に黒い瞳、琥珀のように澄んだ茶色、五月の爽やかな空の青、紅玉の赤、獅子のたてがみのように輝く金色などです。これはやはりザザーンシンジ君の状態により変化することが多いです。一般的には黒、そして次に赤が多いです。これは本来の碇君の瞳の色と私の瞳の色だと推測します」
アスカが操作をすると色の見本がディスプレイに現れた。アスカ、レイ、シンジなどチルドレンや他の職員のものらしい。
「次は顔立ちです。これに付いては全体的な傾向として、実は司令の子どもでは無いという事にして、碇ユイ似にする傾向があります。これははっきり言って司令は美男子ではないからでしょう」
「れっレイ」
情けなさそうな声がゲンドウの方から聞こえた。いい気味だと思いつつも少し可哀想だなとシンジは思った。アスカとミサトは笑いをこらえている。リツコは溜め息をついている。
「あと頭部についての特徴では、ツノがある、額にも目があるなどがあります」
またシンジが情けなさそうな顔になったところで一休みになった。
○
「発表の内容はともかく、綾波っていい声なんだね」
考えてみると、これだけレイが話すところは見たことがない。応接セットの周りに皆集まってお茶にしている。レイは目が疲れたらしい。ソファに寝込み眼鏡を外し濡れタオルを目の上に置いている。
「そうね。ファーストってムッツリしているけど結構美少女だし、そりゃ髪の毛や瞳や肌の色が気持ち悪いって言う奴がいるけど、アスカ様と色違いって考えればそれも美点の一つよ」
さっきからアスカが妙にレイを誉めている。ここ二、三日でアスカのレイに対する感情が好転したらしい。我が儘高気圧のアスカだが、同時に頼られると弱い姉御肌の所もあるらしい。
「それに、変わっているって言っても、それなりに全体の調和が取れていてバランスがいいのよね」
「うん。そうだね」
横たわっているレイの横のソファーでは、冬月がお茶を啜っている。ゲンドウはいない。レイに容姿の事を言われてノックアウトされ、司令室に戻ってしまった。チャンスとばかりにリツコも行っている。
「ザザーンシンジ君のとってつけたような特徴と違って」
折角ゲンドウがいなくなったのに、代わりにアスカが意地の悪い微笑みを浮かべた。シンジは溜息をつく。
「シンジ君はユイ君似だ。それなりに整った顔立ちだな」
冬月がお茶を啜りながら言う。
「母さんかぁ……」
シンジはレイの方を見る。レイはまだ寝ている。
「綾波って母さんにそっくりなんだよね。僕もよく覚えているわけではないけど……そういえば」
シンジは冬月を見る。
「綾波のご両親って、母さんの親戚か何かなんですか。似ているし、だから父さんが……」
引き取っているとは言いたくない。代わりに捨てられたのかと言っているように思われるのは嫌だ。
「ユイ君の遠い親戚だそうだ」
「そう」
よく見れば冬月の表情が何か変なのだが俯いたシンジは気が付かない。話を聞いていたからではないだろうが、レイが目の上のタオルをとりソファーに座り直す。
「ファースト、もういいの」
「いいわ」
○
「次は能力です」
眼鏡の位置を直しつつレイが発表を再開した。
「これは多種多様です。ポピュラーなのはATフィールドを使える事。これは他の能力と共に持っていることが多いです。ATフィールドを使う時は赤い瞳に成る場合が多いです」
レイの解説にあわせてアスカが操作すると、ディスプレイに様々な応用例が表示された。使徒と同じように、前面に展開するもの。剣のように伸ばして敵を切断する物。塊にして撃ち出し貫通力が優れたエネルギー兵器にする物。結構種類がありこれはこれで面白い。いじけ気味だったシンジも自分のことだとは忘れてスクリーンに見入る。
「他には古今東西のヒーロー物の能力を身につけた事になっている物。この場合力を使うときはそのヒーローの容姿に近くなることが多いです」
これまた様々のヒーローの力が表示された。単純に怪力とパンチ力の者や念動力、空間飛躍、時間操作などポピュラーな超常能力者、史上最高の頭脳を誇る者、炎、雷、風、水、大地などを操る者、動物植物と話せる者、木刀でATフィールドを破るもの、デュラックの海を作り出す者、極々細い金属の糸で全てを束縛、切断する者、高速で動く者、光の翼を生やして全てを破壊する者、特殊な鎧を着て能力を高める者、召喚術を使う者、退魔法を使う者、古代神や暗黒神が乗り移ったためその能力自体が使える者。まさに古今東西縦横無尽、よくこれだけ考え付いたかというほどの量だ。ここまで来るとシンジもギャグと楽しめる。
「そしてこれも能力に含まれると思いますが……」
レイは言葉を切りシンジの顔を見つめた。
「それを見ただけで、老いも若いも区別無く女性は虜になってしまう「純粋な天使の微笑み」と言う物があります。対象に男性も含まれることもよくあります。見ただけで誰彼構わず従いたく成るほど素晴らしい笑顔、というのは異常なので妖術の一種と思われます。これは殆どのザザーンシンジ君が能力として持っています」
「シンジちょっと笑ってみなさいよ」
「急に言われても」
それでも笑ってみせるところは人がいい。
「安心しなさいよ、シンジ。アンタの笑顔はごく普通。そんな不気味じゃないわよ」
「そう」
「またこれらの力は超越的な者に貰うという安易なパターンが多いです。一応修行したという事に成っている場合も描写は殆どありません」
「ふん、この天才アスカ様だって気が狂うような訓練に耐えて来たのに、生意気よ、シンジのくせに」
「僕じゃないってば」
アスカにそう言われても困る。
「それにアスカが努力家で天才なのも知っているってば。つっかからないでよ」
「美人が抜けているわ」
言われてシンジはしみじみとアスカを見る。レイの発表の助手をする為、アスカは足を組んで椅子に座っている。ネルフの女性士官用の短めのスカートから伸びる足は、血のせいかすらりとして美しい。じっくりと見ると確かに中学生ばなれしているプロポーションだし、こういう研究発表など場面では、知的な落ち着いた面持ちになる。控えめに見ても美人、少なくとも美少女だと思う。
「うん。本当に美人だよね」
「うっなっ何言っているのよ」
しみじみと、本当にそう思っているだろうと言う口調で言われてアスカは妙に狼狽えてしまった。顔が赤くなっている。素直に頼られたり、素直に誉められたりするのには意外と弱いのかもしれない。
「アスカは私の知っている範囲で、一般的に美少女と言われている条件を満たしていると考えます」
レイが眼鏡をずりあげて言い出した。
「まず、身長が13歳の平均身長より少し高い事、日本において稀少とも言える自然の金髪で、しかも手入れが行き届き長く艶が有る事、瞳も美しく澄んだサファイヤ色であること、顔形は一般的な日本人の顔ですが、ほりが少し深くくっきりとしている事、平均的な同級生より胸筋が発達して、その上に比較的大きめの形の良い乳房が有る事、ウエストは脂肪と筋肉の割合が理想的な事、骨盤は大きめですが無駄な脂肪が付いていない為丈夫だが小さい腰をしている事、運動で鍛えている為太股は豊かだが足先に行くに従って引き締まっている事、そして足の長さの比率、特に膝より先が長いこと、その他にも……」
「わぁ〜〜ファースト恥ずかしいから止めて」
真面目に言われると恥ずかしい。アスカは頭から湯気が出そうな程赤くなっている。
「なぜ、事実を列挙しただけ。ザザーンシンジ君と違い事実」
「恥ずかしい物なのよ、頼むから止して。ザザーンシンジ君と違って恥ずかしいの。発表続けなさいよ」
「……そう。判ったわ」
レイは不思議そうな顔をして話すのを止めた。
「では続けます。ザザーンシンジ君の能力について、多く見られる物が比較による誇張です。要するに本人の能力を素晴らしく書く事は難しいので、敵もしくは味方の能力を低く描き相対的に素晴らしいとする記述の仕方が多く見受けられます」
そこでレイはミサトを見た。
「ん」
ミサトは自分の顔を指差す。
「私」
「はい。味方では主に作戦部長がその対象になります」
「レイ、作戦部長じゃなくてミサトでいいわよ」
「はい」
レイはちょっと喉を押える。喉がいがらっぽくなったらしい。甘い物大好きのアスカがキャンディーを持っていたので渡した。口に入れる。少し舐める。
「発音が少し悪くなります。では続けます。ミサトさんは碇君と一緒に暮しているという事が知られている為もあると思われますが、徹底的に生活無能力者に描かれる事が多いです」
「それって事実じゃん」
「アスカ他人の事、言える」
「私は当番はこなしてるわ」
「……そう言えばそうだね」
シンジが言うとアスカは胸を張った。
「えっと私……はいごめんなさい。素直にあやまります」
ミサトが縮こまる。
「噂は本当なのか葛城君」
冬月が冷たい視線を向けた。
「えっと……」
「一ヶ月の猶予をあげよう。その間に生活状況の改善を図る事。家政婦等の必要性がある場合は、申請すれば庶務課から派遣させる。出来なければボーナス全額カット」
「はい」
逆らわないようだ。
「続けます。生活無能力者のミサトさんも、作戦部長としての実戦の戦歴は優秀と思われます。今まで負ければお終いの使徒戦で、全て勝ちを収めています。使徒戦においては勝つという事が重要です。政治の一部、経済活動の一部としての戦争と違う所がここです。また時間にルーズという事も知られていますが、使徒に対する作戦等で時間を守れなかった事はありません。あるとしても使徒の出現による突発事項により交通が遮断されたり、対象の方が時間や場所を変えてしまったりと、きちんとした理由がある場合ばかりです」
「そう言えば、ミサトさん僕を迎えに来てくれた時も、リニアが止まって前の駅で降りたのをわざわざ探してきてくれたし、若干方向音痴の所があるけど、土壇場に成ると凄く頼れるし。現場の人に人望厚いし」
「じゃなきゃあんなバカな作戦、このアスカ様は付き合わないわよ。バカ丸出しの作戦だけど確かにセンスは有るわ。勝つ事のね」
「その意見は私も賛成です」
「あなた達……」
ミサトは嬉しそうだ。
「ねえ、ミサトさん……聞いていいですか」
「何シンちゃん」
「やっぱりミサトさんが使徒を倒すのって復讐なんですか。僕達……その……道具なんですか」
部屋が静かになってしまった。皆ミサトを見る。
「……ええ。復讐……って言うところはあるわ。仕事半分復讐半分ね。あなた達を道具と考えた事はないけど……ただ道具にしていると思った事はあるわ。本当に考えていないかって言われると……無意識では考えていると思うわ。ただ信じて欲しいのは、三人とも好きだし傷つけたくは無い……って言う事」
また部屋が静かになる。ミサトは俯いていた。
「言い訳はしたくない。ただ……私は、今の生活を続けたい。使徒に勝ち続けて、シンちゃんのおつまみでえびちゅを啜ったり、アスカとバカな喧嘩を続けたり。レイとはあまり話す機会も無いけど、出来たら仲良くしていたいわ。単にそれだけの理由かもしれないけど、あなた達を苦しめたくは無い」
「何格好付けてるのよミサト」
アスカが鋭い視線で睨む。
「どうせここにいる人間はみんなEVAや使徒のせいで歪んだ奴らだらけじゃない。言い訳なんて必要ないわ。みんなが好きならそれでいいわ」
「僕もそう思います。ミサトさんは憎んだり馬鹿にしたりする程酷い人じゃないから。僕もアスカもみんな似たようなものだし……」
「そう…………レイは」
ミサトは顔を上げるとレイの方を向く。いつもの様に無表情だが、飴を舐めている為口が動いている。
「私は……」
そこまで言ってレイは言葉に詰まった。
「私は……私は……」
珍しく表情が動く。
「私は……憎む理由はありません……」
ミサト達が見惚れるような可愛らしい微笑みがレイの顔に浮かんだ。
「そう。ありがとう」
「発表を続けます」
いつもの無表情に戻る。
「指揮官としては優秀だからこそ、ミサトさんを無能力者に描く事は、ザザーンシンジ君を優秀に描く事と等しいと考えているのではないかと推測されます。むしろザザーンシンジ君を優秀に書くことが難しいので、そう書かざるを得ないと言った方が適切でしょう」
レイが指示をしたのでアスカが画面を切り替える。世界の主要国の軍備などの統計などが出る。
「ちなみにミサトさんが無能力者に描く方法としては、生活能力が無いこと、作戦が一般的な軍事常識とあっていないこと、性格破綻者である事、などを描く事が多いです。生活能力が無いのは事実ですが」
ミサトが恥ずかしそうに頭を掻く。
「作戦が一般的な軍事常識にあっていない事を上げることは、使徒に付いての認識が甘すぎるといって言いでしょう。戦争は経済や政治の一部です。あくまでも人間という対象に対して有効です。一般的な軍事常識を使徒戦に当てはめる事は、怪獣や宇宙人に対してミサイルや核兵器でかたをつける20世紀後半に見られたハリウッド映画と同じくあまりにもご都合主義です。使徒は……人類が始めて出会った、異存在です」
レイが言ってくれた事はいつも思っている事なのか、ミサトは何回も頷く。
「また性格破綻者として描く方法は、あまりにも誇張が多すぎます。わざと嫌われる様な性格づけをしている事が多いです」
レイは今度はアスカの方を向く。
「以上の亊はアスカにもあてはまります。優秀なEVAパイロットであるアスカを無能に描く亊により、ザザーンシンジ君を優秀に描く亊が多いです」
「怒る気にもならないわ」
アスカが呟く。
「ここで技術部長、赤木博士はミサトさんと若干扱いが異なる事が多いです。これはエンジニアとしてEVAとMAGIの保守などを行わせる関係でしょう。話の中でザザーンシンジ君と敵対しない様に記述され、ある程度優秀な人物として描かれる事が多いようです。あくまでもミサトさんと比較しての記述ですが」
レイはアスカの方を向く。
「赤木博士、ミサトさんの場合とアスカはまた扱いが違います。ミサトさんと同様無能力者に描かれる事が多いのですが、ザザーンシンジ君に恋愛感情を抱いている少女と描かれる時もあります」
アスカはシンジを睨む。目付きがやけに鋭い為シンジは思わず引いてしまう。
「ザザーンシンジ君よりは、まだこのシンジの方がいいわ」
「まだって言い方酷いな」
「ふん」
アスカは手元の端末を見る。
「対照的なのが私の扱いです。私はザザーンシンジ君と恋愛関係もしくは従属的恋愛対象として描かれる事が多いです。これは一般に流れている私とアスカの情報の違いが原因と推測します」
ディスプレイに、レイとアスカに付いて書かれた週刊誌などの記事の統計データーなどがでる。
「基本的には私は必要と思われる事以外話しません。その為自意識等が無い、若しくは少ないと記述され、また言いなりと言う様な記述が多く見られます」
「ナンセンス」
アスカはレイのお尻を人差し指で突っつく。単に目の前にあったからだが。
「ファーストほど扱いにくくって強烈な自我を持っているのって少ないわ。ザザーンシンジ君辺りだと見捨てられてお終いよ」
「私は現在、碇君に対して従属物としての感情はありません」
「とっ当然だよ。綾波は綾波なんだし」
シンジが焦って言う。
「あったり前よ。このシンジでも私やレイの相手をするのには役者不足なのよ。ザザーンなんか、ぽいよぽい」
アスカに言われてシンジは頭を掻く。
「なんか誉められているようなバカにされているような」
「誉めてはいないわよ。ただまあこのシンジなら、アスカ様の下僕の末席に加えてあげてもいいわね。そう思ってたのに……うううう」
いきなりアスカが泣き出した。もっとも誰が見ても嘘泣きだと判るが。
「少し気を許したら……うううう……いきなりキスしてきて……うううう」
「えっあっでっあれはアスカから」
「あ〜〜らシンちゃんって最低……女の子の純情をねぇ〜〜」
ミサトも知っていてからかっている。話はアスカから直接聞いている。
「わたしも……裸で押し倒されて、胸を揉みしだかれました」
「あっあれは」
「酷いわねぇ、レイにまで手を出しちゃって」
こちらの方もレイがミサトに報告している。
「あれは事故です……」
「そう……事故」
レイが伏し目にして下を向く。スクリーンの方を向く。肩が震えている。
「あっ酷いわねシンちゃん」
「えっあっその」
「責任取ってあげないと」
「責任って」
シンジの顔が引きつっている。アスカは嘘泣きにしてもレイが泣くのは意外だった。
「そこまで行ったら結婚よねぇ〜〜」
「結婚って……」
シンジの顔の引きつりが派手になる。
「わたし……ぐす……身を引く……レイはもうそこまでされちゃったから可哀想……なぁぁぁんてね。レイ面白かったでしょう」
嘘泣きをやめて、アスカがにたつきながらレイの方を向く。レイも肩を震わすのをやめて顔を上げたアスカの方を向く。泣いている跡はない。
「碇君……って確かに面白い」
ニヤリとゲンドウ笑いをする。
「ひっ酷いよ二人とも」
「何言ってんのよ。レイを押し倒して胸揉んだのはホントでしょ。大体なんでこんな美少女と同居してるのにレイの胸を揉むのよ」
「あ〜〜らアスカ、シンちゃんに胸揉まれたいの」
「うっ……ちっ違うわよ例えよ例え」
アスカの顔が見る間に真っ赤になる。
「レイ、発表続けて発表」
「では続けます」
すぐにレイは普段の鉄面皮にもどった。
「次にザザーンシンジ君の立場に付いてです。これはいくつか種類があります。今と同じサードチルドレンである場合。これは多いです。但し他の仕事などを兼務している場合があります。例えば開発部で非常勤で主任研究員を兼務、諜報部で格闘技の講師」
真っ赤に成ってディスプレーを見ていたアスカが吹き出した。
「これは立場とは違いますが、司令の子ではないという設定も多いです。実は神々がユイさんに生ませた子などの設定です」
レイは無意識にお腹の辺りを触った。
「先程も述べたとおりこれも顔が違い過ぎる事が主な原因でしょう。碇君は比較的ユイさんに似ていると思います。もう一つはザザーンシンジ君に特殊能力を与える為その様な設定にしている場合です」
「碇が聞いたら泣き出しそうだな」
冬月が珍しく意地の悪そうな笑いを浮かべている。
「最後にザザーンシンジ君の性格です。現実の碇君は、消極性、内気など非行動的性格が見られますが、ある程度はバランスが取れていると思います」
「まっそうね」
どうにか落ち着いたアスカがシンジを睨み付けた。
「シンジ自信持ちなさいよ。アンタ標準よりは上よ。自信過剰に成られても困るけど」
「なんか企んでない」
「あのね……っとに」
アスカは呆れ顔でディスプレイに視線を戻した。
「ザザーンシンジ君では大まかに二通りです。神の如く優しく寛大か、神のように我が儘で冷酷かです。今の碇君の性格のまま力を持ち、その力に悩んだりする者は、初期の作品では見られましたが今では少ないです」
「なんで」
情けなさげにシンジが聞く。
「両極端は書きやすいからだと思われます」
「まっ性格描写はプロの作家だって難しいからね。一休みしましょ」
ミサトの一言でまた休みになった。





